ヨルダン国境に緩衝地帯の建設が進む?

2013.4.4


 alarabiya.netによれば、アメリカとヨルダンがシリアの反政府派に対戦車兵器の訓練を活発化させていると、ワシントンポストが報じました。

 訓練は昨年はじまったとされ、シリアの南部国境に緩衝地帯を確立するためにも用いられます。

 「ヨルダン軍当局者は、6月末までに、3,000人の自由シリア軍将校の訓練を完了させる過去の計画は、国境での勝利を考慮して、今月末へ前倒しされたと述べました」とポスト紙は報じました。緩衝地帯は本質的には、いま反政府派の手にある地帯を、この地域の大勢の政府軍離反者と家のない民間人のための恒久的避難所として転換することと、人道支援に容易にアクセスできるようにすることを狙っていると、記事は付け加えました。「シリア国境側の緩衝地帯はヨルダンから紛争を遠ざける唯一の方法です」と、アブドラ2世国王防衛研究所の戦略研究センター長、マフムード・アイダイサト(Mahmoud Irdaisat)は言いました。先月、ドイツのシュピーゲル紙は、訓練の参加者や主催者が訓練にいると報じ、一部の者が軍服を着ていたものの、アメリカ人が民間会社で働く者かや軍人かは疑いがあったと付け加えました。

 シュピーゲル紙は訓練は対戦車兵器に焦点を当てていると言いました。ヨルダン情報部はこの計画に関与していて、イスラム過激派を除いた約10,000人の部隊を作ることを狙っていまると、シュピーゲル紙は報じました。米国防総省、英仏の外務省はシュピーゲル紙の報道に対して、コメントを拒否しています。

 イギリスのガーディアン紙も最近、アメリカ人教官がヨルダンでシリアの反政府派に配属されていると報じました。イギリスとフランスの教官もこの活動に参加しているとガーディアン紙はヨルダン治安筋の言を引用しました。


 やはり、この種の活動がヨルダンでも行われていたのかと思いました。トルコでの活動だけでなく、南側でも同じような動きが起きているわけです。隣国の不安を利用して、シリア内戦を終わらせるための活動が起きていることが確認されました。

 緩衝地帯はそれ自体は、シリア政府の打倒につながりませんが、訓練を受けた兵士が内戦に参加することもあるでしょうし、ダマスカスへの補給路の遮断にも役立ちます。

 では、イラクで同じ動きがないのはなぜか。これは少々不思議です。米軍主導でイラク軍を再建したのなら、トルコとヨルダンと同じように緩衝地帯を国境地帯に設けるべきです。自力で防衛できるという自負があるのか、またアメリカに介入されるのを嫌っているのか、イラクは自国軍を国境付近に配備して対応しています。

 それでも、北と南、東側の国境には、シリア政府の味方はいないわけで、頼れるのはレバノンだけということになります。そろそろ、シリア政府の限界が迫っていると、私は思うのですが。


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