イスラム国がリビアを狙う理由

2015.2.19


 alarabiya.netによれば、イギリスに拠点を置く過激主義を専門とするシンクタンクは水曜日、イスラム国はリビアをヨーロッパへの出入口に使おうとしていると言いました。

 「The Quilliam Foundation」はイスラム国支持者が公表した、イスラム国の宣伝活動家がインターネットにアップロードした書簡を含めた文書に言及しました。

 書簡の中で、イスラム国は南の十字軍国の海岸に到達するために地中海を航海する計画を表明しました。この計画は自称カリフの新しい州としてリビアの重要性を説明します。

 先週、リビアでエジプト人21人を斬首したビデオの中で、民兵は北の方向を指し、「我々はアラーの許しを得てローマを征服する」と言いました。イスラム国の書簡は、リビアをうまく使えるなら、空爆の対象となっているシリアとイラクのイスラム国領域への圧力を軽減するのを助けられるとしました。

 イスラム国は2011年にカダフィ政権が打倒された後、リビアの反政府派の手に落ちた重火器を使い始めることもできます。さらに、リビアの石油収益に対する欲求を表明しました。


 記事は一部を紹介しました。

 昨日、クルド人がツィッターで、同じことを書いているのを見ました。幸い、ヨーロッパはそれに気がついています。エジプト人を斬首した映像は内容を調べていませんでしたが、かなり重要な表明があったとのことです。本来、組織の目的は隠しておくべきですが、わざわざ自分で言ってくれるのは助かります。

 リビアからはイタリアが目の前です。つまり、渡航勧告が出ていないイタリア旅行に行ったつもりが、イスラム国に誘拐され、日本人が首を切られるといったことが起きる可能性があります。

 イラクとシリアが怪しくなってきたので、今度は政情不安定なリビアに人員を送って勢力を拡大し、さらにはヨーロッパに侵攻しようという戦略転換には注目しなければなりません。

 そのために、先日、日本人を斬首して世界に植え付けた恐怖を再利用しようとして、エジプト人21人を殺してみせたのです。しかし、少し演出があからさまで、流れ出た血で海が赤く染まる映像までつけたのは、いかにも地中海経由でヨーロッパを狙っていますといわんばかりです。彼らは斬首映像を使って、大衆を恐怖で支配できると信じ込んでいるみたいです。

 この戦略は少し空想的な感じがします。まず、十分な兵力をリビアに置けるかが問題です。うまく行かないと場所を変えるのは、守るべき領域を持たないテロ国家にとってやりやすいことです。しかし、アルカイダも場所をアフガニスタンやイラクへと変えた結果、勢力を失いました。主力はシリアとイラクにおり、彼らが転戦するのは簡単ではありません。ビデオに登場する覆面の男がジハーディ・ジョンではないことが、それを示しています。

 リビアは分裂しているものの、反政府派がイスラム国やアルカイダに帰順する可能性は少ないでしょう。少ない兵数で、地元部族と戦えるかが疑問です。例によって、手薄な場所で勢力を拡大するしかありません。もっとも、東部には油田が集中していて、そこへ支配地域を持っているのが気になります。

 しかし、石油収入が空爆で激減する可能性が高いことは、すでにシリアとイラクで実証済みです。経済を石油一転に頼るのが、彼らの欠点です。政情不安定で、石油を産出するイスラム文化圏を作らないことが、イスラム国を発展させないポイントです。

 対策としては、シリアとイラクのイスラム国民兵がリビアに転戦するのを防ぐことが重要です。つまり、トルコが本来の役割を果たす必要があります。

 リビア国内の組織を壊滅するために、必要ならエジプト軍が地上軍を派遣することになります。しかし、主体はリビア国内の部族や政府組織である必要があります。

 もはや、情勢はシリアとイラクではなく、イスラム国が軸足をリビアに変えられるかという状況になってきたのです。安倍首相がこのことを理解しているかが気になります。

 


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