ダマスカス市街戦の反政府派の狙い

2013.2.8
修正 2013.2.11


 シリアのダマスカス周辺での戦闘はさらに続いています。alarabiya.netの記事から戦況を見てみます。

 ダマスカスを見下ろすケジオン山(the Qasioun Mountain・kmzファイルはこちら)に拠点を置くアサド大統領の共和国防衛隊は大砲とロケットを、反政府派が道路障害と軍基地を突破した、東部のジョバル(Jobar・kmzファイルはこちら)と南部の環状道路に向けて撃ちました。

 シリア政府は国の大部分を支配できなくなりましたが、空軍力に支援され、いまのところは、反政府派を首都の周辺に置いています。

 シリア国営メディアは、木曜日に北東のカボウン地区のバスステーションを反政府派が迫撃砲で攻撃し、女性1人と子供3人を含む6人が殺され、他数名が重傷を負ったと言いました。人権活動家は夜間の死者は30人で、大半は競合する隣接区域、ジョバル、ザマルカ(Zamalka・kmzファイルはこちら)、ハジャル・アル・アスワド(Hajar al-Aswad)での政府軍の重爆によるとしています。

 ジョバルとザマルカはアサドのアラウィー派の軍隊を収容する治安施設の近くです。ハジャル・アル・アスワドは南部の首都の入口と、ダルア(Deraa・kmzファイルはこちら)とヨルダン国境へ行く主要な幹線道路の近くです。

 国営メディアは独立系メディアのほとんどを禁止し、現地で起きていることを確認するのを難しくしています。ダマスカスにる、ある退役した軍将校は反政府派地区の砲撃は民間人と戦闘員を無差別に攻撃していると言いました。

 どちらの側も内戦ではっきりとした優位をつかんでいません。反政府派のリワ・アル・イスラム(Liwa al-Islam)部隊のイスラム・アロウシュ大尉(Captain Islam Alloush)は、最新の反政府派の攻勢の狙いは、ダマスカス中心部を占領することではないと言いました。彼は、ムレイハ地区(Muleiha・kmzファイルはこちら)とアドラ(Adra・kmzファイルはこちら)の政府軍が反政府軍に近い主要な基地を支配している間は試みられないだろうと指摘しました。「目的は政府軍のダマスカスの防衛戦の一部を形成する狙撃兵の陣地と防御拠点を奪うことで、適切な支援なしに性急に前進することではありません」。

 反政府軍は、ここ数ヶ月に政府軍から奪った対空機銃、迫撃砲弾、装甲車を使っています。

 BBCによると、レオン・パネッタ国防長官(Leon Panetta)は、議会での証言で、はじめてシリアの反政府派に武器を供給することに賛成したことを認めました。計画は当時のヒラリー・クリントン国務長官(Hillary Clinton)とデビッド・ペトラエス(David Petraeus)CIA長官によって提案されましたが、ホワイトハウスによって却下されました。


 記事は一部を紹介しました。

 どちらも明確な勝利は得ていないと記事は言いますが、反政府派の方が進展が見られる上、明確な戦術によって動いていることが分かり、やはり反政府派が有利に戦況を運んでいると考えざるを得ません。

 ケジオン山は首都の西部にあり、無名戦士墓地と、山の背後には広大な政府軍基地があります。谷を挟んで、大統領宮殿に隣接しています。山からは街が見下ろせる上、街から400mくらい高い位置にあります。山自体が防衛地形となり、有利な防衛拠点となっているのです。多分、化学兵器はここに集められているのでしょう。ここを破壊するには、反政府軍に空軍力が必要でしょう。 街の側からは攻めにくいので、西から攻撃するしかなさそうです。それには、まだかなりの準備が必要です。

 アロウシュ大尉の発言は重要です。ムレイハ地区は東部の街外れにあり、アドラは北部にいたる幹線道路に隣接した街北部の地区です。こららの地区で、まだ政府軍が抵抗していると考えられます。これらの地区が陥落したあたりから、本格的な首都攻略戦がはじまるのです。また、反政府軍が慎重に狙撃兵や道路障害を除去していることも分かり、着々と外堀を埋めていることが分かります。

 この感じだと、冬の間には内乱は終わらないでしょう。春くらいまでは続きそうです。アサド大統領が退陣しないと、ケジオン山の防衛隊基地が最後の戦場になるかもしれません。最終的に大統領は宮殿から防衛隊基地の中に移動して、首都を占領した反政府軍と対峙することになるかも知れません。

 アメリカはいかなる武器供給をも拒否しているようです。やはり、アルカイダに武器が渡ることを受け入れられないということでしょう。


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