マウリポリで地元志向の自警団が発足

2014.5.17


 military.comによると、マリウポリ(Mariupol・kmzファイルはこちら)で、鉄鉱労働者が金曜日、警察のパトロールに参加しました。

 マウリポリから約120km北で、ドネツク州の境界に近い村に配置された武装した黒服のボランティアは、必要ならば武力で敵を追い出すつもりだと言います。

 ドネツク州で二番目に大きいマウリポリで、億万長者のリナット・アクメトフ(Rinat Akhmetov)のメティヴェスト・ホールディング(Metinvest)は鉄鉱工場長、警察、地域指導者と、治安を改善させ、武装勢力に彼らが占領した建物を明け渡させることに合意しました。

 オーバーオールとヘルメットを着用した数十人のメティヴェスト社労働者は金曜日、マウリポリ政府ビルの外にある瓦礫のバリケードとタイヤを撤去しました。トラックがそれを正午までに運び去り、バリケードはほとんどなくなりました。

 アクメトフは彼の大半の利益を出す産業資産がある地域をつかんだ1ヶ月以上の乱気流の間、彼が態度をはっきりとさせなかったのは注目されていました。この展開は注目に値します。

 47歳のアクメトフはビデオメッセージで、彼はウクライナ政府ではなく、彼の地元ドンバス(Donbass・ドネツク州とルハンシク州)に忠誠を誓うことを木曜日に明らかにしました。唯一の道はウクライナの統一を守った上での大がかりな憲法改正だと彼は言いました。「キエフから州へ権限が移るときです。政府が指名されるのではなく、選挙される時です。そして、地方当局が人々の本当の未来に対して責任をとる時なのです」。独立やロシアへの併合は地域の経済崩壊を意味すると、彼は言いました。

 2月のビクトル・ヤヌコビッチ大統領(President Viktor Yanukovych)の追放以来、ウクライナの新指導者は、親ロシア指向の東部地域の統治者として指名するために寡頭政治の独裁者に接触しようとしてきました。ヤヌコビッチの政党にいたアクメトフはそうした関わりを避けており、東部の未来に目標をつける彼の試みはウクライナ政府を苛立たせるかも知れません。

 自称ドネツク人民共和国の代表もアクメトフが仲介したマウリポリの取引の当事者でもありましたが、武装勢力グループはあとで参加を否定しました。その代わりに、ドネツク人民共和国の顧問、ローマン・マネキン(Roman Manekin)はビデオ演説で、独立体の権威に服従しなければならないとアクメトフは言いました。「我々はそのような声明を辛抱しながら待ちます。さもなくば、アクメトフはドネパスにいられないでしょう」。マネキンはドネツク人民共和国がその要求をどのように執行するつもりかは言いませんでした。

 メティヴェスト社の最初の市民パトロールは木曜日に行われたと、警察公報のユリア・ラファゼン(Yulia Lafazan)は言い、警察官2人と6〜8人の鉄鉱労働者で構成される男性100人のグループが街をパトロールしたと付け加えました。


 記事は一部を紹介しました。現地の状況について、興味深いことも書かれていますが、時間の関係で省略します。

 マウリポリに 第三局が誕生したようです。中央のウクライナ政府にも親ロシアグループにも属さない、地元資本家のグループで、地元警察とも連携しています。地勢的には、ロシアにとっては、クリミア半島に向かう航路に近いという点、クリミア半島にウクライナ国内の陸路を使って行く場合の経路上という点で、少し気になる場所に別勢力ができたことになります。つまり、ウクライナ政府とロシア政府の両方にとって、厄介な存在です。NATOにとっては、心配の種が増えたことになります。

 今後、このグループはウクライナの独立を損ねない形で、選挙によって自治体の指導者を選ぶ政治制度を中央政府に要求していくことになるのでしょう。

 こういう動きが各地に拡がると、多分、ウクライナ政府は妥協して、地方の自治権を強める憲法改正に同意するのではないかと思われます。それにより、ロシアによる介入を防ぎ、独立を維持します。国際社会からも、自由な選挙を実施する点で評価がもらえます。

 親ロシア派にとっては、新しい敵ができた訳です。

 これがどちらに向けて転がるのか、今の段階では分かりません。アメリカなどがアクメトフに接近し、意図を探る動きは当然起きるでしょう。それによって、国際社会が第三局にどう対応するかが決まっていきます。


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