化学兵器攻撃の根拠は通信傍受?

2013.8.29


 alarabiya.netによれば、米情報機関はシリア国防省当局者が化学兵器攻撃のあとで、化学兵器部隊指揮官と交わした通話を傍受したと、雑誌「Foreign Policy」(記事はこちら)が火曜日に報じました。

 「先週水曜日、ダマスカス東部の化学兵器攻撃があった数時間あと、シリア国防省当局者と化学兵器部隊指揮官と、1,000人以上を殺した神経剤攻撃の答えを求めて、取り乱して電話で話をしました」と記事は書きました。

 「これらの会話は米情報機関により盗聴されました」「これが米当局がいま攻撃がアサド政権の仕業だと確信し、米軍が数日中にシリア政府を攻撃しそうなのかの、主要な理由です」。


 記事は一部を紹介しました。

 これが本当なら決定的ですが、これだけでは何とも言えません。証拠が開示された時には、通話の中身だけでなく、通話の音声も公開されなければなりません。

 今回は証拠があるとは思いますが、冷戦中には誇張された脅威が、証拠も示さずに、アメリカの安全保障政策に組み込まれたりしたものです。イラク侵攻では、CIAが間違った情報を信じたことに、イラクを攻撃したいという思惑が加わって、虚偽の脅威が流布されました。

 記事はごく簡単な内容ですが、化学兵器部隊が独断で化学兵器を使い、その事実をシリア国防省が電話で確認したように読めます。

 「Foreign Policy」は、現場の暴走か政権上層からの命令があったのかは不明だと書いています。それを知らない国防省当局者が、確認のために電話をかけたのかも知れません。

 証拠はないものの、大規模な化学兵器攻撃を命令なしに部隊指揮官が独断では行わないものです。

 なぜ、査察官がいる時に、あえて化学兵器攻撃を行ったかは、欧米をシリア内戦に巻き込ませるためとしか考えられません。アサド政権は、欧米が地上軍を派遣できないと踏んでおり、大して介入できないと考えている、と考えると、一応の筋は通ります。それは、ロシアと中国の介入を促進し、有利に働くと考えている可能性があります。

 傍受された通話の中身と、米英仏が検討している攻撃の種類を早く知りたいものです。「Foreign Policy」は攻撃目標を35ヶ所と推定しています(記事はこちら)。


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