シリア軍がハマ軍飛行場へ向けて前進

2014.9.10
追加 同日 17:10


 alarabiya.netによれば、シリア軍はハマ州(Hama)の軍飛行場近くの村の支配を奪還し、この地域の反政府軍戦闘員を押し戻していると監視グループ「The Syrian Observatory for Human Rights」が火曜日に言いました。

 監視グループは親政府民兵がここ数日で、この地域で2ヶ月間の反政府派との戦いのあと前進をみたと言いました。政府軍は、政府軍が空襲を行っていた戦略的空港のハマ軍飛行場を脅かしていた反政府派を押し戻したと、ラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdel-Rahman)は言いました。

 前進はシュハイル・アル・ハッサン(Suhail al-Hassan)が率いるとされる作戦が開始されたあとに来ました。彼はアレッポでの残忍な樽爆弾の作戦、政府軍が大きな領域を奪還した北部州での作戦で有名なシリア軍将校です。政府軍は、アルカイダ傘下のアル・ヌスラ戦線の拠点、ハルファヤ(Halfaya)へ前進することで、ハマ州西部への前進を続けると予測されます。火曜日に樽爆弾2個を投下したことを含めて、政府軍はすでにこの地域の空爆を始めています。

 BBCによれば、シリアの武装勢力、アーラー・アル・シャム(Ahrar al-Sham)の指揮官、ハッサン・アブード(Hassan Abboud)が会議中に爆弾の爆発で、他の指揮官と共に死にました。活動家は、自爆犯が北西部のラム・ハムダン(Ram Hamdan)で自爆ベストを爆発させたと言いました。アーラー・アル・シャムは、7つのイスラム主義反政府グループの連合であるイスラム戦線の一部です。

 2月に、アーラー・アル・シャムはライバルのイスラム国を、メンバー数人を殺害したことで非難しました。

 アーラー・アル・シャムはアサド政権と戦う反政府派で最大のグループです。このグループは強硬派ですが、イスラム国と対立し、衝突してきました。イスラム国は別のアーラー・アル・シャムの指揮官、アブ・カリド・アル・スーリ(Abu Khaled al-Suri)が、2月にアレッポの司令部で自爆攻撃で死亡した時に非難されました。

 6月のBBCのインタビューで、アブードはイスラム国を、かつてないイスラムの最悪のイメージを表していると非難しました。アブードはイスラム国と違い、アーラー・アル・シャムは部外者に忠誠を誓わせず、シリアで戦うだけだと言いました。彼は、イスラム戦線は自爆攻撃を用いないと強調しました。


 記事は一部を紹介しました。

  どちらも反政府派に不利なニュースです。アーラー・アル・シャムの合併の話は昨年11月に報じられていました(過去記事はこちら)。

 反政府派はいまだにハマ州で足踏みで、政府軍との一進一退を繰り返しています。しかし、双方は激しく戦闘を続けていて、省略はしましたが、この記事にも各地での戦闘の様子が書かれています。長期的には一進一退の状況であり、大きな進展はありません。ここの戦闘を子細に検討することにも意味はありますが、その時間的な余裕が私にはありません。

 次にアブード暗殺について。

 拘束した人を平気で斬首するイスラム過激派の思考は、ほとんどの日本人の思考に合致しないでしょう。日本も戦国時代には斬首が普通に存在しましたが、それは懲罰ではなく、戦果を他者に認めさせるためでした。なぜか第二次世界大戦では、斬首が復活し、捕虜を斬首する習慣が復活しましたが、それでも、現在そんなことをすれば、狂気と思われます。

 アブードはアーラー・アル・シャムはイスラム国とは違うと言いますが、日本人から見たら、どちらも同じです。他者に暴力を用いて宗教を強制できないというのが現代日本人の普遍的な考え方です。日本国憲法の「信教の自由」の概念がそれを裏付けています。

 アーラー・アル・シャムがそれを尊重するのはよいとして、自爆攻撃をしないのもよいとしても、斬首なんかやっているようでは、集団として認められません。

 アブード暗殺は似た者同士の殺し合いです。どちらの集団にも未来はありません。日本が交渉相手にしてよさそうなのは、反政府派の自由シリア軍くらいです。

 こうした複雑な戦いの構図は、対テロ戦争の解決を困難にしています。たとえるなら、他誌は誤っており、自分だけが真実を伝えていると言いたがる日本の週刊誌と同じです。アルカイダやイスラム国が消滅しても、別の組織が立ち上がる危険性があります。それだけ、イスラム世界の西欧に対する不満は高まっているのです。それは、間違いだらけの集団的自衛権議論を提唱したがる日本の政官界のような発想では、対処ができないほどの複雑さです。

 複雑化したシリア内戦は解決の見通しが立たなくなりました。もうすぐ冬がやって来ます。内戦が終わる兆しはなく、シリア国民は再び厳しい冬を迎えることになります。当サイトでは、かなり前から、シリア内戦を解決しないと、イスラム過激派を勢いづかせると警告してきましたが、それはもはや既成事実となっています。

 さらに、長期化した内紛は、ロシアがウクライナ介入の好機と見るような、別の紛争の原因となっています。これが北朝鮮などに同じ考えを抱かせる可能性もあるのです。

 


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