紛争地での性的暴力はもはや許されない
国連がシリアへの人道支援のアクセスを要請しましたが、これは国内でも報道されているので、今日は少し前に報じられた記事を紹介します。
これは、イギリスのウィリアム・ハーグ外務大臣(William Hague)と女優で国連難民高等弁務官事務所特使のアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)が共同で書いた声明文です(記事はこちら)。ほぼ全文を抄訳しました。この記事はalarabiya.netとその他の選ばれたメディアにだけ掲載されました。 以下、声明文です。
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毎日、シリアでの恐るべき犯罪の報告が世界へ届いています。現在、国連はシリア全土で、尋問や検問所、拘留センターや刑務所で、女性、男性、子供を脅したり、罰するために、強姦が使われていることを確認しました。
最新の国連査問委員会の報告書は、子供を殺すと脅された母親が強姦され、彼女を捕らえた者のために料理を作り、掃除をすることを強いられていると書きました。政府が兄妹を指名手配したために強姦された大学生についても書きました。これらは氷山の一角です。恐怖、恥、生き残りのための闘いは、多くの生存者が被害をあえて名乗り出ないことを意味します。
性的暴力は、ボスニアからルワンダまで、現代のほとんどすべての主な紛争で、戦いの兵器として使われてきました。これは、政治目的を達成し、政敵に恥をかかせ、異なる民族グループを排斥したり降伏させ、コミュニティを支配下に置くと脅すための、手の込んだ軍事戦術です。一部の紛争では、女性をHIVに感染させたり、出産できないほど負傷させる手も使われています。
強姦は隠蔽され、最も弱い人たちを攻撃します。コンゴを訪問した時、我々は5歳の娘が強姦された母親に会いました。この少女は話を聞くには若すぎましたが、彼女と世界中の大勢の犠牲者の苦しみは行動を求められるべきです。
世界はクラスター爆弾と地雷を非合法化し、非合法な武器取引を減らす条約を考案しました。これらの合意すべてはかつては不可能だと思われました。それらすべては道義的な憤りから始まり、世界的行動につながりました。同じことを戦地での強姦と性的暴行に対して行う時です。
問題の要点は処罰を受けないという染みついた文化です。多くの強姦がある国でも起訴されるのはわずかです。シリアの拘留センターで囚人を強姦する男は、歴史が示すとおり、自分が起訴されないことを知っています。もうひとつの深刻な要因は、生存者への長期間の支援がないことです。犠牲者は虐待者による苦しみの上に、生涯にわたる排斥、病気、トラウマに直面します。
性的暴力は生存者とその家族の生活を損なうのを見てきたため、我々はこの問題に関して運動するために団結しました。我々は行動のための緊急の必要があるという認識を高めたいのです。そして、我々は世界中の政府に、戦地での強姦を最優先で根絶するために団結することを要請します。
我々は昨年、我々のイニシャティブを始めました。そして、それに応じてくれた多くの国々に感謝します。我々の国2ヶ国を含む4月のロンドンG8は、この問題に対処する歴史的な誓約をしました。6月、国連安保理は満場一致で国連の能力を強化する決議を採択しました。国連45ヶ国のメンバーは、近年の歴史の中での成果である、決議の共同提案者となることで支援を示しました。
来週、ニューヨークの国連総会で、 世界中の指導者が集まります。期間中9月24日に、「紛争における性的暴力根絶のための宣言」が提示されるでしょう。それは、性的暴力に関する国連事務総長の特別代表と、この問題で我々を支持することに勇敢に同意した、中東、ヨーロッパ、アフリカ、アジアからの多くの国々の指導者と共に作成されました。
それを承認した国々は、第一に、紛争中の深刻な性的暴力がジュネーブ条約とその第一議定書の重大な違反になることに合意します。これは容疑者は世界中どこにいても逮捕できることを意味します。
それは和平協定に性的暴力の恩赦を認めないという誓約を含みます。そのため、こうした犯罪はもはや人目から遠ざけられることはできず、軍指導者は責任があることを知ります。
証拠が法廷に提出でき、より多くの生存者が正義を見届け、戦地での強姦とその他の性的犯罪の捜査の中心に、犠牲者の安全と尊厳を置くことを確実にするのを助けるため、宣言は2014年中期までに新しい国際的議定書を約束します。
女性の社会参加、難民保護、国軍と警察の訓練に関する規定を含みます。そして、その署名者はすべての紛争と人道支援活動の最前線における性的暴力からの保護と、この暴力の危険がある国々の処理能力を最も強化するのを助けることを約束します。
我々は、国際社会のすべてのメンバーが支援しなければならない、あらゆるステップがあると信じます。だから、我々は世界中の大多数の政府がこの条約に署名すること、これらの誓約を実行に移すことを望みます。我々にそれができれば、これは強姦と性的暴力への国際的な態度におけるターニングポイントになり、最終的には刑事免責を終わらせる初端となれるでしょう。
世界には直面しなければならない他多くの不正があります。しかし、大勢の女性、男性、子供への強姦と虐待はもはや許容できません。我々は世界中の人々が態度を明確にするために我々に加わることを望みます。
記事は一部を紹介しました。
これを読んでも、橋下徹大阪市長の従軍慰安婦発言が、いかに無知の塊だったかが分かるでしょう。彼は発言後に、戦地での性的虐待に関する国際世論を知り、慌てて訂正したものの、後の祭りだったというわけです。
昨日も述べましたが、各国の軍の任務に、こうした問題に対処する戦略、戦術が導入されることが必要です。単に、国益のためでなく、こうした犯罪を防ぐことが、新しい軍の任務とされなければなりません。
しかし、軍内部に自軍の女性兵士に対する性的虐待が存在することが、進化の足かせとなります。
military.comの記事によると、イラクとアフガニスタンで戦闘に類する体験をした女性兵士は、他に戦地派遣された女性兵士よりもセクハラと性的暴行を報告すると考えられています。
「Women's Health Issues journal」の8月号に、2001年以降に13,000人以上から集めたデータを使った研究が発表されました。
現役兵士全体140万人に占める女性兵士の数は約200,000人です。9/11以降、280,000人の女性兵士がアフガニスタンとイラクに派遣され、女性は国防総省が今年早くに戦闘部署への配置を除外する規則を取り消してからはさらに多くの戦闘に参加しています。国防総省は2016年までに女性たちを戦闘部署へ統合する予定です。
戦闘に類する経験をした戦地派遣された女性は、基本的な質問の後で3年間の追跡調査をした結果、セクハラで20%、性的暴行で4%の発生率を報告しました。1980年以後に生まれた最も若い女性兵士は、より年上の兵士よりも5倍も多く性的暴行を報告します。セクハラと性的暴行の発生率は部署によって異なります。空軍と海軍の女性へのセクハラは最低の5.8%。陸軍は10.3%。海兵隊は13.3%でした。女性海兵隊兵士は性的暴行で最高の6.6%。空軍の女性兵士は1.6%でした。
こんな状況であり、戦地以外でも、性犯罪は始終、マスコミを賑わしています。military.comに、その種の記事が載ることは珍しくありません。特に陸軍士官学校での暴行事件は日常茶飯事に近いものがあります。
この調子では、泥棒を警察官にするようなもので、軍事力による紛争地での性犯罪防止は非現実的に思えます。しかし、これは我々の目の前に広がる課題なのです。この壁を乗り越えられなければ、人類に進歩はないのです。
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