内戦でシリアの医療システムが崩壊

2013.3.10


 BBCによれば、国境なき医師団(Medecins Sans Frontieres: MSF)によれば、2年に及ぶ内乱でシリアの医療システムは破壊されました。

 MSFは報告書の中で、病院、医師、患者は直接攻撃され、多くの医療関係者は国外へ逃げたと言いました。公共の病院の3分の1はすでに機能しておらず、医療活動は地下へ追いやられました。慈善団体は反政府派の支配地域で200人以上のスタッフを活動させています。シリア政府に何度ももっと広範に移動できるよう要求しましたが、許可されませんでした。アクセスが制限されているにも関わらず、2011年3月以来、慈善団体は20,000件以上の診療と、1,560件の外科手術を行いました。北部の反政府派の支配地域には3件の病院を開院しました。

 医師には「敵」のレッテルが貼られました。しかし、MSFは紛争がヘルスケアの概念を台無しにしたと言いました。「医療支援は攻撃目標とされ、病院は破壊され、医療従事者は捕らえられました」とMSFのマリー・ピエール・アリス医師(Dr Marie-Pierre Allie)は言いました。経験のある医療従事者が出国したことで、未経験の医療従事者が医療を行うことになりました。「歯科医が簡単な外科手術を行い、薬剤師が患者を治療し、若者が看護士として志願して働いています」と報告書は言いました。医師は負傷者の治療をするために国家の敵とされ、政府派と反政府派は現在、病院を戦争の戦略として活用しています。政府軍は医療施設を空爆する一方で、反政府派は施設を自由シリア軍病院の名前をつけ、攻撃の危険を増しています。

 医療活動は地下へ潜ることが増え、急ごしらえの病院が洞窟、住宅、農場に設置されました。MSFはこれらの施設までが空襲の対象となっていると言います。

 水曜日に、国連は百万人のシリア人が国外に逃げ、250万人が国内で難民になっていると言いました。国連は7万人が戦いで死亡したと見積もります。

 なお、BBCによれば、シリアの反政府派に拘束された国連平和維持軍のフィリピン人21人が解放され、ヨルダンに到着しました。


 記事の更新が遅れて済みませんでした。

 記事の一部は省略しました。

 3分の1の病院が破壊され、機能しなくなるとどうなるかは、日本国内で同じことが起きた場合どうなるかを想像すればよく分かるでしょう。東日本大震災で現地の病院が厳しい運営を迫られたことを思い出してください。

 普通、国がこういう状況になれば、国のトップは腹をくくり、事態を打開する決断をするものです。アサド大統領にはそんな気はなく、自分が名誉ある死を遂げることしか考えていないとしか思えないような発言を繰り返しています。さほど政治臭のしない人なのに、ここまで権力に固執する理由は何かあるはずです。自分が諦めると、アラウィー派すべてが殺されると信じているとか、かつて行った粛正の報復を恐れているのかも知れません。しかし、すでに勝利はほぼ失せたといえる状況なのに、何も動かないのは不思議です。そもそも、国民のことなど、関心がない人だったのかも知れません。

 関心が薄いといえば、日本人も島国で他国と隔てられているため、海外での惨状に無関心だという特徴があります。国内のことに関心を集中して、海外の話は聞かなかったことにした方が、楽しく生きられるためでしょうか。これは新聞記事にも影響を及ぼしています。日本の新聞は国内のことを知るには重宝ですが、国外のことは大して読むべき記事がありません。それが読者の特徴だとよく分かっているから、新聞社もそれくらいしか紙面を割かないのです。海外の情報を調べたければ、海外の新聞を読んだ方が話が早いのです。

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