シリア反政府軍指揮官が西欧を批判

2013.11.11


 BBCによれば、シリアの反政府軍指揮官、アブドル・ジャバル・アル・オカイディ大佐(Col Abdul Jabbar al-Okaidi)は、イギリスとアメリカの政治家がシリア政府を事実上支援したとして批判しました。

 オカイディ大佐は、シリア政府が化学兵器を廃棄することを受け入れたために、アメリカは通常兵力による攻撃を増加する余地を与えたと言いました。「西欧は犯罪のアサド政権を支持しています」と彼はBBCに言いました。それは、今週、アレッポの軍事評議会の長を辞任したあと、彼の最初の国外でのインタビューでした。「オバマ氏が化学兵器はレッドラインだと言えば、通常兵器に青信号を与えるのです」「弾道ミサイル、スカッド、空軍力、ロケットランチャー、戦車…これらすべてはシリア人を殺すために政権が使えるのです。つまり、西欧のスタンスはシリア革命に非常に否定的でした」。

 彼はイギリスのアプローチを「強い躊躇」と呼びました。「彼らは何も提供しませんでした。彼らはまったく革命を支持しませんでした。「カダフィ大佐に対するイギリスとフランス、アメリカの態度とアサドとでは、その差は莫大です」。

 これに応えて、イギリスの外務・英連邦省の広報官は「イギリスは国家連合を唯一の合法的シリア国民の代表と認め、その形成以来、広範囲な支援を連合に与えてきました」「今年だけで、我々は3,200万ドル以上の支援を提供し、外務大臣は現在とジュネーブの第二和平会議の間にさらに支援のパッケージを発表すると言いました」。「これはシリアとその地域における人道危機を軽減するためにイギリスが行う相当な貢献とは別です」。

 「彼らはカダフィ大佐を排除して、リビア国民に独裁者の排除の手助けをする事に関して、すばやく決断しました。なのに、ここでは3年目に入ろうとしているのに、イギリスと全世界は傍観しています」とオカイディ大佐は言いました。元シリア軍将校のオカイディ大佐は、イスタンブールでのシリア反政府派政治家の会合に先立ち、トルコのガジアンテップ市(Gaziantep)で話しました。彼らはジュネーブでの和平会議に参加するかどうかを議論します。西欧とアラブ諸国、ロシアは彼らに参加するよう促しています。しかし、カダフィ大佐はこの計画に反対だと言いました。

 「シリア政府が人々を殺し、空から爆撃し、大砲の砲火を向け続ける間は、会議は成功しません」「私はこうした状況で、誰かがこんな犯罪の政府と交渉と和平会談に行けるとは考えません」。

 自由シリア軍への別の打撃があり、オカイディ大佐の辞任に続き、シリアで最大の反政府部隊の指揮官数人が、新しいイスラム武装グループを形成する議論をするためにトルコで会談しています。彼らはシャリア法の強制を求めています。一部はアサド後のシリアがイスラムの「カリフの府」であることを望みます。

 オカイディ大佐は穏健派グループに武器を供給することに西欧が失敗したことが、より強力に武装するイスラム主義者の力を強化していると警告しました。「武器と弾薬については、我々はまったく何も受け取りませんでした。若干の通信キット。それがすべてです。そして、アメリカからの戦闘糧食です。私の部下は食べるのを拒否したので、どれくらいの数かは知りません」と彼は言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 オカイディ大佐の話は、私には同感です。当サイトで何度も書いている私の主張は、大佐の意見とほぼ同じと考えます。

 3年目に入っている内戦は民生の崩壊を引き起こしました。民間衛生の不在を招き、伝染病が蔓延する徴候が見えています。さらに、大佐が言うように、自由シリア軍とは別のグループが誕生しつつあります。これはさらに内戦を複雑化しかねない問題です。

 現在見えている最良の結末は、4年目の夏の内に、疲弊したシリア政府が根を上げて、反政府側が勝利することです。これなら、シリアはギリギリで救われるかも知れません。しかし、内戦終結の可能性は高いとは思えません。つまり、内戦がさらに続く可能性の方が高いのです。

 最悪の事態は、過激なイスラム主義者たちが反政府派の主流になることです。こうなると、西欧は支援のしようがありません。ここで思い出すべきなのは、ブッシュ政権が余計なイラク侵攻や、その後になし崩し的に行ったアフガニスタン侵攻のような、不必要な対テロ戦の功罪です。

 誤った対処は、さらなる問題を引き起こすのです。シリアへの対処の誤りは、ブッシュ政権の誤りの別バージョンなのかも知れません。タカ派的な意識ではない、ハト派的な意識も、戦況を悪化させる場合があることを、我々は認識しなければならないのです。


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