シリア反政府派が態度を軟化か

2013.2.22


 BBCによれば、シリアの首都ダマスカスで自動車爆弾が爆発して、少なくとも53人を殺し、200人を負傷させました。

 シリア政府はアルカイダにつながるテロリストグループの犯行と言いました。爆弾はシリアを支配するバース党本部の近くにある中央の地区で起こりました。

 事件はロシアとアラブ連盟が、政府と反政府派の直接対話を仲介したいと言う時に起こりました。シリア外務省は、爆弾事件を海外からの財政上、補給上の支援を受けたアルカイダにつながるテロリストグループの犯行としました。アル・ヌスラ戦線はかつて、2011年3月にはじまる内乱で、多くの爆弾事件を実行してきたと言いました。

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣(Foreign Minister Sergei Lavrov)は、戦争を「行き場所のない道」だと言いました。反政府派のシリア国家評議会は、エジプトで2日間の会議を開いています。木曜日には、国連とアラブ連盟の特使、ラダハル・ブラヒミ(Lakhdar Brahimi)は、ブラヒミ氏が2013年もその座にいることで合意しました。ブラヒミ氏の契約は金曜日に切れることになっていました。

 爆弾事件はバース党本部とロシア大使館に近い、中央マズラ地区(the central Mazraa neighbourhood)で起こりました。人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」は、少なくとも42人が死んだと言いました。大半は民間人でした。

 目撃者は、車がロシア大使館とバース党総本部の間にある検問所で爆発したと言いました。「巨大な爆発でした。店にあった物すべてがひっくり返しました」。彼は従業員3人が、爆発が起きた時に歩いていた少女を殺した、飛んできたガラスで負傷したと言いました。「私は彼女を店の中に連れ込みましたが、瀕死の状態でした。彼女を救うことはできませんでした。胃と頭部をやられていました」。

 国営メディアは爆発は近くの学校と診療所を襲い、学生が多く犠牲になったと言いました。爆弾はバース党本部を狙ったようですが、住宅地域にも及んだと、BBCのリナ・シンジャブ(Lina Sinjab)は言いました。

 自動車爆弾の直後、2発の迫撃砲弾がダマスカスの軍司令部に向けて発射されました。他に2つの爆弾事件が市内で、検問所でもあったと人権団体は言いました。

 ラブロフ外務大臣は、ロシア政府とアラブ連盟がシリア政府と反政府派の直接対話を実現したいと考えていると言いました。モスクワで、アラブ連盟とアラブ諸国の外務大臣を招待し、外務大臣は交渉のテーブルに着くことが、シリアに取り返しのつかない損害を出さずに内戦を終える唯一の解決策だと言いました。「行き場のない道、国民の相互破壊の道なので、どちらの側にも軍事的解決に頼ることを許すことはできません」と彼は言いました。ラブロフ大臣とアラブ連盟のナビ・エラレビ事務総長(General Secretary Nabil Elaraby)は、暴力を止めさせるために暫定政府を作ることが最優先事項だと言いました。交渉の条件は設定されていないと、彼らは言いました。この提案は最初、シリア国家評議会に冷淡な反応で受け止められ、上級メンバーのアブデルバセット・シイーダ(Abdelbaset Sieda)はアサド大統領と彼の一派が先に応じなければならないとしました。「その後で、我々は国民を殺すことに参加しなかった政権の他の者たちと議論することができます」と彼は言いました。

 しかし、ロイター通信はカイロで議論されている国家評議会の草案は、より軟化していると言います。書面は、アサド大統領の組織は政治的解決の一部とはできないというグループの姿勢を再び主張しますが、交渉の前にアサド政権を追放しなければならないというかつての要求は省略されています。イスタンブールにいるBBCのジェームズ・レイモンド(James Reynolds)は、それでもこれはダマスカスで受け入れられないかも知れないと言います。


 自動車爆弾はイスラム過激派の犯行と思われますが、やはり、彼らの躍進が目立つのが気になります。自由シリア軍はどのような活動をしているのでしょうか。アレッポ周辺だけでなく、ダマスカスでもイスラム過激派グループが活躍しているとなると、アサド政権が崩壊した後に、自由シリア軍とイスラム過激派が残る形になります。人数では自由シリア軍が上でしょうが、非常に心配です。

 アサド政権は明らかに劣勢で、このまま行けば、完全な敗北を喫することは間違いがありません。しかし、それにはまだ時間がかかる可能性があります。感覚的には、夏までには戦いは終わると思えますが、そうならない可能性もあります。もし、戦いが次の冬まで続いたら、シリアは壊滅状態になりそうです。

 アサド政権が対話に応じるとは考えにくく、反政府派が軟化しても、進展はないかも知れません。彼らは最後まで戦い続けて死ぬつもりかも知れません。結局、軍事的手段しか内戦を終わらせる方法はないのかも知れません。

 ロシアはビジネスが止まっているのを再開したいわけですが、彼らがアラブ連盟と協調して、内戦を終わらせようとしていることは、時代の変化を感じさせられますね。


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