米軍は化学兵器施設を攻撃せず

2013.9.7


 military.comによれば、米国防総省はシリアの化学兵器貯蔵庫を攻撃したり、施設を確保するために米兵を送ることを除外しました。

 国防総省広報官、ジョージ・リトル(George Little)は木曜日の記者会見で「我々は作戦立案で、(空爆の後で有毒な化学剤の雲の形で)化学貯蔵物の多大な散乱があるかもしれないことを配慮しています」と言いました。リトル報道官は、いかなる形であれ、化学兵器を確保するために兵士派遣をするつもりはありませんとも言いました。

 記者会見でリトル広報官は、チャック・ヘーゲル国防長官(Defense Secretary Chuck Hagel)の失言を、また払拭しようとしました。

 議会外交委員会の証言で、ヘーゲル国防長官は「アサド政権が化学兵器の膨大な貯蔵を持っていることは誰もが知っている」と言いました。化学兵器の出所を尋ねられると「ロシア人が彼らに供給します。他の者たちが彼らにそれらの化学兵器を供給しています。彼らは一部を自分で作ります」。

 「(ヘーゲル長官は)よく知られたシリアとロシアの通常兵器の関係について述べたのです」「シリア政府は十年越しの大規模で、固有の化学兵器計画を持っています」とリトル広報官は言いました。一部の通常兵器は修正されたり、化学兵器計画を支援するために使われました。

 水曜日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(President Vladimir Putin)は、シリアはすぐに、シリアの防空を強化する新しい通常兵器システムをモスクワから受け取ると言いました。

 テレビインタビューでプーチン大統領は、ロシア政府がS-300防空ミサイルシステムを売却する契約を結んだと言いました。「我々はS-300ミサイルを供給する契約を結び、すでに一部の部品を送りましたが、供給をしばらく中断することを決めたため、全部は送っていません」「しかし、国際法が侵犯されるなら、こうした精度が高い兵器を世界の特定の地域に供給することを含め、我々の将来の行動を再検討するでしょう」。


 記事は一部を紹介しました。

 まず、化学兵器施設を攻撃しないことを決めたことが明らかになったので、民間人へ被害が及ぶという問題が一つ片づきました。これが、先日紹介した化学兵器用爆弾が完成していないためなのかは不明です。(関連記事はこちら

 次に、ヘーゲル国防長官がかなりひどい失敗をしたようです。ロシアを名指しでシリアの化学兵器の提供者と呼んだのは誤りです。S-300の問題がある中で、ロシアを完全に敵に回すのは、意味がありません。S-300の問題をうまく解決するためにも、ロシアは味方につけておくべき存在です。

 国内・国際世論がまったく盛り上がらないために、少し脅かす必要があるという心理から出た言葉といえますが、 これでは過去の米政権が、脅威を実際以上に誇張してきた失敗を繰り返すだけです。

 プーチン大統領がうまく信号を送っていることを、米政府は理解しているのでしょうか?。まだ、話し合いの余地はあるという信号を、プーチン大統領は送っています。しっかりキャッチして、ロシアと妥協しつつ、シリア問題の解決を図るべきです。

 この展開を見ていると、すでに失敗に向けて走り出しているようにも見えます。


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