安倍総理が自らの歴史認識を修正?

2013.5.9


 読売新聞によれば、韓国の朴槿恵大統領は8日、米上下両院合同会議で英語で演説しました。

 朴大統領は北東アジアの地域情勢について、「歴史問題」で衝突が絶えないと指摘し、名指しは避けながら日本を批判しました。

 朴大統領は、北東アジアでは国家間の経済的な相互依存が増す一方で、歴史問題を巡る衝突が続いているため、政治や安全保障分野の協力が進まないと指摘。大統領はこうした現状を「アジア・パラドックス(アジアの矛盾)」と呼び、「歴史に目を閉ざす者は未来が見えない」との表現で、日本政府の歴史認識を批判しました。

 読売新聞の別の記事によれば、安倍首相は8日の参院予算委員会で、戦前の日本とアジア諸国の関係について「わが国はかつて多くの国々、とりわけアジア諸国の方々に多大な損害と苦痛を与えた」と答弁しました。

 首相の歴史認識を巡る発言が海外で波紋を呼んでいるため、事態の沈静化を図ったとみみられます。政府は今後、各国に改めて首相の真意を説明していく方針です。

 ワシントンポストによれば、朴大統領は同紙とのインタビューで、日韓関係について、次のように述べました。(記事はこちら

問い 韓日関係をどのように評価しますか?

答え 私は8年前、北朝鮮の核開発危機が進行中で、日本も(紛争中の島について)発言し、それによって韓日関係が悪化した時に、ワシントンポストのインタビューを受けた時のことを覚えています。8年後、私は日本と韓国の間になんの進展もないのを見て、非常に失望し、不満を感じます。日本と韓国は多くのこと、民主主義や自由、市場経済の価値を共有していますし、私たちは安全保障問題と同じく、北朝鮮と経済の問題で協力する必要があります。しかし、日本人は古傷を開き、それらを悪化させてきましたし、これは韓国だけでなく、他の隣国にも当てはまります。これは本当に気運を作る私たちの能力を拘束します。だから、私は日本が自らを省みることを望みます。

問い この地域の国々、日本、中国、その他の国々との緊張は、どのように危険なのですか。アメリカが、さらにできることは何ですか?

答え アジア・パラドックスについて言及することになります。私たちは、不安のうちに、政治と安全保障上の分野に波及した様々な歴史的問題から来る緊張と共存しながら、北東アジアでの経済の相互関係を深めていると理解します。ヨーロッパと違い、この地域には多国間の議論をする枠組みがなく、これはまったく意味がありません。これが私が、アメリカを含めた北東アジアの諸国によって、北東アジアのための平和と協力のイニシアチブを前進させることを提案する理由であり、これはアメリカとの私たちの同盟を堅固に固め、気候変動、テロリズム、核の安全といった非政治的な問題に取り組めます。私たちは信頼を築き、そして協力のためのより大きな問題へ移行できます。これが私が提案するものですが、あまり沢山のことではないかも知れません。私はこの地域にある感情の状態は危険極まりなくなり得ると考えるので、私たちが信頼を築けるなら、これは私がアメリカと一緒に達成したい計画であり、事実、今日の会談でオバマ大統領に提案したことなのです。


 アメリカの国務省から日本の外務省へ、朴大統領とオバマ大統領との会談の後に連絡があったのかと思わせる展開です。

 安倍総理の一連の発言が日本と隣国の関係を損ねていることについて、国務省が懸念を日本に伝えたのかも知れません。

 安倍総理は早速、発言を修正。しかし、言うまでもなく、安倍総理は本心を隠しています。

 朴大統領の提案は、実に有益で、安倍総理が言う「未来志向の歴史認識」よりも遥かに未来志向だと感じます。

 このサイトでいつも書いていますが、日本の政界もマスコミも、日韓関係にアメリカを介在させることの有益さを否定しすぎです。政治家も記者も、日韓の関係悪化を二局対立としか見ません。テポドン2号への対策で日韓が協力しないのは、ほとんどコメディです。アメリカを介在させて、最悪の事態を避けようという政策が構築されないのは不思議です。

 安全保障政策の分野で、どちらの国にも米軍がいて、それぞれが防衛のための条約も持っています。なのに、両国は反目しあっています。これこそ、日本の安全保障を損なう重大問題です。

 アジアに欧州連合のような機構がないことも、この地域の不安定につながっています。欧州連合までいかなくても、外交チャンネルの強化は常に行わなければなりません。そのために、歴史認識の問題は日本が乗り越えるべき問題です。

 「戦勝国の言いなりになるのは誤り」という考え方は、そもそも成り立たないと、私は考えます。それなら、なぜ自民党は在日米軍を日本から追い出そうとしないのかが、まず疑問です。それに、日清・日露戦争の敗北を中国とロシアが受け入れないと言い出したら、日本はその通りだと思わないでしょう。なにより、アメリカが日韓の仲介役として存在することで、この同盟が安定したものになるという利点は無視できません。

 戦争に負けたふりをして、外面ではアメリカに従いながら、あとは好きにやらせてもらうという面従腹背の発想で、アジア地域を安定化させられるとは思いません。

 これらは保守的な発想と志向から、歴史問題で波風を立てる余地がある話ではないのです。

 安倍総理がどこまで突っ張るつもりかは知りませんが、安全保障政策の見地からは突っ張り切れないのは明白です。だから、私は新自由主義という考えに与したくないのです。朴大統領は具体的な提案をアメリカに提出しました。安倍総理が自説の通りに提案を出したら、ホワイトハウスが困惑することは間違いありません。


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