水陸機動団創設は災害救援のため?

2014.3.4


 時事通信によれば、小野寺五典防衛相は2日午前、長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地で、離島の防衛や災害救助を任務とする西部方面普通科連隊の訓練を視察しました。

 約60人の隊員がゴムボートを使って上陸するなど、外敵に占拠された離島奪還を想定した訓練を実施。視察後、防衛相は記者団に「今後とも離島防衛は重要だ。水陸両用機能があれば災害救援にも大変有効だ」と述べました。


 記事は一部を紹介しました。

 公式声明ではなく、現地での囲み取材かも知れませんが、この発言には何の意味もありません。

 水陸両用機能が災害救援に役立つ可能性は、ほとんどありません。

 現在のゴムボートを使う上陸も、今後創設される水陸機動団の水陸両用装甲車AAV7も、被災者を救援するには不向きな装備です。

 AAV7には兵員が25人乗れるスペースがあります。ヘリコプターのCH-47「チヌーク」は、兵員だけなら30名か、担架24台と医療要員2名を乗せられます。AAV7に担架を設置できるタイプがあるかは分かりませんが、車内は狭いので、置けたとしても大した数ではないでしょう。AAV7の半分程度の兵員を乗せられる装甲車の担架設置数は3台です。

 ヘリコプターの方が遥かに輸送力が大きく、移動速度も早いのです。怪我人の搬送にも、自衛隊員の投入にも、ヘリコプターが優先的に使われます。ヘリコプターが飛べないほどの強風なら波も高く、AAV7も航行できません。水陸機動団が使われる可能性は極めて低いのです。

 要するに、大臣は戦争の準備と批判されるのが嫌なので、災害救援を持ち出しただけです。東日本大震災で、ますます自衛隊の救援能力に対する国民の期待が高まったため、それに便乗しようという腹です。

 私が記者なら「では、ゴムボートや水陸両用装甲車で、どのような災害救援訓練を行っているのですか」と質問します。小野寺大臣は答えられないはずです。

 防衛大臣が創設する部隊の使い道を正解に説明できないというのは致命的です。そういう点で、日本政府は、クリミア半島への侵攻を決めたロシア政府より、能力が低いのです。ロシアの侵攻は批判されるべきですが、軍事的には筋が通っています。日本が平和国家なら、武力行使を行うロシア以上に、戦争に精通している必要があります。 その能力はないのに、形だけを整えようとしているのが、現在の与党です。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.