イスラム国に内部分裂の徴候が広がる

2015.2.22


 military.comによると、イスラム国に緊張と権力闘争の徴候が外国人戦闘員の間で起きています。

 「彼らはかつては存在しなかった新しい問題と闘っています」と、ベイルートにある「the Carnegie Middle East Center」のリナ・カティブ(Lina Khatib)は言いました。

 クルド軍はシリア北部のコバネ(Kobani)からイスラム国を追い出し、シリアの穏健派の反政府派と共にこの地域の215ヶ所の村を奪還しました。これはイスラム国の西端の拠点アレッポ州(Aleppo)とシリア東部との補給路に重圧をかけます。クルド軍は現在、大都市、ミンビジ(Minbij・kmzファイルはこちら)、ジャラブルス(Jarablus・kmzファイルはこちら)、タル・アビアッド(Tal Abyad・kmzファイルはこちら)のような拠点に対して戦いを行う予定です。

 イスラム国の西端の拠点の1つ、アル・バーブ(al-Bab・kmzファイルはこちら)周辺から、イスラム国兵士は戦術的な撤退をしています。住民はアル・バーブで民兵の存在が希薄になったといいます。

 民兵達はアサド大統領の政府軍との高くついた戦闘で行き詰まりに気づいています。

 イスラム国はデリゾール空軍基地(kmzファイルはこちら)周辺で、シリア軍との激戦から抜けられなくなりました。イスラム国は先月、基地を占領するために攻撃を始め、今も続けています。

 コバネを失った後、イスラム国の間に亀裂が見え始めました。

 アル・バーブの住人、バリ・アブデルラティフ(Bari Abdellatif)は、チェチェン人とウズベク人の民兵の摩擦がチェチェン人の高名な指揮官、オマル・アル・シシャニ(Omar al-Shishani)の介入を招いた衝突を起こしました。少なくとも内紛のために2人の高官が死亡しました。「コバネの長い戦いは緊張を高め、戦闘員達は互いを裏切りで責め、結局、反目しました」とアブデルラティフは言いました。

 その他数人の活動家は最近、イスラム国内の国が異なる派閥の間で衝突を確認しました。先月、悪名高い警察組織「ヒズバ(Hisba)」の高官がデリゾール州で斬首されて発見されました。彼の口には煙草がくわえさせられ、喫煙中に殺されたようにみせかけたようでした。喫煙はイスラム国が禁止していますが、彼をスパイと疑った過激派が殺したとの疑いがあります。

 イスラム国の事実上の首都、ラッカ(Syria)の活動家は、外国人戦闘員が行政と財政上の問題で言い争うと言いました。数人の民兵がスパイや脱走の容疑で殺されました。「ダイーシュは自身を1つのものだと言おうとしますが、水面下にはスキャンダルが沢山あるのです」と活動家は言いました。

 今月初め、過激派達はアレッポ州のグループの宗教担当者がヨルダン人パイロットの焼殺に反対した後、彼を解任し、宗教裁判にかけたと、人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」は言いました。

 「イスラム国はいま、軍を一致団結させ続けるための戦いを始めています。そして、これは否定的な影響を与えているすべての外部要因とは別です」とカティブは言いました。彼女は、新しいトラブルは人々が権力を他人へ譲ることを貪欲で拒絶するようになった内戦の背景で活動しているという事実に対してすることを沢山持っていると言いました。「イスラム国ですら、内戦と現在シリアで目撃されている背景で起きる軍閥が起こす事象を免れないのです」。

 ラッカでは、ヨルダン人パイロット殺害で増加した同盟国の空爆がイスラム国を揺るがしていると、活動家は言います。反イスラム国メディア「Raqqa is Being Slaughtered Silently」は、過激派は大勢の戦闘員が重傷を負うと、住民に献血を強制していると言いました。最近、イスラム国は住民に夜間外出禁止令を出し、トルコに行こうとする脱走者を抑えるために、夜間の道路傷害物を設置したと報告しました。

 世界中から外国人がイスラム国に参加する一方で、幻滅した多くの新兵たちは、生活が予想と大きく違うとか、より暴力的だと気が付いて、立ち去ったり、立ち去ろうとしています。人権団体はイスラム国が過去半年間でメンバー120人以上を殺したと言います。それらの大半は帰国を望んだ外国人戦闘員です。


 記事は一部を紹介しました。

 しばらく前から言われ始めましたが、イスラム国に分裂の危機が出ています。

 クルド軍がミンビジ、ジャラブルスまで足を伸ばすとは驚きです。ここを占領すると、アレッポからシリア東部へ向かう北部の道路を封鎖します。

 アル・バーブからの撤退は、ミンビジを守るためと考えられます。この辺からイスラム国がいなくなれば、シリア自由軍の交通が楽になります。兵数が足りないイスラム国が戦線を縮小している証拠といえます。

 これらの目標をクルド軍が達成すれば、アレッポ市からラッカ市へ向かうには、南部からラッカ市に入るルートしかありません。そうなると、イスラム国にはユーフラテス川沿いしか支配地域がなくなり、外国からの補給はほとんど不可能になります。

 案外、彼らはラッカ市からも撤退して、デリゾール市まで逃げるかも知れません。それはそれで問題にはなりません。

 イスラム国に集まった者たちは、イスラム国が急激に領土を増やしたことに感銘を受けた者たちが多いのです。軍事的に考察すれば、これが一時の勢いであることが分かるのに、彼らは神の力と勘違いしたのでしょう。それが滅亡に近づけば、心が乱れて、分裂するのは自然なことです。

 彼らの支配地域には、南部が広大な砂漠だという欠点があります。道路もほとんどなく、移動が困難で、ヨルダンとイラクにつながります。逃げ場がありません。ユーフラテス川沿いしか、生活する場所は見出せません。追い詰められるという恐怖はかなり高まっていると想像します。この焦りが仲間割れをさらに誘発するのです。

 それから、モスル戦が4月までに始まるという情報が大勢を占めていますが、私はもう少し早くに始まると考えています。準備にそこまでの時間はかからないこと。事前に少し情報を出して、イスラム国の配置変更を観察する必要があること。若干の奇襲効果を出すこと。これらの理由で3月中ではないかと考えています。

 今後、イスラム国は資金の多くをアフリカに投じます。リビアもそうですが、その他の不安定な国で活動しようとするでしょう。いまから、訓練所などの拠点を破壊し、幹部を無人攻撃機で殺害する必要があります。

 


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