クルド軍がシリアとイラク間の補給路を遮断
alarabiya.netによれば、数十人のキリスト教徒がイスラム国に誘拐される恐れが高まったため、クルド軍はシリア北部でイスラム国に対する大規模な攻勢を行い、イラクからの補給路を遮断しました。
人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」は、米主導の空爆に支援されたクルド軍の攻勢と同時に起きた大量誘拐により、アッシリア人のキリスト教徒少なくとも90人がハサカ州(Hasaka)の村々から拘束されたと言いました。シリア国家評議会はその数字を約150人としました。
数百人以上のキリスト教徒がハサカ州の2つの市へ逃げました。イスラム国は彼らの自称「カリフ」に対する忠誠を誓わない宗教的少数派とスンニ派イスラム教徒のメンバーを殺してきました。このグループはリビアでエジプト人コプト派キリスト教徒21人を斬首しました。
アッシリア人のキリスト教徒はハサカ市の北西20kmにあるテル・タマル(Tel Tamr・kmzファイルはこちら)に近い村々から奪われました。キリスト教徒が連れて行かれた場所について矛盾する報告がありました。
カミシリ市(Qamishli・kmzファイルはこちら)から電話で話したシリア北東部のクルド人民防護隊(YPG)の当局者、ナシル・ハジ・マフムード(Nasir Haj Mahmoud)は「戦いとは無縁な平和な村々だった」と言いました。一部のキリスト教徒はハサカ州のYPGの傘下で闘っています。
週末に始まったクルド軍の新しい攻勢は、イスラム国をその拠点の1つ、テル・ハミス(Tel Hamis・kmzファイルはこちら)を含めて、さらに東へ約100kmの地域から追い払うことに集中しています。
人権団体はイスラム国戦闘員少なくとも132人が2月21日以降、戦闘で殺されたと言いました。マフムードは外国人1人を含めてYPGのメンバー7人が殺されたと言いました。彼は外国人がどこの出身かは分からないと言いました。しかし、イギリス人とアメリカ人がイスラム国に対抗してYPGと友に戦いに行きました。別のクルド人当局者は外国人は殉教者であり、詳細を述べることを差し控えると言いました。
カミシリからの電話インタビューで彼は、YPGがテル・ハミスとイラク国境から数キロにあるアル・ホウル(al-Houl)の間の幹線道路を遮断したと言いました。「これはダーイシュ(Daesh・イスラム国の事)の大動脈です」と彼は言いました。YPGはこの地域の村100ヶ所以上をイスラム国から奪いました。「我々はこの作戦でテル・ハミスの戦いを終わらせると信じています」
人権団体によると、今月初旬のヒズボラに支援されたシリア政府軍による大攻勢が南部で減速する前に大きな進展を見た一方で、北部のアレッポ(Aleppo)の反政府地域を包囲する試みは撃退されました。
記事は一部を紹介しました。
この記事で書いている戦果はデリゾールへの補給路を遮断することにつながります。最早、イスラム国へのトルコからの補給路はアクチャカレからラッカへのルートしか残されていないようです。つまり、このルートを通じてラッカとデリゾールの間で物資のやりくりをするしかないのです。そして、アクチャカレ方面もやがてクルド軍の進撃に遭います。
戦線が広がり、戦闘員が不足することにより、イスラム国は各地で十分な反撃をすることが困難になっています。近い将来、数ヶ月後でしょうが、イスラム国の総崩れが起きる可能性が高まっています。
唯一の手段は、自動車による自爆攻撃で検問所を破壊し、補給を通すことですが、これが成功する見込みはほとんどありません。対戦車ミサイルが多数クルド軍に提供されているため、突っ込む前に破壊される可能性が高いのです。道路上の検問所が突破できたとしても、幹線道路が大きな街の中を通るところでは、市街地を抜けることはできません。
まだイスラム国が滅亡したとは言えませんが、軍事的には手詰まりに陥っています。このまま順調に進めば、シリアとイラクのイスラム国は壊滅します。
イスラム国の元々のコンセプトが成立し得ないものだったのです。先日書いたように、リビアへの転戦が成功する可能性もありますが、同じ失敗が繰り返されるだけです。これはイスラム国が空軍やハイテク兵器のない軍隊が広大な領域を防衛できないという軍事的常識を無視した結果です。
なお、死亡した外国人戦闘員はオーストラリア人のようです。紹介しませんがalarabiya.netが報じています(記事はこちら)。
|