国防費削減とイスラム国との戦い
military.comによれば、米軍の予算削減はイスラム国との戦いに影響を与えると専門家が言っています。
国防総省の2015年度の国防予算は現役戦力を2019年までに490,000人から440,000〜450,000人の規模へ減少させます。2016年に起こる予定の強制削減(Sequestration cut)は陸軍の現役戦力を420,000人に落とすとみられます。
米経済全般はかなり回復しましたが、シンクタンク「the Center for Strategic and Budgetary Assessments」の上級研究員、トッド・ハリソン(Todd Harrison)によれば、軍事予算の専門家は議会やホワイトハウスが強制削減を無効にすることはなさそうだと主張します。「軍にとって、圧力は止んでおらず、即応体制の不足を警告しています」「強制削減による予算削減が続くと、我々は予算不足でありつづけるでしょう」。
実際、強制削減が続くと、国防総省は来たるべき年に国家防衛戦略を成立させるために必要なものが最高3000億ドル不足すると、ハリソンは最近の報告で言いました。ハリソンの分析は、ウクライナやイラクのような場所での新しい紛争で必要なものを含みません。6月から、アメリカは限定的な空爆とISILの前進を止めるための顧問団の活動に約6億ドルを費やしました。
しかし、「the Center for American Progress」の上級研究員、ローレンス・コルブ(Lawrence Korb)は、2015会計年度の国防予算はISILのような脅威に対処するために海外緊急対応作戦の資金を含むと言います。「彼らが今年準備した戦争資金調達予算は……ひどく多い追加資金を得ました」とコルブは言いました。海外緊急対応作戦の580億ドルは2014年会計年度の予算の850億ドルからかなり下がりました。しかし、新しい資金、「対テロリズム・パートナーシップ資金」として知られる約40億ドルはISILのような脅威向けにつけられました。
アメリカのISIL攻撃計画がどの程度激しいかは不明ですが、オバマ大統領はNATO会合はISILがNATO三カ国に重大な脅威をもたらすことを満場一致で明らかにしたと言いました。そうした作戦は、大軍の地上部隊とそれらを支援するために必要なものが方程式の一部とならない限り可能だろうと、ハリソンは言いました。「空爆を増やし、より多くの攻撃隊を飛ばせば、コストがかかります」「確実に、我々がシリアへの作戦を拡大すれば、我々はより多くの地域を網羅します。我々は(諜報、監視、偵察)飛行を増やす必要があります。おまけに、より多くの目標があり、より多くの攻撃任務があれば、すでに行ったものと同じくらいになるでしょう」。
ワシントンの多くの者は、再発している赤字問題を社会保障、メディケア、メディケードのような公的給付金のせいにしますが、近代戦は平均的アメリカ人の財布からは出てこない高価な冒険だと、コルブは言いました。「1968年にはベトナムに500,000人の兵士がいて、我々はバランスがとれた予算を持っていました」「なぜでしょうか?。戦争付加税があったからです」。湾岸戦争のコストはアメリカに特に何もなさなかった、とコルブは言いました。「「我々は世界に、兵士か金をどちらか送るように言い、実際に、我々が実際に利益をした多くの貢献を受け取りました」。アメリカ最長の戦争はまったく異なっています。「アフガンとイラクに派兵したとき、我々は税金を上げるどころか減らしたのです」「国民に話すとき、彼らは『難しい選択をする必要はありません。我々は望む物をすべて持っています』と言うだけです」。コルブは現在、議会に「シリアで戦争をしたければ、議決して、税金を課せ」という記事を書いていると言いました。
記事は一部を紹介しました。
「Sequestration cut」は「Budget sequestration」とも書かれますが、日本語では「強制削減」と書かれます。意味を中心に訳すると「予算執行差止」で、議会が上限を超える予算を可決したとき、自動的に各省庁の予算を削減する制度のことです。
国内報道でもアメリカの国家予算と戦争との関係を指摘することは少なく、日本人はアメリカでは戦争資金は無尽蔵に出てくるという印象を抱きがちです。しかし、実際には、国防予算については毎年、様々な議論があり、額も変わります。それによって、兵士の給与も変動しているのです。
この記事を要約すると、シリアで作戦を行うなら増税が必要だということです。それから、対テロ戦がアメリカ最長の戦争だということも、忘れかけていましたが、思い出させてくれました。
対テロ戦は終わりが見えないこともあって、金の配分が実はポイントになるのです。持続可能な軍事活動でなければ、いずれ止めるしかなくなります。また、他に手が回らなくなるため、ウクライナのように、間隙を狙って紛争が勃発する危険もあります。北朝鮮までがチャンスと見るようだと、韓国に対するゲリラ的攻撃が増えるかも知れません。そうなると、日本にも影響があるかも知れません。
シリアに関しては、大軍を投入する可能性はありません。有人機と無人機による空爆、無人機による偵察が中心となる戦いで、ハイテク兵器が投入されるためにコストがかかる戦いとなるでしょう。問題は、空爆だけでイスラム国が消滅してくれるとは思えないということです。地上で自由シリア軍が活躍してくれない限り、目的は達成できそうにありません。しかし、彼らにはシリア軍だけでなく、イスラム戦線という別のライバルも存在します。それらとの戦いに勝ち、さらにイスラム国との戦いにも勝つのかといわれると、疑問符が大きくなります。
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