米ロがシリアの化学兵器に関して合意
BBCによれば、アメリカとロシアはシリアの化学兵器を2014年中頃までに破壊するか移動すべきという合意に達しました。
ジョン・ケリー国務長官(Secretary of State John Kerry)はシリアは1週間以内に貯蔵物の完全なリストを引き渡さなければならないという枠組みを説明しました。シリアが応じなければ、取り決めは国連による制裁か軍事力の脅威により執行されます。
セルゲイ・ラブロフ外務大臣(Foreign Minister Sergei Lavrov)との記者会見で、ケリー長官はアサド政権に公約に応じるように求めました。「ゲームをする余地はありません。アサド政権による完全なコンプライアンスしかありません」とケリー長官は言いました。
ケリー長官とラブロフ大臣は、シリアが応じなければ、国連の制裁が、軍事力の行使を認める国連憲章第7章の下で模索されるだろうと言いました。
米当局者によると、ロシアとアメリカは、1,000トンの化学剤と前駆剤を保有するという評価で一致しました。アメリカは資材が45ヶ所の施設に配置されていて、すべてがシリア政府の手にあり、その半分は化学剤として使用できる量だと考えています。しかし、ロシアは施設の数にも、すべてが管理下にあるということにも同意しませんでした。
合意は初期の現地調査が11月までに完了しなければならないと言います。生産設備は11月までに破壊されなければならず、すべての化学兵器の資材と装備は2014年の前半までに完全に撤廃されなければならないとも規定します。
ケリー長官は6点の合意を説明しました。
- 化学兵器の量と種類は国際管理の下に迅速に置かれなければならない
- シリアは1週間以内にその貯蔵物の包括的リストを提出しなければならない
- 化学兵器禁止条約の下での特別な手順が迅速な破壊を許可する
- シリアは査察官に、すべての施設への迅速で自由なアクセスを与えなければならない
- シリアの領域から武器の除去する可能性を含め、すべての化学兵器は破壊されなければならない
- 国連は補給支援を提供し、コンプライアンスは国連憲章第7条の元で実施される
記事は一部を紹介しました。
合意に達したのは米ロであり、シリアではありません。6カ条を本気でシリアが守らないと、合意は破綻します。なにより、内戦が継続する中での化学兵器廃棄は前例がありません。カンボジアの地雷撤去にしても、内戦が終結した後の話です。
もし、シリア政府が劣勢になって、一度は封鎖した施設に入り、化学兵器を持ち出したら、どうなるのでしょうか?。
処理方法も、現地で行うのか、米ロ両軍が共同してシリアから持ち出し、検証可能な形で廃棄するのかすら決まっていません。
なにより、1週間以内にシリアがリストを提出しなければ、合意は消散します。国連査察官がシリア国内にいる時に化学兵器を使うのがシリア軍です。イスラエルの脅威もあるのに、シリア軍が化学兵器をあっさりと手放すかという問題があります。
最終的に、化学兵器を処理・運搬するために、米ロ両軍の実働部隊がシリア領内に入る可能性もあります。内戦継続中に、外国部隊が国連の管理のために入るのは異例中の異例です。
この問題はまだ結末が見えません。シリアは米ロの会談を単に時間稼ぎに利用するだけで、合意を無視するかも知れません。米ロ両軍が化学兵器の運搬・処理のために入国したことで、この地域が一層不安定になる可能性があります。
しかし、成功すれば、これは紛争中の国での武器管理に成功するという最初の事例になります。国連がすべて主導したとは言いがたく、米ロ二国間協議の成果であり、米軍、仏軍の軍事的圧力の下ではあるものの、執行は国連主導で行われることになります。国連がこれほど内戦に介入できた事例は過去にありません。完全ではないものの、国際社会の大きな成果といえます。これに中国が加われるようになれば、世界の紛争は大体、抑制できるといえるほどです。
追加
書き忘れたことを付け足します。
もうひとつの可能性は、国際社会による化学兵器の廃棄により、この内戦が一気にアサド退陣へ向かうことです。最後の手段の化学兵器を失うことで、シリア軍に危機感、あるいはアサド大統領への不信が起きるとか、その他の予測できない事態が発生して、内戦が収束に終わる可能性があります。国際社会にとっては、これが一番望ましいのです。
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