日本政府に人質事件を促進した可能性
alarabiya.netが、イスラム国の日本人人質事件について続報を報じました。
自民党の原田義昭議員は「私はこの人質事件から日本の外交にいかなる影響もないと考えます」と言いました。「この種のテロはいつでも起こり得ます。しかし、安倍総理の性格を考えたら、彼は基本政策を尻込みしたり、弱めたりしないのは間違いありません」と言いました。
人質事件への安倍総理の取り扱いは61歳の大きなテストとなるでしょうが、選択肢は僅かに見えます。
憲法の下で、日本の軍隊は可能であっても救出を試みることはできません。
身の代金を払うことは、日本政府を人質解放のために金を払わない政策の米政府との関係を悪化させかねません。
安倍総理が政権に復帰した直後、2013年1月にアルジェリアの石油施設をイスラム民兵が包囲して日本人の人質10人を殺した事件では、海外での軍事行動の制限を緩める保守派の要求に刺激を与えました。
記事は一部を紹介しました。記事の大半は国内報道でも報じられているものだったので、私が気になる部分だけ抽出しました。
まず、間違いを指摘します。自衛隊が海外で人質救出を行うことは現行憲法でも可能です。相手国が承認すれば自衛隊はその国に入ることができます。アルジェリア事件でも、アルジェリア政府が許可すれば可能です。ただし、アルジェリアが外国の軍隊の入国を認める可能性は低く、そういう場合は、国際法を無視して自衛隊を突入させることになります。このケースでは、イスラエル軍がウガンダのエンテベ空港で人質救出作戦を行った実例がありますが、日本がこれを選択する可能性は低いでしょう。
技術的にも、直ちに特殊部隊を出発させても、与えられた猶予はたったの3日間です。居場所も分からないのに、救出が成功するとは思えません。
原田議員の意見は、英語に翻訳されたものを私が日本語に直したので、元々の発言とは表現が異なっています。
彼の主張は最近の自民党に見られる雑な主張に過ぎません。 昨日、私は外務省のホームページで安倍総理の外遊に関する情報を調べました。その過程で、難民を受け入れている4ヶ国に総額2億ドルの支援を与えることと、イスラエルにイスラム国対策で与える2億ドルが別個だと勘違いし、これについて見解を掲載しました。間違いに気が付いたので、すぐに削除しましたが、それくらい分かりにくい説明であり、4ヶ国には難民対策といい、イスラエルには対イスラエルと説明し、話が一貫していないのです。そして、イスラム国はイスラエルでの説明を見て、人質殺害を思い立ったのです。やはり、安倍総理と外務省には不作為の責任があると考えざるを得ません。
ちなみに、外務省のホームページで分かるのは、支援金全体の35%であり、残りの使途は公表されていません。安倍総理が財界人を多数同行させたことから、 それらがビジネスに関係する費用である可能性が十分にあります。支援金はそれを覆い隠すための材料かも知れません。
外務省は昨年から2人が人質になっていることを知っており、その上で、今回の外遊を企画しました。イスラム国が空爆に神経質になっていることも承知の上で、彼らを刺激する声明を用意したのです。
実際、外務省は人質が取られたあとも、何の対処もせず、今になって慌てていると日刊ゲンダイが報じているといいます。
小泉純一郎がイラクに自衛隊を派遣した時、当サイトはそれを強く非難しました。イスラム教徒を味方につけておく選択肢が他にもあるのに、安直にそれを捨て去ったからです。当時、私は軍事評論家の神浦元彰氏を札幌に招いて、この問題について講演会を開いてもらいました。その席に、数ヶ月後にイラクで人質になる今井紀明君が来ていました。
中東諸国にも、日本はアメリカの後ろについて対テロ戦を戦っているという認識が広がっている可能性があります。この記事のように、中東のマスコミでも今回の事件と憲法改正、集団的自衛権はセットとみなされています。この事件の上に、集団的自衛権の行使、憲法改正が続くと、イスラム国も「日本が自衛隊を送る可能性がある」と判断するようになるでしょう。
それにしても、外務省の不作為は問題です。シリアだから事件が起きたとは言い切れません。テロリストは可能なら、どこででも事件を起こします。パリでも、ロンドンでも、どこででも日本人がテロリストに殺されたり、誘拐される時代が来たと判断すべきなのです。
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