米上院がCIAの拷問に関する報告書を公表
BBCによれば、米上院は9/11事件以降にCIAが行った残忍なアルカイダ容疑者への尋問について報告書を公表しました。
上院情報特別委員会の民主党議員が編集した報告書の要旨はCIAは自分たちが何をしたかについてアメリカ人に誤解させたと言いました。CIAがこの方法で集めた情報はいかなる脅威をくじく情報も確保できなかったと報告書は言いました。
声明において、CIAは尋問は人命を救うのを助けたと主張しました。「この計画から得られた情報は我々がアルカイダを理解し、今日まで対テロ活動に情報を提供し続けてきました」とジョン・ブレナン長官(John Brennan)は言いました。
しかし、CIAも計画の誤りを認め、特に初期において、囚人を拘留し、尋問するための作戦の規模が不準備だったとしました。内部的には「移送・拘留・尋問(Rendition, Detention and Interrogation)」として知られるCAIの計画は2002〜2007年にジョージ・W・ブッシュ政権下で行われました。
報告書は以下を明らかにします。
- 拘留者たちは水責め、殴打、無理がかかる姿勢、睡眠妨害を強いられました。
- サウジ人のアルカイダ容疑者、アブ・ズバイダ(Abu Zubaydah)は連続4時間棺サイズの箱に監禁され続けました。
- 容疑者は心理的、肉体的に重大な危機にさらされました。
上院委員会の報告書は莫大な量の証拠を取り上げて6,000ページ以上ありますが、公開されたのは525ページの要旨だけです。
アブ・ズバイダの事例
アブ・ズバイダは米当局によりアルカイダの元作戦立案者、新兵徴用担当とみなされ、パキスタンで拘束され、タイの秘密施設に送られました。彼の房は自然光や窓がなく、房の中を指す4つの照明とエアコンがある白色だったと描写されました。彼には2つの椅子があり、1つはもう1つよりも快適で、彼の協力のレベルに基づいて交替させました。47日間の完全な隔離のあと2002年8月4〜23日まで、ズバイダは一日24時間拡張型尋問(EIT)を受けさせられました。保安要員は彼の房に入り、手枷足枷をかけ、フードをかけ、裸になるようにタオルを取り除きました。「アブ・ズバイダは通常は裸で睡眠をとれないようにされました」と報告書は言います。彼は壁に対して後退させられ、床に棺に見えるようにするために箱が置かれました。容疑者が特定の情報を提供することを拒んだ時は常に、尋問者は彼の顔をつかんだり、叩いたりしました。最初の夕方、彼は水責めを受け、その結果、彼は咳をして、嘔吐し、痙攣しました。尋問は加速し、より早く水責めへ進むようになりました。報告書によれば、その目的はいつでも彼を最も弱い状態にしておくことだったと言います。
報告書は以下の要点を含みます。
- 対テロ政策の成功例20例の中で、比類がないとか、それ以外の方法では手に入らなかった情報をもたらした技術に起因するものはありません。
- CIAは技術を使う承認を得るために不正確な情報を伝えることで政治家と国民を誤解させました。
- CIAは上院議員が計画に反対しなかったと偽りを主張しました。
- 計画の期間中拘留された判明している拘留者199人中26人は不当に拘束され、多くはそうあるべきよりも何ヶ月も長く拘束されました。
- 手法には、立たせたままや苦痛とをもなう姿勢で、最高180時間の睡眠妨害を含みました。
- 水責めは痙攣と嘔吐を生じさせ、囚人に肉体的に有害でした。
- オバマ大統領は2009年に就任した時、CIAの尋問計画を停止させました。
記事は一部を紹介しました。
CIAの拷問については、過去に散々書いてきました。ようやく議会による報告書が完成したということです。この馬鹿げた尋問を中止させただけでも、オバマ大統領の功績は大きいと言えます。
タイに尋問の秘密基地があったことは初耳と思ったら、過去に記事として紹介していましたね(関連記事はこちら)。すでに記憶自体が薄れかかっていることを実感しました。
尋問の手法と効果については、これまでいわれていることとあまり違いはなく、納得ができる内容です。議会によって報告書が作成されたことで、この件は米政府としては公式な見解が出たことになります。目新しいものはなくても、それが書面として制作されて、公式な記録として残ったことが重要なのです。
奇しくも、先日、当サイトで内容を批判した『フューリー』の制作・主演を務めたブラッド・ピットの妻、アンジェリーナ・ジョリーが監督した『Unbroken』が一部で話題になっているようです。
これはベルリン五輪に参加したルイス・ザンペリーニの伝記映画で、彼は第2次世界大戦中に爆撃機に搭乗し、日本軍の捕虜となりました。捕虜収容所で日本兵から残忍な扱いを受ける描写があり、反日映画だと一部ネットユーザーが騒いでいるのです。
私はこの作品の原作を読んでいませんが、ザンペリーニ氏は1998年に長野五輪で聖火ランナーを務めるために来日しており、反日的な思想で、復讐のために映画を制作したとは考えません。作品の予告編からも、単純な反日映画とは考えにくいと思っています。
なにより、優れた脚本を書くことで知られるコーエン兄弟が脚本を書いているのですから、映画ファンなら気にならないわけがありません。
軍事を知る者なら、過去の捕虜収容所がひどいものだったことくらい周知のことです。日本軍の捕虜収容所が劇中に登場するからといって、直ちに反日映画とは言えません。日本軍の捕虜収容所がひどかった話は、米軍将兵の手記などに、頻繁に登場することです。『フューリー』の中に、ドイツ軍の捕虜収容所は地獄だという台詞がありますが、私は吹き出しそうになりました。日本軍の捕虜収容所に比べたら、ドイツのそれは天国だったろうと。
戦争はすべからく過ちであり、過去の過ちを反省する態度で描く場合に限り、戦争映画は制作する価値があるのです。残念ながら、『フューリー』にはそれがありませんでした。『Unbroken』は作品を観てから、この観点から評価することになります。
現在の第2大戦の歴史を修正しようとする日本国内の動きや『Unbroken』への偏狭な批判と、今回の議会報告書の公表について、どちらがより望ましいものかを考えてみてください。
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