特別声明の後も開城工業団地に変化なし

2013.3.31

 聯合ニュースによれば、北朝鮮が30日に「北南(南北)関係が戦時状況に突入した」とする「政府・政党・団体特別声明」を発表したあとも、開城工業団地の韓国企業関係者の往来は通常通り行われています。

 韓国統一部によると、北朝鮮側は同日午前7時50分に開城工業団地管理委員会を通じて同団地への出入りを承認したことを知らせました。同午前8時30分には韓国側から78人が開城入りしました。同日は241人が開城入りし、510人が韓国に戻る予定です。

 時事通信によると、朝鮮中央通信は北朝鮮の中央特区開発指導総局の報道官は30日、韓国と共同運営している開城工業団地について、「かいらい逆賊がわれわれの尊厳を少しでも傷つければ遮断、閉鎖する」と警告しました。

 北朝鮮は最近、米韓合同軍事演習に反発して、南北間の軍事通信回線を一方的に遮断。このため開城工業団地への往来に支障が生じる懸念が出ています。

 しかし、北朝鮮側は団地への通行を引き続き認めており、韓国メディアなどは「外貨獲得源なので手をつけられない」と報じています。北朝鮮の報道官はこうした観測に対し、自国を侮辱するものだと反発。「われわれは、工業地区を閉鎖すれば南の中小企業が破産することを考慮し、自制している」と強弁しました。 


 開城工業団地がいまでも稼働を続けているなら、北朝鮮は戦争をするはずはありません。

 やはり、工業団地の閉鎖というカードを切ってきました。しかし、声明には閉鎖したくないという意図が強く見えます。戦争をするつもりならば親切にも「南の中小企業が破産すること」を考慮する必要はありません。むしろ、韓国を混乱に陥れるには、経済危機が来た方が望ましいはずです。

 それなのに、いつものように、前提条件つきの行動予告をしたということは、前提条件が満たされなければ、行動を起こさないということです。

 北朝鮮が連日、大げさな発表を繰り返す理由は、やはり米韓合同演習「キーリゾルブ」でしょう。本土攻撃まで持ち出したのは、B52、B2爆撃機を演習に投入したことで、金正恩を狙った爆撃を本気で警戒したのかも知れません。イラクのサダム・フセイン大統領は暗殺を恐れて、常に移動していたといいます。金正日も長期間姿を隠す場合があり、それはアメリカの攻撃を防ぐためだったともいわれます。現在の北朝鮮の状況は、そのためかも知れません。本土を攻撃すると脅せば、金正恩の暗殺は避けられると考えるのは、現実的な攻撃手段がない点を除くと、一応は筋が通っています。

 アメリカは空母を中東からアジアに一隻回すつもりのようです。いまでも北朝鮮が過剰な反応をしているので、空母の追加は刺激が強すぎるかも知れません。暴発する手段がないので、そのために北朝鮮が暴発する可能性はないでしょう。攻撃はあっても、小規模なものに限られます。


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