反政府派が大統領宮殿や国際空港を砲撃
alarabiya.netによれば、シリアの反政府派は反乱2年目の記念日を祝うために、大統領宮殿とダマスカス国際空港、治安施設に迫撃砲弾を撃ち込みました。
フェイスブックに乗った声明は、反政府グループがダマスカスで活動中の部隊との共同作戦によって、120mm重迫撃砲を発射したと言いました。「この作戦は我々の革命が始まってから2回目の記念日に合わせて行われます」。ロイター通信は報道を独自に確認できませんでした。人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」は、数発のロケット弾が大統領宮殿の近くの地区に落下したと言いました。しかし、実際に建物に命中したかや犠牲者が出たかは不明です。
シリア国営メディアSANAは、5発の迫撃砲弾がダマスカスの別の地域に落下し、砲弾が大統領宮殿に近いティシュレーン公園(Tishreen Park・kmzファイルはこちら)に落ちたと言いました。犠牲者は報告しませんでした。人権活動家たちは、政府軍がシリアの首都で最大の戦力であり、道路を封鎖し、人々が移動することを許さないと言いました。
このニュースは自由シリア軍がイスタンブールで会議を開催した数時間後に報じられました。この会議は、臨時の首相と政府を選出するためのシリア国家評議会の会議に合わせて開催されました。記者会見で、シリアの反政府派指導者、サリム・イドリス(Salim Idriss)は、戦闘部隊は政府の権限を尊重すると言いました。「我々はヨーロッパ諸国が兵器と弾薬を我々に提供するという決定をすることを望みます。我々は彼らすべてに、これらの兵器が間違った者たちの手に、過激派の手に落ちないことを約束します」「私のメッセージは明白です。シリアの我々は戦うために武器と弾薬を必要としています」と将軍は言いました。
イドリスは自由シリア軍が武器を戦闘部隊とアーラー・アル・シャム(Ahrar al-Sham)などの反政府派グループに送り届ける能力があり、政権が崩壊したらこれらの兵器を返却すると言いました。イドリス将軍は、アル・ヌスラ戦線のような過激派グループは自由シリア軍と協調しておらず、共に活動していないと指摘しました。「我々はこの政府を支え、この政府の参加で活動します」「武器の能力の限界のために、自由シリア軍は政府軍からの攻撃すべてに対して、解放した領域を守ることができます」「我々は暫定政権にシリア領域すべてを、国内唯一の合法的政府であることを求めます。この政府に従わないすべての機関は違法に活動し、訴追されるものとされます」「アサド政権は合法性を失った占領政府です」。
alarabiya.netによれば、シリア軍の軍用機がはじめてレバノン北部を空爆したと、米当局者が確認し、この紛争の重大な拡大として非難しました。
国務省報道官、ビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)は「我々は、シリア軍のジェット機とヘリコプターがレバノン北部にロケット弾を発射し、アーサル(Arsal)に近いワディ・アル・ケイル(Wadi al-Khayl)に着弾したことを確認します」「これはシリア政府が罪をなしたレバノン主権侵害の重大な拡大を構成します。この種の主権侵害は絶対に受け入れられません」。彼女はシリア政府に、レバノンの主権と領域への厳しい尊重を求めた国連決議を思い出させました。
アメリカのレバノン大使、モーラ・コナリー(Maura Connelly)は、レバノン政府と接触しているとヌーランド報道官は言いました。
それより前、レバノン軍高官はシリアの軍用機が4発のミサイルを、オブザーバーが武器の密輸や戦闘員が越境するのに理想的という山岳地、砂漠に発射したと言いました。現地のレバノン治安当局者も、4発のミサイルがレバノン領内の反政府派の所在地に発射されたことを確認しました。彼は攻撃は、シリア国境に近い東部レバノンの、反乱を支持する住民が多いアーサルの町を目標としていたと言いました。
シリア系レバノン人のシーア派ヒズボラ運動に属するアル・マナル・テレビ(Al-Manar television)は、軍用機がアーサルのワディ・アル・ケイルにある、武装した男たちが使っている納屋2軒を狙ったと報じました。地元住民は、ミサイルは農業地帯に落ちて、犠牲者はいなかったと言いました。
レバノンはシリアの紛争には中立のままであることを公約していますが、紛争はすでに国内で緊張を悪化させ、レバノンに飛び火するという恐れを拡大させています。レバノンの反政府派はシリアの反政府派を支持し、ヒズボラとその同盟者はアサド政権を支持します。シリアの反政府派はヒズボラがシリア軍に戦闘員を派遣すると批判し、シリア政府は先週、武装したテロリストのギャングがレバノンから侵入するなら武力で応じると脅しました。
土曜日、レバノン政府筋は、同政府が警告を深刻に議論し、国境を管理する最良の方法を見つけるために徹底した協議を行っていると言いました。
120mm迫撃砲が使われたことは初耳です。これまで反政府派が政府軍から車両などを奪ったことは知られていましたが、重迫撃砲で攻撃が行われたことは初耳です。これが政府軍から奪ったものかは分かりません。シリア軍には榴弾砲や多連装ロケット砲はありますが、120mm重迫撃砲はなさそうです。これは海外から反政府派に提供された武器かも知れません。シリア軍に重迫撃砲がないとすれば、元砲兵の反政府軍兵士に使い方を訓練する必要があり、かなり前からそうした訓練が行われてきたことを示唆します。欧州連合はこれから武器禁輸を解くことになっていますが、それよりも前にアラブ連盟が提供したのかも知れません。訓練は民間軍事会社がやった可能性もあります。
自衛隊も使っているフランス製の120mm迫撃砲RTだと、通常弾で射程が8,100m、ロケット補助推進式のRAP弾で13,000mとされます。多分、ダマスカス東部の反政府派の支配地域から撃ったのでしょうが、住宅地が途切れ途切れになる辺りで撃ったことになります。問題は発砲後に、政府軍から対砲兵射撃を受ける前に撤収することです。対砲兵射撃は発砲した地点に、攻撃した側から砲弾を撃ち込むことです。これを防ぐには、発砲後にすぐに撤収するしかありません。けん引式の迫撃砲はこれに時間がかかり、対砲兵射撃を受ける恐れがありますが、自走式なら発砲後、直ちに撤収できます。どちらの兵器を用いたのかは、今後の反政府軍の作戦を考える上で重要です。
ティシュレーン公園は前回紹介したオペラハウスが隣接する円形交差点の反対側にあり、広大な敷地の、細い扇形の公園です。大統領宮殿に最も近い場所で850m程度です。
今回の攻撃は多分に、内乱2年目を記念し、政府に脅威をデモンストレーションする意味合いが強いのですが、重迫撃砲を持っていることを示したことは、大きな意味合いがあります。大統領宮殿の10km圏内に反政府派がいれば、宮殿が直接攻撃される恐れがあるからです。
レバノン領内への攻撃は、シリア政府が警告してからすぐに行われました。シリア政府は相当に焦っていると感じました。反政府派がどういう対応をするかが問題です。レバノン領内での活動は中止して、隣国への余波を断ち切るか、一層見えにくいものにするかといった選択が必要です。できるだけレバノンは巻き込まない方が反政府派には有利です。
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