北朝鮮のミサイル発射は今日明日か?

2013.4.14


 聯合ニュースによると、韓国の朴槿恵大統領は11日、与党議員との会合で、「北朝鮮と対話する」と発言、北朝鮮との対話に意欲を示しました。柳吉在(リュ・ギルジェ)統一相も同日、開城工業団地の操業が中断した問題で、「北朝鮮側が望む事項を論議するためにも、北朝鮮当局が対話の場に出ることを望む」と北朝鮮に対話を呼び掛けました。

 NNNによれば、韓国国防省は、北朝鮮にとって最大の祝日である、15日の故・金日成主席の誕生日頃までにミサイルを発射する可能性が高いとみて警戒を続けている。また、韓国政府関係者によると、北朝鮮は東朝鮮湾付近の元山周辺に移動させた中距離弾道ミサイル「ムスダン」を、建物の中に入れたり出したりする動きを繰り返しています。

 一方で、北朝鮮に全面戦争をする能力がないことを示す記事もあります。

 アジアプレスによると、北朝鮮は国内の一般部隊には戦闘訓練を中断させて戦時勤務態勢を緩め、農作業に従事させていることが分かりました。アジアプレスの北朝鮮内部の取材協力者が10日電話で伝えた話です。

 北部地域に住む行政職の取材協力者によると、「哨所(詰め所)の兵士も一般部隊の軍人たちも、農作業準備のために部隊の所有する畑(副業地と呼ばれる)にテントを張りに行っている。農作業をちゃんとやらないと秋になって収穫できなくなるからだ。依然、栄養失調状態の兵士が多い。もう戦争訓練もやっていないし、市場も平常どおり運営されている」と述べました。北朝鮮では、4月中旬頃から主食のトウモロコシの植え付けが始まりますが、その前に畑を鋤き堆肥を施す作業をしなければなりません。4月から6月までは、軍人、労働者、学生が総出で農作業をします。

 朝鮮日報によると、北朝鮮の強制収容所経験者として知られる脱北者出身の姜哲煥(カン・チョルファン)客員記者(44)=北韓戦略センター代表=の「金正恩の言葉の戦争」と題する寄稿文を掲載しました。

 「戦争をやるなら同盟国の支援、軍事的能力、民心を含め勝利に対する内部的確信がなければならない。とくに中国を説得し万一の際の軍事介入の約束確保が必須だが、現在の北朝鮮にはそのいずれもない。おそらく金正恩自身が最も戦争を望んでいない可能性が高い」「戦争をやれない最も重要な要因は民心が最悪の状態になっていることだ。開城工業団地に対する閉鎖カードを持ち出したことも、民心が(豊かな)韓国に傾くことが数千万ドルの外貨収入よりも問題だからだ。金正恩政権は中国式の改革・開放に北を変えるより、父・金正日時代の先軍政策の方が権力維持にはいいと信じている」「(戦争の結果)外部からの軍事的介入は結局、2300万の人民の心と一緒になって平壌の政権を崩壊させる巨大な波及効果につながるため、金正恩としては戦争挑発は事実上、不可能」。「言葉の戦争」に惑わされないよう韓国に注文している。


 記事は一部だけを紹介しました。

 朴大統が対話を呼びかけると発言したのは、タイミングが非常にまずいと感じます。15日に北朝鮮で金日成の生誕記念行事があり、北朝鮮はそれまでに国際社会から何らかの成果を引き出したいと考えているはずです。国際政治の分野では「対話」は弱い側から強い側へ提案されるものであり、朴大統領の呼びかけは、金正恩にとって成果とみなされる可能性があります。「悪鬼の米韓による挑発に毅然と対応した人民軍の歴史的勝利」といった宣伝材料になりかねません。幸い、まだ実際に呼びかけは行われていません。対話をするにも、「朝鮮半島の非核化」のような前提条件をつけるべきでしょう。

 北朝鮮が行っている「攪乱」はムスダンによって行われているらしいことが確認されました。これはムスダンが張りぼての模型である可能性を示唆すると、私は考えます。もちろん、断定はできないのですが、普通、弾道ミサイルをこのように動かしてみせることはあり得ないことであり、張りぼてによる威嚇効果を最大限にするための演出のようにも見えます。ムスダンが張りぼてなら、KN-08もそうではないかと推定することも可能でしょう。もともと、北朝鮮のミサイル開発の速度は、他の国に比べても不自然なくらいに早く、ムスダンが表面化したらすぐにKN-08の話が出てきました。普通、こんなに早く新しいミサイルを開発することはありません。テポドン2号の開発が遅れに遅れているのに、中距離ミサイルの開発が順調というのは変な話です。

 哲客員記者の主張は、北朝鮮が戦争をできない決定的な理由です。朝鮮戦争は中国が承認したから可能になりました。中国が承認せずに戦争をすれば、確実に物資は欠乏します。

 さらに、全面戦争になれば、軍隊を農作業に使えなくなり、今年の冬の食べ物が不足することになります。

 ミサイルを発射するのなら、15日前後が一番効果的です。ムスダンが発射可能かどうかは、今回の事件の一番の関心事です。発射されなければ、それは政治的な問題ではなく、ミサイルの技術的な問題で、打ち上げられるまでに完成していない証拠の一つになります。

 今朝の北海道新聞が、自衛隊の地上配備型迎撃ミサイルPAC-3の実車経験の少なさと射程の短さを指摘していて、私は驚きました。これまでミサイル防衛について、マスコミは無条件に効果のあるものと紹介することが多かったのですが、ようやく客観的に考える余裕が出てきたようです。


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