国際人道事実調査委員会がクンドーズ誤爆を調査か

2015.10.16

 alarabiya.netによれば、国際人道事実調査委員会(The International Humanitarian Fact-Finding Commission: IHFFC)は、アメリカとアフガニスタンに対して、両国が同意するならば、国境なき医師団の病院に対するアメリカの空爆について調査する準備があると言いました。

 IHFFCは水曜日、クンドーズ市(Kunduz)で病院を破壊し、国境なき医師団の職員12人と患者10人を殺した米軍の繰り返された空爆の後、委員会のサービスを提案したと言いました。IHFFCは自身のイニシャティブで10月7日に両政府に同一の書簡を送ったといいました。ベルン(Bern)に拠点を置き、ジュネーブ条約の下で設置された政府間機関は関係国の同意がある場合に限り、任務を開始できます。1991年の湾岸戦争の後に創設されましたが、機関はこれまで動いたことはありませんでした。

 アメリカは調査を行うと誓約しましたが、国際的な調査は不要だと言います。アフガン当局も調査中です。

 ドイツのギースン大学(University of Giessen)の法学教授で委員会の第一副理事ティロ・マラウン(Thilo Marauhn)は「何をすべきか国家に言うのは我々の仕事ではありません」「我々は彼らに圧力を加えず、彼らを(受け入れるように)誘うのです」「アメリカが『我々はよき人々で、この公平な独立機関に質問をすることを承認します』というのはたやすいでしょう。アメリカは(国際人道法を)遵守を推進する国として基本的に位置することができるでしょう」。

 ホワイトハウスの広報官、ジョシュ・アーネスト(Josh Earnest)は国防総省が事件を調査しており、オバマ大統領が指揮系統へ彼が完璧で、客観的で、透明性のある評価が行われることを期待していると命令したと言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 先に国境なき医師団がロシアにイニシアティブをとるよう求めたとの報道記事があり、それは止めた方がよいと同組織のフェイスブックに書いたところ、報道記事は同組織の公式見解と異なるとの返事をもらいました。結局、記事は誤りだったようです。

 国際人道事実調査委員会については聞いたことがあるようなないような程度の認識しかありませんでした。それもそのはずで、記事に書かれているように、創設以来、実際に活動したことがないのです。

 専門家チームを持つ組織ですが、人員が多いわけではなく、そこが心配です。調査が行われるなら、国境なき医師団、米軍とアフガン軍から聞き取り調査を行うでしょう。現場の写真はすでに国境なき医師団から委員会へ提供されています。

 アメリカは同意しないでしょう。というのも、米軍には立派な司法機関があり、そこに別の機関が関与することを望まないからです。現場のミスであることは明白であり、軍事裁判はしない程度の問題なのです。先に、軍法第15-6による調査が行われていると報じられていますが、第15条は「指揮将校による裁判を行わない処罰(Commanding Officer's Non-Judicial Punishment)」ですから、裁判が開かれないのはまず間違いがありません。もちろん、よほど看過できない事実が調査で明らかになった場合は話が別です。裁判を想定する場合は第32条による調査となります。

 これだけ人を殺傷しておいて裁判もしないのかと思うでしょうが、これが軍隊というものなのです。戦争における殺人は故意による場合を除いては軍隊は処罰しないものです。これが一般の法律と軍法の違いです。 自衛隊法は一般の軍法ほどの内容を持ちませんが、集団的自衛権を行使する以上、いずれは自衛隊法を軍法並みの内容にしようという話が出てくるはずです。その時には、こういう内容の法律ができあがることになります。そうなると、日本本土が攻撃されて自衛隊が反撃した場合、自衛官が誤って日本人を殺しても自衛官は裁かれません。これは軍法の世界では特に不思議なことではありません。仮にクンドーズ誤爆を自衛隊がやったとすると、自衛官が刑法によって裁かれることになります。それを防ぐために軍法で保護するのが軍隊の常識です。こうした複雑な事情があるのですが、これらに無知なまま気軽に軍事を語る日本人が多すぎると、私は感じています。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.