米軍のフィリピン災害派遣の詳細
military.comによれば、フィリピンのタイフーン・ハイエン災害(Typhoon Haiyan)に派遣されたUSSジョージ・ワシントン(USS George Washington)は3日後に現地を離れるとみられます。
第7艦隊広報官、ウィリアム・マークス中佐(Cmdr. William Marks)によれば、木曜日に到着したジョージ・ワシントンよりも小さいものの、USSアシュランド(USS Ashland)とUSSジャーマンタウン(USS Germantown)は被災地のより近くに行き、よりヘリコプターの支援を提供できます。2隻は水曜日に到着する予定で、約900人の在沖縄海兵隊員を輸送しています。ヘリコプター1機を乗せた3隻目のUSSフリーダム(USS Freedom)は、ダマヤン作戦(Operation Damayan)の補給品を配送するためシンガポールから航行中です。
フィリピンのベニグノ・アキノ大統領(President Benigno Aquino)は、ギワン(Guiuan・kmzファイルはこちら)で救援活動に対して感謝するために米水兵と会いました。ギワンは、第7艦隊の救援活動の約半分が集中する東部サマル州(Samar province)の小都市です。この街は被害のひどい地域を支援するヘリコプターの拠点となっています。
もうひとつの35%の艦隊任務は、レイテ湾(Leyte Gulf)の縁に沿った地域、州都タクロバン(Tacloban・kmzファイルはこちら)へのヘリコプターを使った救援物資を空輸することに関係します。ここは11月8日にタイフーンが海岸に来た時に暴風で破壊されました。他の救援活動はオルモック(Ormoc・kmzファイルはこちら)に集中します。レイテ州のこの街は多くの進展が見られると、マークス中佐は言いました。
最高235mphの風と50フィートの高潮により、記録上最も強力な嵐が36州で420万人以上に影響を与えました。
月曜の朝の時点で、第7艦隊の水兵たちは519人の生存者を助け出し、彼を支援と医療が受けられる施設へ運びました。彼らは24機のヘリコプターを使って、368,800リットルの水と160,000ポンド(72574.7kg)の食糧と日用品を配送しました。艦隊はダマヤン作戦の支援のために500時間の飛行を記録しました。
一方で、第374空輸隊によれば、横田空軍基地の空軍兵約80人とC-130ハーキュリーズ3機が、空輸支援を提供するためにクラーク空軍基地(Clark Air Base・kmzファイルはこちら)を土曜日に訪れました。チームはフィリピンへ向かう命令が来た時、バングラデシュの人道支援と災害救援演習から日本へ帰還しているところでした。「これはまさに我々が訓練する任務です」と第36空輸隊指揮官のジェフ・メナスコ中佐(Lt Col. Jeff Menasco)は言いました。「我々は、最も厳しい場所のいくつかで、任務が課せられた数時間の内に、多目的な人道空輸作戦を提供できます」。「C-130」5機と横田基地の90人は救援活動に参加することになっています。
記事は一部を紹介しました。
米海軍がジョージ・ワシントンをフィリピンに派遣したと聞いた時は、任務に適した任命ではないと疑問を感じました。空母は災害派遣にはそれほど向いていませんし、長期間主力戦力を災害派遣に使うのは戦略上の問題もあります。しかし、これはすぐに動けるのがジョージ・ワシントンだったということなのでしょう。佐世保港で出発準備を進め、完了次第、ドック型揚陸艦2隻(アシュランド・ジャーマンタウン)が派遣されたというわけです。これらの艦は通常ヘリコプターを搭載していませんが、CH-47級の機体が使える2機分のヘリポートがあります。フリーダムも救援活動には向いていませんが、これは支援物資の輸送だけが任務のようです。
クラーク空軍基地の部隊は、完全に後方支援任務のようで、この空港から被災地までは600kmあります。クラーク基地は1991年にフィリピン政府に返還されているので、元クラーク基地と言うべきかも知れません。
オルモックからギワンまでは120kmで、担当する範囲はかなりの広範囲になります。ギワンの港は浅瀬で、大型艦は近づけそうにありませんが、空港があるので、空輸で街に支援物資を運べそうです。人口は街に集中しており、ここに人を集めれば、作業は楽になるでしょう。タクロバンとオルモックには空港と大型船がつける港があります。
現在までに、米軍がやった活動を考えてみましょう。成人男子が1日に必要とする水は約1.2リットルとされますが、災害時に必要とされるのは2〜3リットルです。生活に必要な水となると6リットルへ倍増します。飲料水だけとしても、122,933人に一日分の水を提供できたに過ぎません。NASAによると、1日に必要な最低限の一人あたり食糧は618グラムです。この基準で行くと、117,434人です。やはり、一人あたり1kg程度の食糧は必要と考えれば、72,574人に提供するのがやっとです。
自衛隊の活動範囲がまだ明確ではありませんが、米軍が東部で活動するのなら、自衛隊の活動は西部になるのかも知れません。
防衛省が発表した活動の概要は次のとおりです。
- 派遣部隊を、防衛大臣直轄のフィリピン現地運用調整所と、自衛艦隊司令官の隷下に置かれるフィリピン国際緊急援助統合任務部隊の2部隊に再編成する。
- 派遣部隊の定員を約50名から約1,180名に増員する。また、主要装備について、これまでのKC-767空中給油・輸送機1機及びC-130H輸送機1機に加え、KC-767空中給油・輸送機1機、C-130H輸送機6機、U-4多用途支援機1機、CH-47輸送ヘリコプター及びUH-1多用途ヘリコプター各3機、輸送艦、護衛艦及び補給艦の計3隻を新規追加する。
- これまでの医療活動等に加えて、防疫活動及び現地における救援物資等の輸送を新たに任務とする。
かなりの内容ですが、被害の範囲が広いので、やはり効果を生むのは大変でしょう。防衛省の資料によれば、フィリピン軍はC-130輸送機2機、ヘリコプター32機、艦艇20隻を使っています(pdfファイルはこちら)。支援隊の仕事は、大規模な支援物資輸送を担い、フィリピン軍の輸送活動の負担を減らすことです。
派遣された艦船の中で注目されるのは、ヘリコプター護衛艦「いせ」と、輸送艦「おおすみ」です。いずれも、ヘリコプターを多数搭載できる艦です。いせは通常3〜4機、最大で11機を搭載できます。おおすみは条件付きですが、ヘリコプターを搭載できるとされています。陸上自衛隊のフェイスブックによると、「いせ」及び「おおすみ」にCH-47及びUH-1各3機が搭載されました。おおすみにはトラックなどの車両も搭載しているので、陸上輸送も担当するようです。写真にはホバークラフトが搭載されるものもあるので、場所によっては、これも活用するようです。いせとおおすみの活動がうまくできるかは、日本国内での災害時に使えるかの、重大な試金石にもなります。自衛隊は、この災害派遣の情報はできるだけ発信すべきでしょう。国内自治体が災害時にこれらの艦艇をどう活用できるかを判断する材料になります。
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