誤爆の原因は米軍内で生じた模様

2015.10.7


 military.comによれば、米軍のジョン・キャンベル大将(Gen. John Campbell)は、上院軍事委員会でアフガニスタン、クンドーズ市(Kunduz)での誤爆に対して責任をとらなければならないと言いました。

 キャンベル大将は上院軍事委員会でアンガス・キング上院議員(Sen. Angus King)がオバマ大統領が計画を修正することが彼の専門家としての判断であるかと尋ねた時、「イエス・サー」と答えました。「現場での状況に基づいて、我々は現在進行中と異なるオプションで高位の指導力を提供しなければならないと信じます」。

 少なくとも22人を殺した10月3日のクンドーズの空襲は、空爆を行う決定は指揮系統の中でアメリカがしたことが明白で、国境なき医師団は誤って攻撃されたと大将は言いました。「我々は保護された医療設備を決して故意に目標としません」。しかし、アフガン軍が要請したときクンドーズの米特殊作戦部隊は空爆を要請し、空軍特殊作戦部隊のAC-130が土曜日の早朝に、国境なき医師団が1時間以上続いたと言った攻撃を行いました。「アフガン軍が空爆を要請したとしても、地上を攻撃するのを可能にするためには厳密なアメリカの手順を踏まなければなりません」。

 ジョン・マケイン上院議員(Sen. John McCain)は、現場の特殊部隊には統合末端攻撃統制官(Joint Terminal Attack Controller: JTAC)がいたかを尋ねました。キャンベル大将は近接航空支援を行う訓練を受けている特殊部隊が、航空機が攻撃を行った周辺にいたと言いました。

 キャンベル大将は現在リチャード・C・キム准将(Gen. Richard C. Kim)が行っている軍法第15条6項による調査の報告書は30日以内に出されると言いました。

 クンドーズのアフガン軍特殊部隊指揮官、アブドラ・ガード(Abdullah Guard)は空爆を要請したことは認めましたが、実行方法に関する責任は否定しました。彼の部下が病院の近くで激しい攻撃を受け、約500人とみられるタリバン軍と戦ったと言いました。「我が軍が敵の陣地を攻撃するために空爆を要請したかも知れませんが、病院を爆撃するつもりはありませんでした」。


 記事は一部を紹介しました。誤爆に直接関係があることだけ選びました。

 マケイン議員が口にした統合末端攻撃統制官は空軍隊員で、地上軍と共に行動して、空爆を正確に誘導する役目を負った兵士のことです。キャンベル大将は特殊部隊の隊員は誰もが統合末端攻撃統制官の訓練を受けていると答えています。人員の不足が事故の原因ではないとの答弁です。

 すでに関係した兵士達は現場から引き揚げさせられ、調査のために尋問を受けているはずです。数百ページ分の報告書が出されるはずです。

 現場の状況が少しづつ分かってきました。ようやく、病院の正確な位置が分かりました。nytimes.comの記事に載っていた航空写真から位置が特定できました。先日推定した場所は現地の病院で、ここから道路を北へ1km弱行ったところにあります。330m×160mの敷地の中に特徴のある建物が建っています(kmzファイルはこちら)。

写真は右クリックで拡大できます。

 記事にはタリバンがいた場所を記した地図も掲載されています。午前7時に市北部の環状交差点にタリバンの旗があがりました。ここは病院から約1.5km北東です。南部では先日誤爆現場と推定した付近までタリバンが前進していました。

 以上の情報から一つの推定が成り立ちます。下の写真中の「現地の病院」付近までタリバンが来ていたのですから、戦闘はこの付近で起きたと考えられます。写真左端を縦に走る道路は空港へ行く幹線道路です。「現地の病院」と「誤爆現場(国境なき医師団の病院」の間には大きな目立つ建物があります。ここにタリバンがいて、AC-130がここと誤って攻撃したのではないかと推定できるのです。

写真は右クリックで拡大できます。

 インターネット上で、意図的な誤爆との見解が多数出ています。これは空爆が1時間も続き、米軍に攻撃を受けていると連絡した後も続いたことから生じたようです。

 この種のスキャンダルは米政府にとって痛手で、特に理解が対立している国からの冷笑を浴びる結果にしかならないので、何の得もないことです。あえて実行する価値はありません。

 しかし、軍隊であっても、攻撃を止めるように要請し、それが現場の部隊に伝わるまでは時間がかかるのです。劇映画では短時間で中止できるように描かれることがありますが、それは映画の中の時間は実時間と必ずしも同一ではないためです。

 この種の事故を防ぐには、建物の屋根に団体名を大きく表記するしかないかも知れません。

 


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