中央軍アナリストの内部告発で調査が開始
military.comによれば、米下院の共和党議員が米中央軍司令部の情報分当局者がアナリストにイラクとシリアの戦争の努力を十分に反省しなかったという報告書を破棄するよう圧力をかけた件を調査するタスクフォースを設置しています。
金曜日、3つの委員会はタスクフォースが来年早くに結論を出すと発表しました。共和党のケン・カルバート(Ken Calvert)、マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)、ブラッド・ウェンストルプ(Brad Wenstrup)が調査を率います。米国防総省の監察官は諜報の誇大報告の疑いを調査しています。
元中央軍当局者は情報アナリスト50人以上が彼らの結論が取り下げられたと不満を述べたと言いました。司令部の1人以上のアナリストが7月に国防総省の監察官に不満を書面で提出し、当局が公に知られる調査を促しました。
記事は一部を紹介しました。
この事件には日本語で読める記事があります。こちらの方が分かりやすいでしょう。(記事はこちら)
記事を書いたのは静岡県立大学グローバル地域センターの西恭之特任助教です。事件に関する記述はその通りと思われますが、その後の見解は理解しにくいものです。気になるのは下記の西助教の兵数推測です。
また、「イスラム国」はシリアで200万人以上、イラクで400万人以上の住民を支配している。「イスラム国」が一定の住民の支持を得ているとしても、住民に対する兵力の比率は、2001年以後のアフガニスタンやイラクにおける多国籍軍や現地国軍の対反乱戦の成功例と同等の、約60人に1人程度と考えるのが妥当だ。それに従って推計するとシリアとイラクの「イスラム国」は、米国側の楽観的推計を大きく上回る合計10万人以上の兵力を有していると考えなければならない。
民兵の鎮圧では「敵戦力の3倍」ではなく「住民50〜60人に兵士1人」を用意するといわれています。それは米軍の軍事ドクトリンです。イスラム国がこの原則に注目しているという証拠はありません。むしろ、もっと少ない数で活動するために、意図的に残酷な斬首映像を作成し、「オズの魔法使い」のように自分をより大きく見せているように思われます。ロシア政府の見積もりでも6万人というレベルですが、西助教の推測はそれを上回ります。私が知る中で最高値です。西助教は「クルド人の拠点コバニ市に対する包囲戦のような大規模な作戦を遂行できたとは考えにくい。」と言いますが、この包囲戦はそれほど大部隊を用いたとは思えません。街自体がそれほど大きくないのです。
話を戻しますが、ジョーンズ大使がイスラム国の兵数を9000〜1万8000人と述べた件は当サイトでも紹介していました(記事はこちら)。現在、イラク軍が包囲しているラマディの兵数はたったの300人です。もしかすると、イスラム国は大幅に少ない兵数で作戦を行っているのかも知れません。そして、進出先が包囲されると、あとは「死なばもろとも」式の作戦を展開し、自滅して果てるのです。全戦線で活発に作戦を行うというよりは、一カ所で攻勢を行うことが多いので、兵をやりくりして、戦っているように見せるのがうまいようにも見えます。
戦車は空爆の格好の標的なのであまり使えていません。つまり、基本的な小火器による戦いが得意で、攻撃されると車でばらばらに逃げて、また別の場所で結集します。住民を人質に取り、政府軍の突入を妨げるのです。
精強な政府軍がいるところでは成り立たない戦略です。シリア軍とイラク軍の無能さが彼らを生きさせているのです。
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