マレーシア航空機を撃墜したのは誰か

2014.7.18


 BBCによれば、ウクライナでマレーシア航空機が墜落した原因は、まだ明らかではありません。

 ジョナサン・マーカス記者(Jonathan Marcus)は、分離主義者がロシアが供給した兵器でボーイング777を撃墜したのなら、これはウクライナ危機に関する議論を一変させると言いました。過去数日間で、西欧政府の間に、ロシアがウクライナ東部の分離主義者への軍事支援を進展させているとの懸念が広がっていました。NATO軍広報官は、ますます多くの重装備がロシアから分離主義者へ国境を越えて動いていると主張します。対応として、アメリカはロシアへの経済制裁を強化しました。

 アメリカとウクライナ当局は、航空機がミサイルで撃墜されたと考えていると言いました。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領(President Petro Poroshenko)はテロリズムの仕業だと言いました。パブロ・クリミキン外務大臣(Foreign Minister Pavlo Klimkin)は、航空機が親ロシア分離主義者に撃墜されたことを照明する電話の会話を傍受したと言いました。ロシアのウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)は、ウクライナ政府がこの地域で軍事活動を再開したことを非難しました。「事件が起きた空域にある国には責任があります」と、彼は言いました。分離主義者の指導者、アレキサンダー・ボロダイ(Alexander Borodai)は、ウクライナ政府が航空機を撃墜したと非難しました。

 ウクライナ国防省は、この地域には空軍のジェット機はおらず、反政府派に対して使われている地対空ミサイルはないと言いました。

 航空機はルハンシク地域(Luhansk)のクラスニー・ルーチ(Krasni Luch)とドネツク地域(Donetsk)のシャクタルスク(Shakhtarsk)の間に墜落しました。現場では少なくとも100体以上の遺体が見つかっています。破片は直径15kmの間に拡散しています。

 military.comによれば、米諜報機関は、地対空ミサイルが航空機を墜落させたと考えていますが、未だ、誰がミサイルを発射したかと、ロシアが供給したものかは明らかではないと考えています。

 ボーイング777の機体は東部ウクライナのドネツク地域のフラボブ(Hrabove)の反政府派が支配する村の近くに散開しました。

 コクピットとタービンの1つは、もうひとつのタービンから1km離れたところにありました。住民は尾部が約10km離れたところに落下したと言いました。

 ウクライナの治安当局は、反政府派がやったことを示す2つの電話の会話を傍受したと言いました。最初の電話の会話で、反政府指揮官、イゴール・ベズラー(Igor Bezler)はロシア情報当局者に反政府軍が航空機を撃墜したと言いました。2つ目の電話の会話で、反政府派戦闘員2人(1人は墜落現場にいた)が、ロケット攻撃を現場の約25km北にいる武装勢力の部隊が行ったと言います。いずれも独自に確認されていません。

 アメリカはロケットエンジンの熱を識別することを含めて、ミサイル発射を探知する最新テクノロジーを持っています。

 ウクライナ内務大臣のアントン・グラシェンコ(Anton Gerashenko)は、航空機はブークランチャーから発射されたミサイルが命中した時、高度約10,000mを飛んでいました。ブークランチャーはミサイルを高度22,000mに打ち上げられます。

 王立統合防衛・安全保障研究所のロシア研究の研究員、イゴール・スチャジン(Igor Sutyagin)はウクライナ軍とロシア軍は両方ともSA-17を持っていると言います。反政府派は最近、ブークシステムを手に入れたことを自賛しました。スチャジンは、ロシア派武器を分離主義者に提供しましたが、この種のシステムをロシアから輸送した証拠はないと言いました。ロシアが手に入れたとされる武器は高度4,500mを越える能力はありません。ブークシステムに似たランチャーは、木曜日早くに、AP通信の記者が反政府派が支配する、スニズン(Snizhne)の近くで目撃しています。


 昨日は記事を更新できずに、すみませんでした。

 記事は一部を紹介しました。

 マレーシア機を撃墜したのがミサイルだったことは、早期警戒衛星で分かります。撃墜された時刻前後の映像を調べると、ミサイルが飛んだ跡が確認できるのです。つまり、ミサイルを発射した場所と命中した場所の正確な座標も分かります。そこが政府側と反政府側いずれの支配地域かで、誰が攻撃したのかも推定できるわけです。その付近を撮影した偵察衛星の写真があれば、ランチャーが確認できるかも知れません。現時点で、アメリカはそこまでの解析を終えているはずです。

 機体の残骸が広範囲に散乱していること。航空機のパイロットが異常を報告していなかったことも、ミサイルで撃墜されたことの状況証拠になります。

 この攻撃は分離主義者がやった可能性が非常に高いといえます。ウクライナ軍は民間機の飛行計画書を持ち、レーダーなどの施設も十分に持っています。分離主義者はロシアから手に入れたミサイルはあっても、こうした情報や施設は持っていません。そのために、民間機をウクライナ軍機と誤解して攻撃したと考えられます。

 内戦に関係のない国際線の航空機を撃墜したことは、国際社会の分離主義者への視線を大きく変えます。国際社会が分離独立を認める可能性はずっと低くなりました。

 


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