ミサイル攻撃の警告もアプリで

2014.7.11


 BBCによると、イスラエルのミサイル通知サービス「レッドアラート(Red Alert)」は人気が出そうにない「ヨー(Yo)」アプリと、攻撃を警告することで提携しました。

 アプリ内でレッドアラートを追跡するヨーのユーザーは、攻撃があった時に警告を受け取ります。レッドアラートは、迫撃砲やミサイルがパレスチナ民兵からイスラエルに発射されたことをリアルタイムで警告します。一部の専門家はヨーの有効性に懐疑的です。

 サンフランシスコに拠点を置くイスラエル人が開発したこのアプリは、「ヨー」という言葉をテキストと音声通知で送るだけです。4月から、アプリは200万回ダウンロードされました。レッドアラートの製作者、アリ・スプラング(Ari Sprung)とコビ・スニル(Kobi Snir)は、ヨーの単純なプッシュ通知が攻撃の危険にさらされる可能性がある国民に手を差し伸べることを狙っています。

 タイムズ・オブ・イスラエル紙(Times of Israel)によれば、ヨーの通知はレッドアラートを補完するはずです。スプラング氏は同紙に、アプリは情報をイスラエル国防軍と国内線戦司令部から受け取ると言いました。

 イスラエルの新興企業の顧問、バー・レズニック(Dvir Reznik)はヨーの警報は不完全のようだと言いました。「私がイスラエルの側にいて、ミサイルが何マイルか離れた所に落ちたとすると、ヨーの警報は私に大して役に立ちません」「しかし、何もないよりはマシで、この発展がより意味のある何かになるのを見ることができます。しかし、それは便利で、レッドアラートを同じくらいに使えるようになるには、もっと内容が必要です」。

 ガザ地区には類似するアプリはありませんが、多くのパレスチナ人は危険を避けるためにツィッターのハッシュタグに頼っています。


 記事は一部を紹介しました。

 こういうアプリの存在は初めて知りました。ヨーについては、記事に評論家の懐疑的意見が紹介されていますが、それよりも、こういう警報の有効性に考えが向かいます。

 確かに、外出中にもミサイル攻撃を教えてくれるアプリがあれば、身を隠す時間を稼いでくれるかも知れません。特に、イスラエルは攻撃を探知してから15秒程度で着弾ですから、ギリギリのタイミングです。

 就寝中にアプリの音声くらいでは目が覚めないでしょうから、別途、大音声で起こしてくれる、アプリに連動した装置が必要かも知れません。

 北朝鮮から弾道ミサイルが飛んでくるというのなら、日本政府もこの種のアプリを製作する余地がありそうです。幸い、イスラエルに比べると、日本は北朝鮮の弾道ミサイルを探知してから着弾まで、10分程度の時間の余裕があります。

 しかし、大半の家がシェルターを備えていないので、警告を聞いても逃げようがないという実態があります。イスラエルは、自宅のバスルームがシェルターとなるよう、頑丈に造られていたりします。日本にそんな家はありません。

 なぜそうなのかと言えば、実際には誰も攻撃されないと信じているからです。国内での防衛態勢はまるで整っていません。台風の被害にはあれほど慎重に備える日本人が、国防に関しては現実感を持っていません。戦争になった場合、どこに逃げればよいのかすら、誰も知りません。

 それなのに、最近、集団的自衛権について議論がなされ、インターネットを見ていても、賛成する人たちの声が増えたのを見ます。これはまったく不思議な話です。一番肝心の国防態勢が存在しないのに、外国との共同作戦の話には賛成することは合理的ではありません。

 北朝鮮が日本を狙えるノドンミサイルを大量に持っていると仮定し、北朝鮮が米艦隊を日本海で攻撃した場合、集団的自衛権を発動して、海上・航空自衛隊が北朝鮮軍を攻撃したとすると、北朝鮮は日本に向けてノドンミサイルを発射するかも知れません。その時に、日本には集団的自衛権はあるが、具体的な防衛策はないということになります。当たるかどうかが疑問の迎撃ミサイルで対処して、それでもノドンミサイルが日本に着弾した場合、北朝鮮が事前に潜伏させていた工作員が破壊活動をした場合、すぐに始動できる防衛態勢はありません。

 こんな風に、海外の本当の戦争の話を見ると、日本での防衛議論の嘘が浮き彫りになるのです。これは、いかに日本の防衛議論が地に足が着いていないかという証拠です。

 

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.