BBC軍事記者もロシアの真意は不明
BBCが軍事記者のジョナサン・マーカス(Jonathan Marcus)の記事を掲載しました。その中から興味深い部分を紹介します。
(前略)オプションを見てみましょう。
モスクワは間違いなく、東部ウクライナへの大規模な攻勢を始めるために集めた十分な兵力、補給品、輸送を持っています。
NATO軍指揮官は、これは遙々とオデッサやロシア人が支配する沿ドニエストル共和国の飛び地まで、国土を横断して叩くことを模索しているかも知れないと示唆します。
ウクライナ人の相当なレベルの抵抗が予測されるかも知れません。ロシア軍は彼らの通信線に対するゲリラ戦を戦わなければならないかも知れませんし、大規模なロシア軍の集結はそれ自体を引き延ばしたことが明らかになるかもしれませんし、こうした獲得物を守ることを負担するため、ロシアは大規模な後続部隊(多分、より低品質)を持ってくる必要があるかも知れません。
オプションの対極は我々が現在見ているものの大半の継続、ウクライナ国内の親ロシアグループの動員であり、事件を画策するのを助けるために現場で活動するロシア特殊部隊と共に(とNATO軍は信じている)道路障害物と建物のバリケードの散発的な戦いです。この考えは、その国境に置かれたロシア軍からの脅威を維持することで、混沌を、ウクライナ政府が自身の領域を統制できないことを維持することです。この危険は現場での出来事が、より大きなロシアの関与を引き出す地域的な危機を引き起こすことができるということです。
問題が拡大するのなら、これはロシアにとって好ましいオプションかも知れません。特定の地域でロシア語を話す人たちを守るための小規模な地域的介入。
ロシアはすでに、これを行うために国際法上の必要な根拠がすべてあると主張します。しかし、ウクライナ軍がそのような動きに対応できないと考えることは難しく、限定的な侵略はすぐにより大きな範囲の領土へ拡大するかも知れません。(後略)
その他の展開に関する記事を以下に紹介します。
BBCによると、アメリカは過去24時間以内にロシア軍の航空機がウクライナの領空に数回入ったと言いました。
国防総省広報官は金曜日遅く、事件がロシア国境付近で起きたと言いましたが、詳細は伏せました。
その前に、親ロシア分離主義者が国際軍事監視団を乗せたバスを乗っ取ったと、ウクライナ当局が言いました。スラビャンスク(Sloviansk)の近くで、彼らを解放させるための話し合いが進行中でした。
アメリカはチャック・ヘーゲル国防大臣(Secretary of Defense Chuck Hagel)がロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣(Sergei Shoigu)との話し合いを申し込んでいますが、今のところ返事はありません。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相(Chancellor Angela Merkel)が金曜日、ロシアのウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)と、彼が分離主義者との平和的な議論をもたらそうとしないことについての不満を述べるために話したと言いました。
金曜日、ウクライナ内務省は武装した分離主義者が欧州安全保障協力機構の代表団7人、ウクライナ軍の5人、バス運転手1人を拘束しました。スラビャンスクの親ロシア指導者はバスを停車させたことを認め、乗車していた人たちの身元を調べていると言いました。スラビャンスクの自称市長ビアチェスラフ・ポノマリョフ(Vyacheslav Ponomaryov)は、少なくとも1人の乗客がこの地域の分離主義者の検問所を示した地図を持っており、それは彼らのスパイ活動への関与を示すと言いました。
military.comによれば、クラマトルスク(Kramatorsk)の空港で、ウクライナ軍のヘリコプターが正体不明の襲撃者から攻撃を受け、爆発しました。パイロットが負傷しました。ウクライナ当局は金曜日に起きたことについて、異なる説明をしました。
ウクライナの対テロリストセンター長、バシル・クルトフ(Vasyl Krutov)によれば、「狙撃者が駐機中のヘリコプターに発砲しました。弾丸が燃料タンクに命中しました」と言いました。そして、ヘリコプターが爆発しました。国防省は榴弾に攻撃されたとき、Mi-8ヘリコプターは離陸していたと言いました。軍政研究と情報妨害センターのドミトロ・テムチャク(Dmytro Tymchuk)は、ヘリコプターは離陸前のウォームアップ中に攻撃されたという仮説を提供しました。
記事は一部を紹介しました。
今回と南オセチアの時との違いは、ロシア軍がほとんど何も言わずに侵攻した時です。あまりにも手際がよかったので、事前に準備していたように思えました。今回は逆に、目に見えるところで軍隊を動かす「示威行為」を繰り返しています。ロシア軍機がウクライナ空域に入ったのは、その典型です。軍事行動を起こすときは、相手に余計な情報を与えたくないので、示威行為はしないものです。しかし、ウクライナ国内の親ロシア民兵との共同作戦は、明らかに陰謀の臭いがする、事前準備を感じさせます。しかし、国境地帯に4万人の兵を置いて、本格侵攻の動きを見せています。見た感じは侵攻必至なのに、そう思えないという部分も多いのです。
というのは、ロシア政府はロシア人とロシアの利益の保護を介入の理由にしており、南オセチアの場合と同じく、軍事介入で完全な占領を継続できる環境は作れないのです。侵攻後には、いずれ国連の監視団を受け入れなければなりません。これが国連機構が整備された利点なのです。
ウクライナ軍の装備は悪くはありません。同軍のホームページを見ても、優良な武器を持っていることが分かります(ホームページはこちら)。これだけの武器を持っている相手に対して侵攻すれば、ロシア軍もただでは済まないのです。マーカス氏がいう「通信線に対するゲリラ戦」は、戦線後方に長く延ばされる通信線を切断することで、ロシア軍の機動的な動きを阻止するということです。ウクライナ軍が組織的にロシア軍を食い止めながら、こうした妨害工作を行うことが予測されます。
そこで、考えられるロシアの意図がいくつかあります。
- クリミア半島の併合を固定化するために東部に脅威を作り出した
- ウクライナ軍がロシア領に侵入し、クリミア半島と交換しようとするのを防ぎたい
- 航空軍事産業などが西側に流れることを阻止したい
- ロシア系ウクライナ人の不安を解消したい
- ウクライナ東部の自治権拡大を狙っている
ロシアの意図が1なら、段階的に危機は消滅します。2は現実的に考えにくい展開で、ロシアの杞憂。3なら交渉の余地があり、軍事侵攻はその可能性を破壊します。4は親ロシア派が性急な成果を求めると、事態は急速に悪化します。5だと、ロシアは東部を長期的に支配下に置ければよく、現段階では軍事介入はしたくないと考えられます。マーカス氏もロシアの意図は分からないとしています。私にも正確なところは分かりません。ひょっとしたら、ロシア自身、よく分かっていないのかも知れません。単に政府内の慣習から離れられないだけなのかも知れません。
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