民間人殺害でロシアがウクライナ軍人を訴追

2014.7.10


 BBCによれば、ロシアはウクライナ軍の女性パイロットをロシア人ジャーナリスト殺害の共犯として起訴しました。

 33歳のナディア・サフチェンコ(Nadiya Savchenko)は東部のルハンシク(Luhansk)で分離主義者と戦うために志願兵部隊て戦っていました。先月、彼女は反政府派の検問所に対する攻撃に参加し、そこでロシア人ジャーナリスト2人が重傷を負いました。

 ウクライナはロシアが彼女を誘拐したと非難し、釈放するよう要請しました。

 サフチェンコは政府軍のアイダル大隊(Aidar)のヘリコプターパイロットで、検問所の攻撃のあとで分離主義者に拘束されたとみられます。

 彼女はいま、ロシアの拘留センターにいますが、彼女がどうやって到着したかは不明です。ロシアは彼女が難民に偽装して、自発的に、不法に越境したと言います。ウクライナは彼女が分離主義者によって越境させられたと言いました。

 ウクライナ外務省は声明で言いました。「これはテロリストが、ロシア連邦の情報機関と密接にウクライナ国内で犯罪を計画し、実行することのさらなる確証です」「ウクライナ国民を公に誘拐することで、ロシア当局はどの国際基準にも違反しませんが、常識と道徳の基本的な基準の限度を越えました」。

 ロシアの調査委員会はサフチェンコがジャーナリストの居場所をウクライナ軍に密告したと訴えました。

 ロシア国営テレビのジャーナリスト2人は迫撃砲で攻撃されました。

 サフチェンコは彼女はウクライナの領域の保全を守るために参加していたと主張しました。


 記事は一部を紹介しました。

 ウクライナ外務省が言うとおり、これはロシアが表向きは手を引きながらも、ウクライナ東部への圧力をかけ続けるつもりである証拠です。

 サフチェンコが誘拐された経緯は記事に詳しく書かれておらず、不明の部分もありますが、これは人質を取ることで、ウクライナ軍を牽制しているのです。

 サフチェンコがジャーナリストの位置を無線で連絡した証拠でもない限り、彼女の罪は立証できません。単に付近を飛んだという事実だけでは意味がありません。そもそも、ジャーナリストの死にサフチェンコは直接関与したわけではありません。早い話、誰でもよいから誘拐しやすい者を誘拐し、理由をでっち上げたというわけです。そして、その事実を公表し、分離主義者へウクライナ軍が攻勢をかけるのを牽制しようとしているのです。

 この拘束には無理がありすぎます。多分、国連などの国際機関が釈放するよう、ロシアに圧力をかけ、最終的には釈放されると思います。というのも、軍人を不法に裁けば、それが慣例化し、他の戦争でも行われるようになることを、国際社会が恐れるからです。

 難民に化けて越境したというのは、ロシアがウクライナ国内での拘束に関与していないというための方便です。拘束中のサフチェンコの写真を見ると、彼女が軍服を着ていることが分かります。これは任務を終えて基地を出たところを誘拐されたことを示しているように思われます。

 ロシアの旧態依然とした行動パターンが明らかになったとしか言えません。あまりにも洗練されていない、時代遅れのやり方です。こんな時こそ、平和国家日本は積極的にサフチェンコの釈放に向けて動くべきなのですが、そんな発想は外務省にも政治家にもありません。彼らは国内にしか目を向けていません。これが戦争です。こういう汚いやり方もあるのが戦争の実態なのですが、それも分からずに、集団的自衛権というコンセプトを振り回しているだけです。

 

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.