「防衛力の在り方検討に関する中間報告」
防衛省から「防衛力の在り方検討に関する中間報告」が発表されました。
離島防衛に関する記述もあるので、下に引用しました。
ア 各種事態への実効的な対応
(ア) 警戒監視能力の強化
実効的な抑止及び対処の実現には、我が゙国周辺を広域にわたり、かつ、常時継続的に警戒監視を行い、各種事態の兆候を早期に察知する能力の向上のため各種装備等の充実が不可欠である。この中で、例えば、我が゙国領海・領空から比較的離れた地域での情報収集や事態が緊迫した際の空中での常時継続的な警戒監視等の点において、現有の装備品の能力が十分ではないことから、搭乗員に対する危険や負担を局限しつつ、広域における常時継続的な警戒監視態勢の強化に資する高高度滞空型無人機の導入等についても検討する。
(イ) 島嶼部に対する攻撃への対応
島嶼部への攻撃に対して実効的に対応するためには、あらゆる局面において、航空優勢及び海上優勢を確実に維持することが不可欠である。また、事態の推移に応じ、部隊を迅速に展開するため、機動展開能力や水陸両用機能(海兵隊的機能)を確保することが重要となる。具体的には、航空優勢及び海上優勢の確実な維持のため、航空機の質的向上、空中における常時継続的な戦闘・哨戒能力や広域における常時継続的な対潜哨戒能力の充実、対艦ミサイルの能力向上等について検討する。また、事態への迅速な対応に資する機動展開能力や水陸両用機能(海兵隊的機能)の着実な整備のため、部隊・装備の配備、統合輸送の充実・強化や民間輸送力の活用、補給拠点の整備、水陸両用部隊の充実・強化等について検討する。
政治家やマスコミだけでなく、防衛省も水陸両用機能を表現するために「海兵隊的機能」という言葉を用いていることが確認されました。まかり間違えば、外征機能を自衛隊に付与すると誤解されかねないことです。「海兵隊的機能」はカッコ表記で、その前に「水陸両用機能」と書いており、防衛省が本当は「水陸両用機能」と書きたいと思っているらしいことは分かりますが、政治家が言い出した言葉を否定するのが恐いみたいに見えます。
この文章を読んでも、本格的な上陸作戦を実施するための機能を自衛隊に準備するようには感じられませんでした。非常に中途半端な印象があります。
要するに、上陸した敵に対する攻撃能力に関する説明が、水陸両用部隊以外にはないのです。その水陸両用部隊を支援する戦力の説明がほぼありません。文章からイメージできるのは、攻撃する島の周辺を海自と空自が警戒し、敵の接近を拒む中、陸自の水陸両用部隊がほぼ支援なしに敵地上部隊の眼前に突入していく姿です。それはまるで、「戦い」の祭壇に生け贄を捧げるかのようです。「血を流せ」という言葉の通り、陸自隊員が海岸線でバタバタと倒れていく姿しか、私には連想できません。
彼らを支援するために無人偵察機を導入するのはよいでしょう。しかし、無人偵察機が得た情報を基に、上陸前に敵を叩く武器が文中には見えません。空自機は事前に爆弾を沢山落としてくれるでしょう。そうした訓練はこれまでにも行っていますから、この文章で特に記述することではありません。しかし、地下に潜っている敵を空中からの爆撃だけで、十分なまでに駆逐できるとは言い切れません。戦史が教えるのは、さらに精密な爆撃が必要だということです。それはどの武器が行うのかが分かりません。
自衛隊の猛烈な爆撃により、日本国民が死亡する場合もあります。自衛隊は「領域」を守るのであって、「個々の国民」を守るのではありません。つまり、離島に住む人たちは、民間防衛を自らの手で行う必要があるのです。実際に、攻撃を受けた場合、どうすればよいのかを住民に教育しておかないと、自衛隊の反撃も効果が薄くなります。外国軍に占領された間、住民はどのように生活をすればよいのですか?。占領軍にどのように接すればよいのですか?。国際法上の戦争犯罪を犯さないためにはどうすればよいのですか?。避難場所は造らないのでしょうか?。非常用の食糧や医薬品はどうするのですか?。そういう説明は一切ありません。
防衛省の説明では、敵が上陸する気配を察知したら、事前に部隊を配備して抑止するということです。それでも敵が上陸してくるということは、敵は島に対して猛烈な砲爆撃を仕掛けると考えなければなりません。要するに、北朝鮮の砲撃を受けた韓国の延坪島(ヨンピョンド)にあるような防衛態勢か、それ以上のものを準備しないとなりません。本気で離島防衛を考えるのなら、住民が本気で戦う準備をしなければならないのです。
これは本気の戦争計画ではありません。中国軍の動きに不安を感じる、気の弱い日本人の神経をなだめるためだけの偽の戦争計画です。防衛省も、内心は、中国軍の空軍や海軍は自力で阻止できるから、島に爆弾が落ちることはないと踏んでいるのです。無知な国民を騙し、ポイントを稼ごうとする、政治家たちに調子を合わせているだけとしか、私には見えません。
|