アメリカと国連が虐殺報告に戦慄

2014.1.22


 BBCによれば、アメリカと国連はシリア内戦で11,000人の拘留者が拷問され、処刑されたという報告書に戦慄しました。

 アメリカは、報告書はアサド政権を排除する必要性を強調すると言いました。シリア政府の広報官は、報告書は反政府派を資金を提供するカタールが依託したもので、信頼性がないと言いました。報告書は和平会談の前日に出されました。

 元戦争犯罪検察官3人による報告書は、離反した憲兵隊の「シーザー(Caesar)」とだけ称されるカメラマンの証拠に基づいており、彼は他の者と共に、約11,000人の拘留者の死体の写真、約55,000枚を密かに持ち出しました。

 米国務省広報官、マリー・ハーフ(Marie Harf)は「報告書は(第2和平会議で)我々が前進することがさらに重要であることを強調します。現場の状況は、我々が適切に政治的移行を行い、アサド政権を権力から追放する必要があるほど、あまりにも恐ろしいものです」と言いました。「明白に、我々は報告書を最も強い言葉で非難します。これらの最新の写真は極度に不穏です。これらは見るに恐ろしく、深刻な国際的犯罪となる明白な行動を例示し、これらシリアでの深刻な違法行為の責任は釈明されなければならないと、我々は長く言ってきました」。

 それよりも早く、イギリスのウィリアム・ハーグ外務大臣(Foreign Secretary William Hague)は同様の感情を表明し、下院で「我々は数多くの証拠を見てきました。それは抗しがたく、恐ろしいものです。そして、これらの犯罪を犯した者たちが、いつか説明をすることが重要です」と言いました。

 国連人権チーフ、ナヴィ・ピレイ(Navi Pillay)の広報官、ルパート・コルヴィル(Rupert Colville)は「この報告書は極度に強い警報を鳴らし、拘留施設内での死者の規模は、確認されるならば、本当に恐ろしいことです。この深刻な申し立ては無視できず、更なる調査は明らかに必要です」。

 カメラマンのシーザーは、彼の仕事は死体の写真を撮ることで、死亡診断書を作ることと、処刑命令が実行されたことを確認することを割り当てられたと言いました。「1日に約50体の死体があり、死体一つに15分から30分の作業が必要だった」と彼は言ったとされます。写真は反乱が始まった2011年3月から昨年8月までの期間を含んでいます。

 死体は一つを除いて男性です。調査者はほとんどの死体が衰弱していると言いました。大半は殴打され、窒息させられました。一部の死体は目がなく、いくつかは電気処刑の徴候を示しました。

 報告書を書いた一人、サー・ジェフリー・ニース教授(Prof Sir Geoffrey Nice)は、殺害の規模と一貫性は刑事告発を支持しえる政府の関与の強力な証拠を提供したと言いました。

 しかし、シリア情報省広報官、バサーム・アブ・アブドラ(Bassam Abu Abdullah)は、報告書の証拠を疑問視し、情報の出所や、シリアの国内か国外のどちらから出たものかが分からないと言いました。彼は犠牲者11,000人という数字に驚くと言い、この報告書以前には出なかったと言いました。「私はこの報告書を疑います。我々はこれらの写真をチェックしなければなりません。この人たちは誰ですか?。彼らの名前は?。どの刑務所ですか?。これらの写真を持つ権限がある人たちは誰ですか?」。アブドラ氏は国際法廷はこの疑問をカタールに向けなければならないと言いました。「カタールがこの報告書に出資したのなら、カタールは国際テロリズムに出資する国の一つで、シリアに殺人者を送る国なので、信頼性はありません」。


 記事は一部を紹介しました。

 写真は死体を撮影したもので、拷問の写真ではなかったようです。

 これで対シリア政策は大きく舵を取ることになります。明白な人権侵害の証拠に、アサド政権を存続させる理由はなくなりました。軍事攻撃を含む選択肢を考えるべき時です。数日中に、米英政府は態度を明らかにするでしょう。

 それにしても驚いたのは、今朝のNHKニュースでは、この事件を報じず、ジュネーブで和平会議が始まることを映像入りで報じただけだったことです。アルジャジーラ発のニュースとして、他のニュースのタイトルとして画面には表示されたものの、アナウンサーが読み上げることはありませんでした。アメリカが対シリア政策を明白に転換した後でないと、日本では報じられないのかも知れません。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.