空母「遼寧」が海南省の軍港を母港に

2013.12.2


 新京報によれば、26日に山東省青島市の母港から出港した中国の空母・遼寧号は、29日、海南省三亜市の軍港に停泊しました。

 三亜市の軍港も空母拠点用に整備されてきたもの。軍事専門家・宋忠平(ソン・ジョンピン)氏は米国が3カ所の空母用の軍港を持っているように、中国も2〜3カ所の拠点が必要だと話しまし。今回の停泊で山東省に続き海南省の軍港の整備が完了したことを意味します。


 三亜市の軍港とは、榆林海軍基地(Yulin Naval Base)のことです(kmzファイルはこちら )。三亜海軍基地(Sanya Naval Base)とも呼ばれています。東側の方が新しく整備された基地なので、遼寧号はここを母港にすると思われます。

 三亜市を空母の母港に選ぶのは、軍事的に正しい選択と思います。ベトナムに近く、水深の深い外海へすぐに出られる位置にあるからです。まさに、ここに母港を置くべき場所です。

 しかしそれよりも、まだ実験段階にある遼寧を、すぐにでも使うかのように、実戦配備する神経は分かりません。現段階では遼寧は張り子の虎に過ぎません。中国軍は、適切な時期に南シナ海の防空識別圏を設定すると言っています。遼寧の準備ができ次第だとすると、それは何時になるのかも、準備を整えられるのかも分かりません。海南省には空軍基地もあるので、別に今、防空識別圏を宣言しても、何の問題もないはずです。空母を出せば、他国が怖がるとでも思っているのなら、考えが浅すぎます。

 中国がやっていることは、理解しにくいことばかりです。その根底に、過去から引きずる「植民地時代のトラウマ」があるのだとすれば、あまりにも馬鹿げており、悲しい話です。そんなことをする余裕があるのなら、その地勢的利点を活用して、アジアの「平和の使者」を買って出れば、どれだけ多くの尊敬を集めるか分からないのに、そういう選択肢を最初からないものと考えているからです。列強にいいようにされた過去は、そこまで中国人の心理を痛めつけたのかも知れません。

 こういうことは珍しいことではありません。国家戦略の背景には理解しがたいトラウマが存在することは珍しくないからです。ドイツがナチス政権で拡張政策をとったのは、第1次世界大戦で失ったものを取り戻そうとしたためでした。冷戦中にアメリカはソ連への恐怖感から、核戦力を増やしすぎたり、共産主義国への侵略に血眼になりました。

 ところで、自民党の石破幹事長が、デモ隊はテロリストと述べた発言を撤回すると言い出しました。「(デモを)『テロ』と同じとみたという風に受け取られる部分があったとすれば、そこは撤回する」とのことですが、いまさら取り消せるような内容ではありません。これは本音を露見させた発言として記録されるべき事件です。


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