ロシアがクリミア半島の小村を占領

　BBCによれば、クリミア半島の住民投票に関する国連安保理の評決で、賛成票を投じたのはロシアだけとなりました。

　中国ら評決を棄権しました。西欧諸国は住民投票に関して、ロシアが拒否権を使ったことを批判しました。

　ウクライナ政府は、ロシア軍がクリミア半島北部の村を占領したと訴え、撤退を求めました。ウクライナ外務省は、武装ヘリコプターと装甲車３台に支援された80人の兵士がスティルコフ村（Strilkove・kmzファイルはこちら）を占領したと言いました。

　プラウダのウクライナ版が引用した匿名のロシア当局者は、彼らはガスステーションをテロリストの攻撃から守るための行動をとったと言いました。

　国連で、安保理のメンバー13人は、すべての国がウクライナの領土的一体性を尊重することを支持し、住民投票を非合法と非難しました。

　BBCの国連特派員、ニック・ブライアント（Nick Bryant）は、西側外交官はロシアが拒否権を使うことは予想しており、中国が棄権して、欲しいものは得られたと述べたと言いました。

　中国とロシアは安保理で共同行動をとります。しかし、チベットと新疆の不安定な地区にメッセージを送りかねないため、中国政府は領土的一体性の問題に神経質です。

　米国連特使、サマンサ・パワー（Samantha Power）は、それは嘆かわしくも注目に値する瞬間で、ロシアは孤立し、独りぼっちで、道を間違えたというラベルを貼られたと言いました。彼女は日曜日の住民投票は、違法、不当で対立を生むとし、クリミア半島の法的な立場に影響を与えないと言いました。

　ロシア特使、ヴィタリー・チェルキン（Vitaly Churkin）は、住民投票は先月のウクライナのクーデター以来の司法上の真空を埋めるために必要だと言いました。

　モスクワでは、ロシアのウクライナでの行動に対して数万人がデモ行進し、過去２年間で最大でした。５万人がデモに参加し、参加者たちは「ウクライナを手放せ」と叫びました。ある男性はBBCに、ロシアがスターリン時代のソ連に戻ったと感じると言いました。

　プーチン大統領の支持者約15,000人は、住民投票を支持するために集まりました。彼らの多くは、同一の赤い服を着て、ロシアとソ連の旗を持っていました。ある男性は「我々はロシアとウクライナの人々との友好に賛成です。我々は、ウクライナで権力を握った軍事独裁政権には断固反対だと言います」と言いました。

　記事は一部を紹介しました。

　中国が棄権したのは、チベット・新疆問題だけでなく、ウクライナに大きな利権がなく、問題に関与したくないという理由もあります。中国の動きは予測しやすいところです。

　注目したいのは、モスクワでのデモ行進の人数です。ウクライナ侵攻に反対するデモ行進が圧倒的に多いのは、ロシアにも民主主義が定着してきた証拠です。これなら、プーチン政権が倒れた後、クリミア半島のウクライナ返還もあり得ます。あるいは、ウクライナ問題がきっかけで、ロシアの野党が政権をとる可能性を考えます。前回の選挙でプーチン氏が苦戦し、当選した時に嬉し涙を流したことが思い出されます。ロシア国民は、ソチ五輪開催の成果がウクライナ侵攻で消え去ったという不満があるはずです。次は、プーチン氏が所属する政党「統一ロシア」に投票しない人が増えるかもしれません。また、デモ行進参加者に赤い服を着せたのは、明らかな失敗でした。これはソ連時代を彷彿とさせ、当時に行われた東ヨーロッパへの侵攻を想起させるのです。

　スティルコフ村の占領は、東側海岸線の道路を塞ぐためと考えられます。普通なら無視するくらいの細い回廊ですが、半島と大陸の付け根付近で封鎖して、半島全体の封鎖に自信を持ちたいのです。この回廊は南端で、ケルチ海峡から来る補給路の近くに接続します。万一、ウクライナ軍がこの回廊を自由に使うと、ロシア軍の補給に支障を来します。南端に防衛線を引くと、破られた場合に補給路を攻撃されかねないのと、同じ緯度付近に境界線を引くことで、半島全体を支配するという意図を明白にできるからです。

　ウクライナ軍は、ロシア軍と交戦すると、さらなる侵攻を招くことを理解して、忍耐に撤しています。いずれの軍も軍事の常識に従って行動しています。