アメリカはシリア反政府派に武器提供せず

2013.2.11


 alarabiya.netが、新任のジョン・ケリー国務長官(Secretary of State John Kerry)のシリア内戦に関する見解を報じました。

 「あまりにも多い殺戮があり、あまりにも多くの暴力があり、我々は明白に前方へ向かう道筋を見つけようとしています」とケリー国務長官は言いました。「あまりにも複雑で危険な状況です」「我々は現在評価の最中で、我々は次に何をするのか、可能なら、暴力を減らし、状況に対処する努力を取り得ること、特に外交面をながめているところです」。

 彼のコメントはホワイトハウスが、昨年、閣僚が提案したシリアの反政府派への武器提供計画を拒否したことを弁護した後に来ました。ケリー長官は1週間前に長官を引き継いだ前の決定については知らず、いまは先へ進む予定だと言いました。

 レオン・パネッタ国防長官(Defense Secretary Leon Panetta)は、木曜日に議会公聴会で、彼は選び抜いた反政府派に武器を提供し、訓練を行う計画を支持し、当初は、ヒラリー・クリントン元国務長官(Hillary Clinton)とデビッド・ペトラエス元CIA長官(David Petraeus)からも支持されたと述べました。

 現在まで、オバマ政権は、通信機材を含めて、シリアの反政府派に人道的、非致死性以外のあらゆる支援を提供することを拒否してきました。ホワイトハウス広報官、ジェイ・カーニー(Jay Carney)は、問題はシリア国内の武器の不足ではないと主張し、アサドがイランのような外国から援助を得る一方で、反政府派は他の地域の国から補給を得ているとほのめかしました。カーニー広報官は、アメリカの最優先事項が、アメリカが提供する兵器が悪者の手に渡り、さらにアメリカ、シリア国民、イスラエルに対する危険を生み出さないようにすることだと言いました。


 8日の記事で、アメリカがシリアの反政府派に武器提供と書きましたが、私の単純な読み違いでした。すでに記事は修正してあります。

 国防長官、国務長官、CIA長官が賛成したのに採用されなかった政策は、間違いなくオバマ大統領が却下したのです。おそらく、それで話は終わりになっておらず、その代わりに実行すべき政策が政権内で考察されているものと考えられます。それは武力介入かも知れません。それには、他の外国が反対しないことが必要ですが、ロシアは自国民をシリアから引き揚げ、イランですら現在まで強い反対の意志は示していません。こういう状況では、最終段階でシリア政府軍への空爆があり得るかも知れません。特に、ダマスカス西方のケジオン山に駐屯する共和国防衛隊の基地への猛爆を、反政府派が首都奪還作戦を行うのと同時に行えば、アサド政権への強烈な打撃となります。同時にトルコ国境からトルコ軍が侵入して、そこに難民の臨時救護所を設けるという方法もあります。

 それにしても、ケリー国務長官の態度があまり積極的に感じられないのが気になります。クリントン元国務長官は女性でも、常に意志を明確にする人でした。シリア内戦のような困難な事態には、常に果断な判断が必要です。まだ武力介入を行うような段階ではありません。繰り返し注意しているように、武力による成果は常に限定的です。 国務省はむしろ積極的に動くべき状況にあります。

 それから、内紛が長引けば、ここに外部から参入しているイスラム過激派の勢力がさらに増すことになります。それらの後始末も必要であることを考えれば、問題をあまり長引かせるべきではありません。今年の夏までにはアサド政権を退陣させないと、シリアはイスラム武装勢力の温床となることになります。


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