アメリカ系イスラム過激派の横顔

2014.9.23


 military.comが、イスラム過激派になったアメリカ人4人、その途中で逮捕された1人について報じ、彼らの動機を考察しています。

 猫を抱くのが好きだったモネール・モハンマド・アブサルハ(Moner Mohammad Abusalha)は5月にシリアで自爆テロを起こしました。彼はシリア内戦で最初のアメリカ人自爆犯でした。22歳のアブサルハはフロリダ州、ベロビーチでバスケットボールをして育ったコミュニティ・カレッジの学生でした。しかし、パレスチナ人の父親とイタリア系アメリカ人の母親の息子であるアブサルハは次第に宗教的な情熱に夢中になりました。自爆する前に作成したビデオによると、彼は親しい、急進派の友人から影響を受けており、他に16人がアルカイダ系のアル・ヌスラ戦線と共に戦っていると言いました。2人は聖戦を行うと決めましたが、実行するときになって友人は手を引きました。シリアに入国する前、アブサルハはトルコのイスタンブールにいました。彼はそこでの時間を、人生の低点だったと言います。ビデオで、アブサルハは、トルコのモスクの外で一匹の猫を見たと言います。「この美しい猫を見て、私は猫と遊び始めました……惨めでしたが、私はまだ幸せを感じます。猫を見て、私は幸せです」。

 デンバー郊外の19歳の看護助手、シャノン・モーリーン・コンリー(nnon Maureen Conley)は、デンバー国際空港から飛行機に乗ろうとして4月に逮捕されました。それは彼女がイスラム過激派と共に戦おうとするシリアへの最初の旅でした。彼女は、彼女はイスラム世界に対して行われた悪事と思ったものを修正することが唯一の答えだと信じました。イスラム教への改宗者は、彼女が過激派と共に戦っていると言ったチュニジア出身のオンライン上の求婚者と結婚するのを望んだとFBI捜査官に言いました。彼女は米陸軍での軍事訓練を戦闘のために使うか、基地で看護士をすることを望みました。コンリーがデンバーの郊外の教会職員とテロリズムに関して話し始めたあと、FBI捜査官は2013年11月に、彼女が過激派思想に関心を高めていることに気がつきました。法定書面によると、彼らは彼女が歩き回り、キャンパスのレイアウトをノートに描くのを認めました。彼女の弁護士、ロバート・ピピン(Robert Pepin)は、彼女が信仰を模索する間に判断を誤ったと言いました。コンリーは今月、外国人テロ組織に物質的支援を与える陰謀罪で有罪を認めました。判決は1月の予定です。

 ニューヨーク州ロチェスター地域にいる30歳の帰化米人、ミュヒッド・エルフジー(Mufid Elfgeeh)は5月に、拳銃2丁、消音器2個を持ち運んでいて、逮捕されました。連邦当局は、彼がイラク戦の退役軍人と、ロチェスター地域のシーア派住人を殺す計画だったと言いました。木曜日に、イエメン生まれのスンニ派イスラム教徒のエルフジーは、イスラム国を支援しようとしたという新しい連邦政府の嫌疑について無罪を主張しました。法定書面は、食品店オーナーが3人をイスラム国戦闘員に参加させるためにシリアへ向かうよう手配しようとしたと言います。彼はニューヨークで、アメリカの「殺戮機械」に復讐するために何かをしようと考えていたと言いました。2013年12月に、エルフジーはFBIの情報提供者に「街の外で大型の自動銃か何か、大量の弾丸、(防弾)ベストか何かを買い、歩き回って発砲を始めようと思っている」と言いました。彼は一度「アルカイダは『アメリカの侵攻と、地球と人々に対する覇権と戦っている』と明言している」とツィートしました。彼らは皆、イスラム教への改宗者で、どちらも地球の反対側で過激派の戦場に行き着きました。それぞれは首の右側にタトーを、殺されたときに身元確認を助ける印を入れました。

 最初に旅立った28歳のトロイ・カステガー(Troy Kastigar)は、2008年11月にミネアポリスを去りました。彼はソマリアのテロ組織、アル・シャバブ(al-Shabab)に参加する用意をした男の友人になりました。1年後、彼はソマリアで暫定政府を支援するアフリカ連合との戦いの中で戦死しました。「我々がここでどれだけ楽しんでいるかを知るならば、ここは本当のディズニーランドです」とカステガーは、アル・シャバブが公開した、覆いを掛けられた彼の死体も示した40分間のビデオで言いました。

 ミネアポリス郊外の33歳の彼のバスケットボール仲間、ダグラス・マッカーサー・マケイン(Douglas McAuthur McCain)は彼を追ってテロリズムの戦いに参加し、シリアへの入国するのによく使われるトルコに行き着きました。彼は今年、イスラム国と共に戦っていて殺されました。最後にサンディエゴに済んでいたマケインは、かつてツィッターでイスラム教を受け入れることは、彼がやった中で最高のことだったと言いました。彼はイスラム国の戦闘員をツィッターで追随しましたが、彼らに戦いに参加することを促進したかは不明です。


 記事は一部を紹介しました。

 この記事を読んで分かるように、狂気の産物に見えるイスラム国への参加も、当人たちはごく普通の人たちです。社会に対する普通の不満から、イスラム国の活動に参加することが正しいことだと考える人たちです。

 このように、1つのイデオロギーが国境や民族を越えてつながることは、かつてはありませんでした。軍隊のような強力な武装組織は国家にしか編成できなかったのです。共産主義も国際的なつながりへとは発展できないままに終わりました。理想と違い、そのつながりは見せかけで、国ごとに異なる共産主義が存在しただけです。

 アルカイダの登場は、この垣根を跳び越えました。そのアルカイダも勢いを失い、今後はイスラム国が登場してきたわけです。盤石に見えるイスラム国ですが、実際には異なる武装グループの連合体です。内部分裂する可能性も十分にあります。広大に見える彼らの領土も、シリアとイラク両政府が手が届きにくい部分に広がっただけです。まだ見えませんが、弱点も様々あるはずです。

 たとえば、重火器、海軍と空軍の主力兵器、ハイテク兵器をイスラム国が手に入れることはありません。これらはテロ組織ではなく「国家」が管理していて、優位性を保つために引き渡したりしないからです。イスラム国が持てるのは、比較的普及している陸上兵器だけです。少数の戦車を手に入れたところで、無人攻撃機のミサイルで破壊されるだけです。イスラム国が一定以上の勢力とはならないことは目に見えています。

 また、斬首のような殺人行為は、倫理的に大きな問題でも、軍事的には大した意味はありません。こうした意味のない殺人行為は過去の戦争でも見られることです。戦線の背後で行われる脱走兵狩り、裏切り者の処刑は、しばしば、見当違いの人を処刑しているだけです。こうした行為に熱中し、生け贄を戦いの祭壇に捧げることで、一部の人たちは安心感を得るのです。無駄な血を流せば流すほど、彼らの不安は安らぎます。たとえ、それに意味がないとしても、無意味な殺戮は戦いにつきものなのです。ナチスドイツのユダヤ人虐殺も、前線のドイツ兵を援護するにはほど遠い行為でしたが、驚きべき規模に発展しました。太平洋戦争中に、憲兵隊と特高警察が摘発した戦争反対論者の中には、無害な人たちも数多くいました。イスラム国の斬首も、これらと同種の範疇にあります。

 しかし、彼らの過激なプロパガンダは、世界に衝撃を与えています。斬首映像をインターネットで流す、恐怖支配を見せつける。こうした活動により、彼らは畏怖を醸し出せます。国際社会も、これ以上のプロパガンダ戦略を展開し、若者がイスラム国に惹きつけられるのを防がなければなりません。

 こうした動きが広がると、最終的にはイスラム国の垣根さえ越え、他の不満分子もイスラム国に共感したり、連携する可能性もあります。チェ・ゲバラの顔写真がファッションで多用されているように、イスラム国の旗が服にプリントされるような事態も予想されます。「反逆」は常にファッションのテーマなのです。若者の間に、こういうファッションが広まる可能性があります。

 今年中に、かなりの国が国内でのイスラム国の活動を禁止する法律を制定するでしょう。当然、日本もやらなければなりませんが、安倍政権はどれだけ本気で考えていることか。集団的自衛権とイスラム国対策の優先順位をどう考えているかが気になります。


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