イスラム国指導者空爆に関して情報が錯綜

2014.11.10


 alarabiya.netによれば、イラク、アンバル州のモハメッド・アル・カブリ議員(Mohammad al-Karbuli)は、イスラム国指導者の会合を狙ったカイム(Qaim)への空爆で、数十人が死亡し、それ以上が負傷したと言いました。

 カブリ議員は、空爆で混乱が起き、イスラム国のメンバーが負傷者を病院に急送し、病院は患者の数で圧倒されたと言いました。

 目撃者2人は、空爆はカイムに近い、イスラム国幹部が会合を開いていた家を狙ったと言いました。

 目撃者は、イスラム国戦闘員は負傷者が治療を受けられるように病院にスペースを作ったと言いました。戦闘員たちは拡声器で住民に献血を訴えました。

 地元住民による未確認の報告では、アンバル州の地元イスラム国指導者と副官が死亡しました。

 その他、毎日新聞はカイムでイスラム国の会合が開かれていたところを治安部隊が攻撃し、バグダディ指導者を負傷させたとの情報があると報じ、時事通信はイスラム国スポークスマンがツイッター上で、バグダディが空爆で負傷したことを認めたと相次いで報じたと書いています。


 記事は一部を紹介しました。

 米中央軍は戦果について未確認のままです。米軍やCIAは現地に情報源を持っていませんから、通信傍受による判断を待たなければなりません。

 そこで地元筋の報告を頼りに視するしかない訳ですが、戦果はかなりのようです。爆撃が会合場所を直撃したのは間違いありません。バグダッディが死亡したとしてもおかしくない内容です。

 毎日新聞の記事は信憑性が低いと考えます。カイムは国境のイスラム国が押さえている街と認識しています。ユーフラテス川沿いで、幹線道路も通っています。シリアとつながる重要な補給路です。ここを現在のイラク軍が襲撃できるかという問題があります。BBCが作成したイスラム国の勢力図を見れば、可能性が低いことが分かります(地図はこちら)。

 さらに、目撃者からの情報すべてが空爆だったと述べており、イスラム国戦闘員が献血を募るなど、それ以外の混乱は起きていない様子が理解できます。

 一部報道では市場を攻撃したと書いていますが、市場は民間人多数がいる可能性が高く、たとえ、市場が開かれていない時間帯でも攻撃をためらう場所です。攻撃目標は家だったのでしょう。民家であってすら、誤爆の可能性は常に起こります。ソマリアやアフガニスタンでも、そうした誤爆が起こり、事態を悪化させたことがあります。

 BBCが掲載した空爆の写真は、大型の爆弾を落としたことを示しています(写真はこちら)。こうした爆弾を自信を持って投下するためには、確度の高い情報が必要です。

 同時に、イスラム国も教訓を得たはずです。会議はもっと家が建て込んでいる場所でやれということです。ピンポイント爆撃でも失敗しかねない場所なら攻撃されないと、彼らは学びます。戦争とは、そんないたちごっこなのです。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.