新国防長官ヘーゲル氏ははどんな人?

2013.2.4


 次期国防長官になるチャック・ヘーゲル氏(Chuck Hagel)について、Wikipediaの記事を読んでみたところ、興味深い人物であることが分かりました。

 元共和党の連邦議員で、名誉負傷章受勲2回などの表彰歴史があるベトナム帰還兵(陸軍第9歩兵師団第47歩兵連隊第2大隊)でもあります。階級は3等軍曹で分隊長でした。

 除隊後は、軍の奨学金を得て大学を卒業する一方で、ラジオのニュースキャスター、トークショーの司会者を務めました。

 1971~1977年まで、彼はジョン・Y・マコリスタル下院議員(Jhon Y. McCollister)のスタッフを務めました。それから4年間はタイヤのファイアーストーン社のロビイストをやり、1980年には、ロナルド・レーガンの大統領選で事務局長を務めました。

 レーガン政権で、彼は復員軍人援護局の副局長を務めますが、1982年に予算を削減しようとしたロバート・P・ニモ局長(Robert P. Nimmo)に反対して辞職しました。ニモ局長は退役軍人団体を「欲張り」と、オレンジ剤を「十代の小さなニキビ」よりもましと呼びました。

 政府の仕事を辞めると、彼は携帯電話会社のバンガード・セルラー社を共同で創設し、大金持ちになります。

 その後は省略しますが、1996年に上院議員に当選し、2009年まで続けました。

 気になるのは、上院議員中の言動です。

 法案への投票状況は次のとおり。

法案
賛否
愛国者法案
賛成
減税法案(2001年、2003年)
賛成
児童教育法
反対
薬事法
反対
選挙資金法
反対

 対テロ戦に関連する発言を抽出しました。

 2002年10月11日、ヘーゲル他76人の上院議員はイラク決議に賛成しました。ヘーゲルは後に戦争を批判し、彼の投票はイラクに対する武力使用を承認したことに関してコメントしました。「何人がイラクの国家、歴史、国民、アラブ世界での役割について本当に知り、十分に理解しているでしょうか?。私はサダム後のイラクと中東の民主主義と安定性の未来という問題に、より注意と現実感を持ち、もっと謙虚に取り組みます」。

 2005年8月15日、ヘーゲルはイラク戦争とベトナム戦争を比較し、ディック・チェイニー副大統領のイラクの武装勢力が最後のあがきをしているという見解を隠すことなく嘲りました。2005年11月、彼はイラク戦への批判について「政府に疑問を持つことは非国民的ではありませんが、政府に疑問を持たないことは非国民的です」と反論しました。同年12月、彼はブッシュ、共和党、愛国者法について述べ「私は憲法に忠誠を誓っています。我が党や大統領にではありません」と言いました。

 2006年、ヘーゲルはカール・ローブ( Karl Rove)に対する反論で「愛国者法や国家安全保障局の盗聴を更新したとしても、テロリズムとテロリズムの問題、それに関するすべてのことをでっちあげるから、私はローブ氏が(明確化が必要だと)言ったことが好きではありません」。

 2006年7月、ヘーゲルは2006年のレバノン戦争に関するブッシュ政権の対応を批判し、「両者のうんざりする大量殺戮は終わらせなければならず、いま終わらせなければなりません。ブッシュ大統領は即時停戦を要請しなければなりません。この狂気は終わらせなければなりません」「イスラエルとの関係は特別で歴史的ですが、アラブとイスラム世界との関係を犠牲にする必要はないし、できないのです。それは無責任で危険で間違った選択です」。

 2006年の中間選挙での大敗北の後、ヘーゲルはワシントンポストにイラクに向けて採用し、計画された軍事戦略を強く批判する文章を寄稿しました。彼は「イラクでアメリカは勝利も敗北もしない」と書き、段階的撤退を要請しました。2006年8月の世論調査では、地元ネブラスカ州の共和党員よりも民主党員の間でヘーゲルは10%高い支持率を得ました。

 2007年1月、ヘーゲルはブッシュがイラクへ20,000人を増派する計画を公に批判しました。彼はそれを「ベトナム以降の最も危険な外交政策の失態」と呼びました。民衆のジョー・バイデン(Joseph Biden・現副大統領)とカール・レビン(Carl Levin)と共に、彼は民主党が与党の上院外交政策委員会で拘束力のない決議を提案し、国家の利益にかなわないとして12対9でブッシュ大統領の提案を否決しました。2007年4月、ヘーゲルはイラク占領は永続的に続けるべきではないという信念を述べ、イラク撤退期限を設ける法案で上院の民主党員と協力したいと表明しました。

 2007年11月、彼はブッシュ政権を「過去40年間の大統領の能力、可能性、政策、世論の支持、ほとんどすべての分野で最低」と格付けしました。

 イラク政策で別れるまでは、ヘーゲルとジョン・マケイン上院議員(John McCain)は2007年まで友人でした。ヘーゲルは2008年の予備選挙と総選挙でマケインを大統領に推しませんでした。ヘーゲルが国防長官に指名されると、マケインは彼は国家安全保障問題におけるヘーゲルの立場に深刻な懸念があると言いました。

 military.comによれば、ヘーゲル氏はマケイン上院議員から聴聞会で厳しい追及を受けました。マケイン議員は2007年にヘーゲルが増派を大失敗だと呼んだ点を追求しました。

マケイン 「あなたは正しかったのですか?。あなたの評価は正しかったのですか?」
ヘーゲル 「その答えを出すために、私は歴史の評価に従うでしょう」
マケイン 「私はあなたが正しかったのか間違っていたのかを知りたいのです。これは直接的な質問です。私は直接的な答えを期待します」「質問に答えてもらえますか?」
ヘーゲル 「では、私はイエスかノーでは答えるつもりはありません。それはもっと複雑です」「すでに述べたとおり、私は歴史の評価に任せます」
マケイン 「私は歴史はすでに増派の評価を出したと思います。あなたは間違った側にいたのです」

 説明の中で、ヘーゲルは増派が目的の助けになったことを認めましたが、彼は増派に関する自分の意見は、自分のイラク戦争の全般的な批判につながっていたとも言いました。彼と民主党の上院議員は聴聞会で、アメリカは大領破壊兵器についての間違った情報に基づいてイラク戦争を始めたと指摘しました。「私は(戦争は)ベトナム戦争以降で最も基本的に間違った、危険な決定だったと考えます」。


 私はヘーゲル氏は国防長官になるべき資質を持った人物の一人と考えます。オバマ政権はよくこういう人を選んだものだと思います。

 歩兵下士官として、戦場をよく知る人物が国防長官になることは好ましいことです。裕福なので、周囲からの影響もはねつけられる余裕があります。逆に、空軍出身者は地上戦闘がよく分からないし、兵器メーカーの意向を気にする傾向があって、間違ったことを言う危険を持っていると思っています。マケイン上院議員が好例です。彼はベトナム戦争で7年間も捕虜になった経験があるのに、よく間違ったことを言います。当サイトでも、何度も彼の発言を批判してきました。イラク増派について、イエスかノーで答えるようヘーゲル氏に求めること自体が、その誤りを象徴しています。イラク戦争はそれほど単純な戦争ではありませんでした。当サイトでも、増派しても変化はないとして主張してきました。深刻な懸念はマケイン上院議員の軍事知識の方です。

  イラク戦争に関するヘーゲル氏の見解は、私の見解と非常に近く、その点で、私は彼こそ国防長官になるべき人物だと考えます。アメリカ国民として、国に最後の奉公をして欲しい人物です。軍事をよく知った上で、平和を追求し、必要な時にだけ軍事的手段を選択するような人が国防長官に相応しいのです。


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