海外の専門家が見る南沙諸島問題

2015.11.4


 military.comによれば、中国の専門家は、米海軍がパトロールを行った結果、中国が南シナ海で島々を拡張し、軍事化するのを急ぐと予測しています。

 多くのアナリストは航行の自由作戦を賞賛しながらも、こうしたパトロールが年間1兆2千億ドル以上のアメリカの貿易が通過する南シナ海で武力対決を引き起こすかについては、ほとんど意見が一致しません。

 ある者は、すでに経済で関係が深い2カ国間の関係は対話で緊張と潜在的紛争を柔らめるところまで醸成されているといいます。「一番ありそうなのは、2カ国が将来を考え、利益とよい関係などが重要で前向きだと理解することです。それが危機に至るのを防ぎ続けるでしょう」と退役提督で「the Institute for Foreign Policy Analysis」の上級顧問、エリック・マクバドン(Eric McVadon)は言いました。

 香港の「the South China Morning Post紙」によれば、日本とオーストラリアのようなアメリカの同盟国が「FONOP」として知られる航行の自由作戦と同じことをしないよう警告するため、ベトナム沿岸近くの西沙諸島の永興島(Woody Island)から戦闘機が離陸したと、軍事専門家の倪乐雄(Ni Lexiong)は言いました。オーストラリアは南沙諸島でこうしたパトロールを検討しているとされます。

 太平洋艦隊指揮官ハリー・ハリス大将(Adm. Harry Harris)はアメリカはこの地域を通過して航行を続けるとしながらも、海軍艦は軍事対立を避けると強調しました。匿名の米国防総省当局者は、艦は年に約8回議論になっている島の12海里以内を航行するだろうと言いました。

 一部のアナリストはこれらを大国間の関係における予期された不穏と見ています。「言葉を重ねた非難はともかく、私はFONOPに続く両者の関係は米中関係が現在はどれだけ安定しているかを示すと考えます」と非営利組織CNAの中国研究部のジェフリー・ベッカー(Jeffrey Becker)は言いました。過去には、中国がアメリカとの軍同士の交流を即座に見合わせても誰も驚きませんでした。「火曜日の段階で、2カ国は対話を維持し続けることに同意しました。これはどれだけ軍事関係が成り立ったかを反映していると思います」。事実、中国はハリス提督の中国訪問中にそうした報復の機会がありました。緊張下にも関わらず、訪問はうまく行きました。

 2年前にアメリカのB-52爆撃機が東シナ海の中国の防空識別圏内を飛んだ時に紛争はなかったと、ワシントンの「Center for Strategic and International Studies」のザック・クーパー(Zack Cooper)はいいました。「私は南シナ海で大きな変化はないと思います」と彼は言いました。

 しかし、一部の中国専門家はさらに多くの騒動が将来にあり、武力紛争になるかも知れないと考えます。

 中国は経済悪化で酷く困っていると、2001年発行の「The Coming Collapse of China.」の著者、ゴードン・G・チャン(Gordon G. Chang)は言いました。「30年度以上経済発展に正統性を置いた政権です。経済が悪化したら、正統性のために唯一残る基盤はナショナリズムです」「そして、中国のナショナリズムは南はインド、北は韓国までの国家の弧に亀裂を生みます」。米中間に武力紛争が起こらないと考える者は愚かだとチャンはいいました。「もちろん、両者共に武力紛争を望みませんが、それはそうならないことを意味しません」「国家が戦争を望まないのに戦争に至ったことが何度もあることを理解するために歴史を見ることが必要です」。

 「the Asia-Pacific Center for Security Studies」の教授、モーハン・マリク(Mohan Malik)は最近の緊張の結果、中国は作り物の島の建設を増すかもしれないと言い、人工島を造るために海の砂を浚渫していることに言及しました。「これは中国に完璧な口実を与えます。中国が一つの事を模索しているなら、島の建設や要塞化を遅めず、中国にそうさせたとアメリカに責任を負わせます」。

 FONOPのパトロールも中国軍内のタカ派により大きな賭に出る機会を与えると彼は言いました。中国経済が大きく後退すると、共産党指導層、特に習近平主席(Xi Jinping)は国内に弱く見えるのを望まず、南シナ海での倍増させた活動を解決のデモンストレーションとするかも知れません。

 南シナ海上の航行の支配は時折米中間でを呼ぶ問題になっていると、「the Center for a New American Security」のパトリック・M・クロニン(Patrick M. Cronin)は言いました。中国人はこの地域とアメリカを仲違いさせようとし、アメリカは中国と隣国の間の楔としての中国の独断的で片寄った行為を止めさせるでしょう、と彼は言いました。


 記事は一部を紹介しました。最後の方は省略しましたが、それ以前の大半を粗訳しました。この記事は最初に「Stars and Stripes」に掲載されました。

 航行の自由作戦の後、様々なコメントを読んだのですが、日本人から出る意見に多くは拙速な内容が多いのが気になりました。この出来事を「出来レース」と決めつけたり、「中国が封じ込められた」と明らかにアメリカ寄りだったりします。「防空識別圏と同じに中国は宣言をするが武力は行使しない」という意見もありました。いずれの見解もこの紛争を説明するものとしては、しっくりしないと感じています。

 この記事も同意できる部分はあるものの、完全には納得できないものを含んでいます。

 アメリカの目的が人工島の建設を阻止することなら、軍艦の通過では成功するはずがありません。中国は島の建設を止めないからです。もしかしたら、中国の目的は人工島を建設しながらも、戦闘機を常駐させず、それにより周辺国と力関係のバランスをとることかもしれません。つまり、人工島を造ることは国際法で禁止まではされていないので行い、主権は主張するものの、武力行使まではしないかもしれません。あるいは、戦闘機部隊を置き、必要なら使うつもりかも知れません。中国が滑走路は救難のために使うと述べていますが、3カ所も必要とは考えられません。中国がどこまでやるかは不透明なままです。

 南シナ海は広く、南沙諸島に滑走路を造っても、全体をカバーすることは困難です。中国が敵対した国の船や航空機を攻撃し始めたら、それは海賊行為であり、それは国連常任理事国としての中国の立場を失わせます。そこまでやれば、国連が組織的に崩壊するに等しいのです。

 また、孤島には民間人がいる心配が少ないのでら弾道ミサイルにとっては、格好の攻撃目標です。短時間で壊滅され、救援の船が米海軍などの潜水艦に次々と撃沈される事態となるでしょう。実は孤島の基地は防衛では不利なのです。最近のランド社のシミュレーションでは、南シナ海では米軍が圧倒的に有利なのです。

 中国経済が失速し、中国が軍事費を削る事態も起こるかも知れません。ドイツ政府の予測では、中国の経済発展は弱まるものの発展は続けるとのことですが、どうなるかは流動的です。

 道筋は様々に考えられ、その一方で、アメリカは中国の人工島を阻止できず、中国も主権の主張が国際社会から認めてもらえず、互いに目的を達成できない状態が続きます。なら「おあいこ」なのかといえば、この地域に残る紛争の危険を考えたら妥当な表現とはいえません。国家間の緊張は積み重なり、相殺できないのです。

 現段階ではさほど強くはないものの、軍事的緊張は高まったままで、不安定さが増した状態が続きます。それがいま言えることだと思います。

 


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