バグダールの同僚たちは脱走説を支持

2014.6.5


 military.comが、バウ・バグダール軍曹の元同僚ら3人のコメントを報じました。

 このインタビューは共和党のストラテジスト、リチャード・グリネル(Richard Grenell)が共同所有する広告会社「Capitol Media Partners」の手助けで製作され、3人全員がバグダール軍曹が脱走罪で調査されるべきだと言いました。

 

ヨシュア・コーネリソン(Joshua Cornelison・25歳)

小隊の衛生兵

 コーネリソンはバグダールが彼個人の人生や経歴について同僚に語るのを異様に嫌ったと言いました。「彼は非常に物静かでした。彼は何もかも隠したがりました」「だから、彼が実際にいなくなったあと、翌朝、我々はバグダールの武器、防弾装備、精密な装備品はあるのに、バグダールがいないことに気がついたのです」。その時点で、とコーネリソンは言いました。バグダールは姿を消したかった一人の男で、いま、彼は希望を叶えたのだという思いが彼に浮かんだのでした。2012年に陸軍から除隊したコーネリソンは、彼はバグダールが責任があるとみなされなければならないと考えていると言いました。「バウ・バグダールは無責任さと行動について百パーセントの責任があるとみなされる必要があります。彼は望んで部署を放棄し、それに対しての責任があるとみなされる必要があります」。

 

エヴァン・ブエトウ(Evan Buetow・27歳)

小隊の軍曹

 ブエトウは、振り返ってみると、バグダールが姿を消す前にいくつかの質問を彼に尋ね、バグダールが失踪する計画をしていたことを明らかにしたと言いました。たとえば、バグダールは彼に、彼が受け取れる仮払金の金額や、パソコンやその他の所有物を家に送るにはどうするかを尋ねました。バグダールは彼の武器と暗視ゴーグルのような精密装備がなくなったらどうなるのかも尋ねました。彼はバグダールに、どんな兵士も知っているように、それは大事になると告げたと言いました。バグダールがそうしたことを尋ねるのを聞いて、「その時点では、それは本当の警告ではありませんでした」とブエトウは言いました。「それは一種の突飛な質問でした」。しかし、戦友が夜中に逃げ出すという考えは、まったくありそうにないと思えました。ブエトウは、ベグダールが脱走罪で裁判にかけられるべきだと強く感じると言いましたが、彼を見つけようとして数ヶ月間で殺された兵士すべての死の責任を負わされるべきかは、より不透明だと言いました。ブエトウは、彼はバグダールの捜索で情報収集のために村を歩兵がパトロールした時に少なくとも1人が死んだことを知っていると言いました。ベグダールが失踪した後、彼の所在の手がかりを探す合同の活動が始まったために、彼の全部隊の任務は変わりました。「これらの任務で死んだ兵士たちは、ベグダールが逃げなければ、彼らがいる場所にはいなかったでしょう」「同時に、私は人々が言うこと、これらの人々が死んだのはバグダールの過ちだということは少し不公平だと思っています。少し辛辣だと思うのです」。

 

マット・ビアカント(Matt Vierkant・27歳)

バグダールの小隊の別の分隊長

 彼の部隊と別の部隊の兵士はバグダールに関連した手がかりを追う任務で死傷したと言いました。バグダールが名誉と威厳をもって軍務に就いたという、国家安全保障担当補佐官スーザン・ライス(National Security Advisor Susan Rice)が日曜日に出した声明について尋ねられ、彼は「この声明はまったく事実と違います。私は彼女が誤った情報を与えられたり、調査とその他すべてについて知らないかどうかは知りません」。彼はバグダールの同僚は彼が逃げ去ったという失踪の発見を5〜10分間で知っていたといいました。振り返れば、徴候はありましたが、行動を促した決定的なものはなかったと、彼は言いました。「彼は『僕はこんな山の中で道に迷うかもしれない』といった、少し変なことを言いました。それは、当時、武器を置いて立ち去ろうとする者として印象づけはしませんでした」。ビアカントは、彼はバグダールが脱走したのか、調査が敵と協力したのかを確定することが最優先だと信じると言いました。「あったかどうかの問題ではなく、いつ起きたのかの問題であるべきです」。

 

 military.comによれば、ベグダールの復帰には時間がかかりそうです。

 「5年間も監禁されると、少しリップ・ヴァン・ウィンクルみたいになるものです」とトラウマ治療の先駆者、フランク・オークバーグ博士(Dr. Frank Ochberg)は言いました。バグダールが何を体験したかは分かりませんが、長期間の監禁の生存者たちは、苦痛のある、重いPTSDの発症を引き起こす、長期間の監禁、虐待、恐怖体験の悪影響で苦しみました。

 軍は身体的、感情的な状態を詳細に公表することを拒否しましたが、当局者は三段階の戦時捕虜再統合プログラムについて説明しました。バグダールは特殊部隊がタリバンから彼を受け取ると、すぐにそれに入れられました。

 再統合の第1段階は、捕虜が解放されてすぐに始まり、釈放が起こった戦域の中での初期治療と心理的サポートがあります。バグダールは現在、「減圧」とよばれる第2段階です。これは3日〜数週間続きます。バグダールにとって、この段階はラントシュトゥールで行われます。安定していても、彼は何年ものひどい食事の後で栄養のケアと、その他の治療を必要とします。治療の内容については公表されていません。


 記事は一部を紹介しました。

 思ったほど、失踪時の状況についての証言はありませんでした。しかし、事前のバグダールの言動と、装備品を置いて出て行ったことから、脱走したと同僚が疑っていたことが分かります。これでは彼が脱走したかどうかは何とも言えません。

 軍法的には、脱走罪が成立するには「二度と軍に戻らない」という意思表示が必要です。それらは同僚たちの話の中にはありません。失踪期間が長くても、彼はタリバンに捕まっていたため、戻りたくても戻れなかったのです。短時間、離隊するつもりで失踪し、不覚にもタリバンに捕まったために戻れなくなったとすると、これは脱走罪ではなく無許可離隊罪(AWOL)に該当します。

 興味深いのは、タリバンがバグダールを殺さなかったことです。武器を持っていなかったり、尋問で戦意がないことを理解したので、殺さなかったのかも知れません。

 米軍は兵を帰還させるために、様々な医療プログラムがあり、バグダールはそれに入れられています。よって、軍の検察官もまだ面会できない状態でしょう。当然ですが、バグダールが弁護士を呼んで、来る裁判に備えるといったこともできません。すべては医療専門家の管理の中で進みます。

 お分かりでしょうが、集団的自衛権で、自衛隊が海外に行く機会が増えると、戦闘で心を病んだ自衛官が帰国することもあります。おそらく、自衛隊には米軍ほどの医療プログラムはないでしょう。そんな準備もなしに、勇ましい派遣論が先行しているのは困ったことです。


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