治安悪化が化学兵器廃棄の障害に

2013.12.6


 alarabiya.netによれば、シリアの内戦は、この国の化学兵器を2014年中期までに廃棄する計画の障害になる恐れがあります。

 シリアの化学兵器を地中海のラタキア港(Latakia)へ移動する準備が進行中ですが、主要道路に沿う危険は計画を遅らせる恐れがあると、国連と化学兵器禁止機関の合同任務の責任者、シグリッド・カーグ(Sigrid Kaag)は言いました。スケジュールに影響しかねない「我々の管理を外れた要素があります」とカーグ女史は言いました。

 彼女は、ラタキアへつながるダマスカスと北部のホムスをつなぐ幹線道路の悪化した治安状況が、ここ数日間の会議のために、ベイルートへ飛び、それからラタキアへヘリコプターで行くことを余儀なくしたと言いました。幹線道路は数ヶ月間の政府軍による反政府軍への攻勢の現場でした。カーグは化学物質のコンテナを港に輸送するのに使えないなら、問題が現実化するかもしれないと言いました。

 シリア政府はコンテナをラタキアに輸送するための安全を提供する責任があり、深刻な治安上の制約があるとカーグは言いました。しかし、現在のところ、ラタキアに代わるものはありません。

 シリアにいる化学兵器禁止機関の広報は木曜日、最も危険な化学兵器は12月31日までに国外に出さなければなりませんが、優先順位が低い、混合されていない化学剤は2月5日までに、船で国外に出すと言いました。

 フランスの国連大使、ジェラード・アラウド(Gerard Araud)は、シリアの化学兵器廃棄の最初の危険ポイントは、現場へのアクセスと化学兵器を輸送する準備で、これは可能だったと言いました。次の危険ポイントは、化学剤のコンテナをラタキアへ運ぶことで、これは未だ疑わしい道路の治安状況によります。さらに、廃棄と最終処分のためにコンテナを国外に輸送することです。

 一方、監視機関と国連は以前として、どの国が沖合で化学剤を廃棄するために、最も危険な化学兵器を米国船へ積み込む港の使用を承認するのかを待っています。水曜日の国連安全保障理事会でどの国と交渉したかについて、カーグは言いませんでした。

 化学兵器禁止機関は土曜日、アメリカが海軍艦を500トンの神経剤を含む化学剤を廃棄するために改造を開始したと言いました。イタリア、ノルウェー、デンマークはラタキアから軍の護衛付きで化学剤を輸送することを申し出ました。化学剤はその後、別の港で米艦へ移されます。


 記事は一部を紹介しました。

 問題が大きいのは、港まで化学剤を輸送することで、その他の部分は、何とか解決できると考えます。

 地図を見れば分かりますが、ここ最近の戦闘はラタキアへの通路の周辺で起きています。遠回りでも、もう1つ南側のルートで、レバノン国境付近へ迂回しても、危険は残るでしょう。最近、ラタキアを反政府派、それもアルカイダ系グループが支配しています。彼らが輸送を妨害したり、その意図がなくても、単に政府軍の車両と判断して攻撃する可能性もあります。国連のマークを掲げても、それを信じるかは疑問です。シリア軍が国連マークを利用して、兵器を運ぶような事態が起きる可能性もあります。

 国連はアル・ヌスラ戦線のようなグループと交渉し、化学剤の輸送を妨害しないようにしなければなりません。こうした経緯を経て、アルカイダが次第に、武装組織として定着し、認められていくのは止められそうにありません。かなり前にも書きましたが、最初はテロ組織でも、長期間存続すると、国際的な認証を得る場合があるのです。ブッシュ政権がイラク侵攻などしていなければ、こういう状況は起きなかったかも知れません。


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