ラッカ市のキリスト教徒がISISに屈服

2014.2.28


 BBCによれば、シリアの武装グループが、北部のラッカ市(Raqqa)のキリスト教徒に、殺されたくなければ、金で税金を支払い、彼らの信仰による規制を受け入れるよう要請しました。

 イラクとレヴァントのイスラム国家(The Islamic State in Iraq and the Levant: ISIS)は、キリスト教徒の住民に、条件のリストに合意するなら、保護すると言いました。この発表はインターネット上に投稿されました。特派員はISISが支配地域にイスラム法の最も厳しい解釈を実行しようとしていると言います。

 昨年ISISに奪われたラッカは、完全に反政府派の手に落ちた最初の州都でした。ISISからの命令は、「ジンマ(dhimma)」の概念を引用し、市内のキリスト教は、安全と引き替えに、純金半オンス(14g)の税金を支払うことを求めます。キリスト教徒は、教会を修理したり、十字架やその他の宗教的シンボルを展示したり、教会の鐘をならしたり、公衆の面前で祈ってはいけません。キリスト教とは、武器を運んだり、ISISが定めたその他のルールに従わなければなりません。

 声明は、彼らはキリスト教徒の代表者に会い、3つの選択肢を提供しました。「イスラム教への改宗」「ISISの条件を受け入れる」「支配を拒否し、死の危険を冒す」。ISISは「彼らが拒否すれば、合法的な目標となり、 ISISとの間には剣だけが残るでしょう」と言いました。。

 キリスト教徒の指導者グループ20人は、新しいルールを受け入れる方を選んだとISISは言いました。

 ラッカはかつて約300,000人が住み、1%以上がキリスト教徒でした。多くのキリスト教徒はISISが教会を攻撃して燃やした後で逃げました。 ISISは支配地域でひどい虐待を行うことで批判されています。ラッカはISISとアサド大統領と戦うグループとの激戦にさらされてきました。


 記事は一部を紹介しました。

 「ジンマ」とは、イスラム教徒がユダヤ教徒とキリスト教徒を指す古い言葉です。

 戦地であっても、信仰の自由は尊重されなければならず、それは国際人道法(ジュネーブ条約)にも規定されています。なにより、軍隊自体が異なる信仰を尊重するために、様々な制度を設けています。

 ところが、ISISのような武装組織には、国際法に従うという発想がありません。自分たちの信仰のために必要なら、なんでもするのです。特に、イスラム過激派のやり方は極悪といえるレベルで、自分たちが神のように支配地域の人たちに接します。イスラム過激派が捕虜になった場合は、国際人道法の適用を受けますが、彼ら自身はそれを守る気はありません。そもそも、国際人道法の存在を知らないかも知れません。

 同時多発テロ以降、アメリカが沢山のイスラム過激派を捕まえ、刑務所に裁判にもかけないで拘留し、国際赤十字社の立ち入りも認めないという時期がありました。ラムズフェルド国防長官は、彼らは国際法上の「戦闘員」ではないから、捕虜にすらならないのだと放言しました。アメリカは、国を守るためと称して、キューバの刑務所で拷問を続けていたのです。こういうやり方に対して、先進国として常識を欠いたやり方だという批判が高まりました。

 敵の権利を保護するという考え方は、戦争と矛盾するように思えますが、一般的には、その方が戦争の被害が少なくて済む傾向があります。国際人道法自体は、戦争を終わらせるためというよりは、戦争被害を少なくするための制度です。多くの人が、これを理解して、尊重するようになるべきなのです。


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