イラク軍とクルド軍がイスラム国を撃退か

2014.9.2


 BBCによれば、イラクのシーア派民兵とクルド軍は、イラク北部のアメルリ(Amerli・kmzファイルはこちら)の包囲網を突破した後、イスラム国に対する前進を続けています。

 BBCの取材チームは月曜日に町に入り、2ヶ月以上の包囲に耐えた住民を見つけました。合同軍はスレイマン・ベグ町(Suleiman Beg・kmzファイルはこちら)の民兵の拠点も占領しました。

 アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は、イスラム国が北部で民族浄化作戦を始めたという新しい証拠を見つけたと言います。アムネスティのドナテラ・ロヴェラ(Donatella Rovera)は「イスラム国は、非アラブと非スンニ派イスラム教徒の痕跡を消すための野蛮な作戦において、卑劣な犯罪を行い、(北部の)シンジャルの農村地帯を血まみれの殺戮の場に変えました」と言いました。「想像も及ばない規模での残忍な行為を調査するため、国連はイラクにチームを派遣しています」。

 BBCのガブリエル・ゲートハウス(Gabriel Gatehouse)は、月曜日に街に入り、家族と再開して満足する住民を見つけました。特派員は、まだこの地域にイスラム国の抵抗拠点があり、街への移動には問題が残っていると言います。辞任するヌーリ・マリキ首相は(Prime Minister Nouri Maliki)は、月曜日に街を訪問し、「我らの敵は徹底しており、志願兵に支援された我が軍はさらなる街を掃討するために前進しています」と言いました。クルド人のペシュ・メルガ(peshmerga)は月曜日、スレイマン・ベグに彼らの旗を掲げました。

 AFPは、近くのヤンカジャ(Yankaja)も包囲され、そこにいる民兵は大砲と機関銃で攻撃されていると報じました。

 民兵は、イランが最近の作戦で役割を果たし、武器を供給し、軍事計画を支援しました。

 アメルリでは約15,000人のシーア派トルクメン人が耐えていました。国連はイスラム国が占領すれば大量虐殺が起きるという恐れを表明しました。

 アムネスティは、イスラム国の戦闘員が8月3日と15日に村を襲撃し、数百人を殺した時の最悪の事件2件で、シンジャルで大量殺人が行われた証拠を集めたと言います。「両方の村の12歳の子供を含む男性と少年のグループがイスラム国の民兵に捕まり、連れ去られ、撃たれました」とイギリスが拠点の人権グループは言います。「命令はありませんでした。彼ら(イスラム国の戦闘員)は無差別に車に詰め込まれました」と虐殺の生存者はアムネスティに言いました。月曜日、国連人権評議会は、イスラム国が行ったとされる犯罪を調査するために緊急派遣団を送ることに同意しました。イスラム教に転向することを拒んだ男性多数が殺され、女性と少女はイスラム国の奴隷にされました。


 記事は一部を紹介しました。

 地名の「アメリ」を国内報道に合わせて「アメルリ」に、「イスラム国家」も「イスラム国」に変更しました。

 スレイマン・ベグはアルメリの北東10kmの街で、ここが包囲されているのなら、アルメリは間違いなく解放されたということです。ヤンカジャの位置は分かっていません。

 見たところでは、イラク軍とクルド軍はイスラム国に対して成果を収めているようです。しかし、前にも書いたように、撤退したイスラム国家が別の場所で再編成され、別の手薄な場所で攻勢をかける恐れはまだ消えていません。双方の戦果は報道されますが、イスラム国の実態は大して分かっていないからです。よって、今後の推移に注意を払う必要があります。

 イスラム国が宗教の自由を侵害し、強制的に改宗させようとしている点は問題です。しかし、昨日紹介した週刊ポストの記事では、エジプトの裕福な家庭出身からイスラム国の戦闘員に転身した青年が、民主主義国では人間が作った法律で裁かれるが、我々は神が与えた法律の中で暮らすと言ったことが紹介されています。イスラム法だって、人間が作った規則に過ぎず、穏健派のイスラム教徒と違い、イスラム国はそれを他人に強制しています。女性を性的奴隷にしている疑いも濃厚です。

 ついでに言えば、こうした問題が浮上している中、日本の一部政治家たちが従軍慰安婦など、戦時中の性的問題で物議を醸すような発言を繰り返しているのは、何とも腑に落ちない話です。

 ウクライナもリビアも情勢は切迫していますが、すべてを取り上げられません。できるだけ大きな動きがあったところを書きたいのですが、記事を読むだけで精いっぱいという状況です。

 


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