バグダール事件に見る脱走罪の実際
military.comによれば、現在のアメリカの海外戦争が14年前に始まってから、大勢の米陸軍兵士、2001年以来ほぼ6,000人が彼らの部隊を放棄しました。5,000人以上は脱走や無許可離隊で有罪となり、ほとんどは軍から追い出されました。
それでも、ごく少数の兵士が、脱走と不正行為で有罪判決なら禁固5年以上を受ける可能性があるバウ・バグダール陸軍軍曹(Army Sgt. Bowe Bergdahl)が直面する種類の有罪判決で終わりました。
陸軍は通常、名誉状態以外の解任と引き替えに刑務所入りを避ける行政措置で、兵士がより罪を軽くするために有罪を認めることを許しました。
多くの場合、もともと脱走で起訴された兵士たちは、軍法律家が陸軍がすぐに厄介な兵士から逃れられるようにする司法取引の下で罪を軽くするために有罪を認めました。懲戒除隊は兵士から恩典を奪い、よい仕事を見つけるのを難しくします。
「脱走は滅多に裁判になりません。通常、司法取引で終わります」とジョージタウン大学の法学教授で元軍法律家と裁判官だったゲイリー・ソリス(Gary Solis)は言います。軍法律家によれば、バグダッディの事件は同様に罪状認否で終わりそうです。「これは誰も裁判になるのを見たくない事件です」とソリスは言いました。「バグダールは家に戻ることだけを望んでいます。そして、陸軍にとって、この事件は決まり悪いだけです」。
彼は7月8日に行われる予定の第32条の予備審問を待っています。
ロスアンゼルスタイムス紙の要請でまとめられた陸軍の数字は、2001年以降の脱走と無許可離隊で嫌疑がかかるのは6,077件(アフガニスタン41件、イラクで150件)であることを示します。その他ほとんどの事件は本国内で起こりました。有罪宣告と有罪答弁はアフガンでの41件中33件、イラクの150件中133件でした。他の場所の基地での規則違反に起因する事件も、有罪判決と有罪答弁の高い率(5,886件中5,110件)を持ちます。これらの事件の中で、9件だけが「敵前における守地放棄」を含みました。陸軍はこの罪をバグダールに適用しました。彼の捜索中に敵の攻撃に兵士をさらした原隊の隊員により、彼は訴えられました。
守地放棄罪は不正行為の9つの幅広い分類を網羅します。それは逃亡、持ち場の恥ずべき放棄と降伏、臆病な行為、武器と弾薬の投棄、その他の罪を犯した兵士に適用されます。バグダールは基地から逃げた時に武器を置き去りにしたことで訴えられています。守地放棄罪は最高で終身刑をもたらします。バグダールは重要あるいは危険な任務を避けるための脱走でも訴えられています。これは最高禁固5年をもたらします。
今日の戦争の脱走率はおそらく、米史上の戦争で最も低いと、シャーロッツヴィルの法務総監司法センター・学校の歴史家、公文書保管人のフレッド・L・ボーチ三世(Fred L. Borch III)は言いました。第2次大戦中、約50,000人の軍人が1300万人の戦闘部隊から脱走しました。脱走と無許可離隊はベトナム戦争で熾烈化しました。一部の事件は司法取引や管理分離で対処されたとボーチは言いました。しかし、数千人の隊員は軍事裁判にかけられ、収監されました。エディ・スロヴィク二等兵(Pvt. Eddie Slovik)は軍事裁判にかけられ、1945年に脱走罪で処刑されました。これは現代アメリカ史上で脱走罪による処刑の唯一の記録された事件です。
陸軍は2001年以降の脱走罪6,000件に科せられた処罰の統計を提供できないと言いましたが、軍法律家は処罰は米国内の基地よりも戦闘地域の事件の方が厳しいと言いました。
記事は一部を紹介しました。
米軍で脱走などの軍規律に反した犯罪の記事は時折、紹介しています。それは、米軍の処罰に関する情報が日本ではほとんどなく、都市伝説並みに不正確な俗説が出回っているからです。それは自民党の石破茂が脱走した自衛官に極刑を科せると考えるような、大きな誤解を生じています。
記事にあるように、脱走罪は滅多に裁判になることもなく、近代では死刑判決は一件だけです。この辺の常識が分かっていないと、将来、自衛官に北朝鮮並みの処罰が科される可能性もあります。なにしろ、強力な与党の重鎮がそう言っているのですから。
石破をはじめとする保守派からは「それでは脱走した者勝ちではないか」という声が出るのでしょうが、裁判をしなくても、不名誉除隊や懲戒除隊などの処分により、本来得られるはずの利益はなくなります。退職金や恩給、軍人用健康保険は召し上げられます。
それでも命が大事だから脱走すると考える者はいるでしょう。しかし、大半の者は自分の名誉のために持ち場に踏みとどまるのです。そこを理解しないと軍事問題は語れません。
刑罰を定めるにも、実戦の経験に基づいた体系的な法律が必要です。それを日本が制作できるかという問題も残されています。
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