北朝鮮が潜水艦からミサイルを発射と発表?
韓国のMBNテレビは9日、北朝鮮が初公開した潜水艦発射弾道ミサイルの写真について、一般的なミサイル発射と比べて噴射する煙の量が少ないなど不自然な点があり、合成した疑いがあると報じました。
9日付の北朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、ミサイルが登場する4枚を含む計7枚の写真を掲載。MBNは煙以外にも、ミサイルの発射角度が写真ごとに少しずつ違うと指摘。
北朝鮮が公表した写真は明らかに合成写真で信じるに値しません。
BBCは合成写真の疑いがあると報じましたが(記事はこちら)、military.comは単に発射実験が行われたことだけを報じました(記事はこちら)。
写真はNBMが指摘したことのほか、明らかに水中発射型のミサイルの特徴と矛盾する部分があります。
ミサイルは約50度傾斜していますが、普通は垂直に打ち上げます。そうしないとミサイルに過剰な負担をかけるからです。圧縮空気でミサイルを水上に押し上げ、ミサイルが完全に空中に飛び出した後、ミサイルのエンジンに点火します。ミサイルが傾斜するのはそれからです。ゆっくりと上昇しつつ最適な傾斜角をとり、ミサイルは大気圏外を目指します。写真の高度ではミサイルが傾斜するタイミングが少し早いのです。
エンジンから出る火炎の色がオレンジ色ではありません。北朝鮮の液体式ミサイルは非対称ジメチルヒドラジン(あるいはケロシン)と赤煙硝酸をミサイルを使っており、鮮やかなオレンジ色の火炎が特徴です。
液体酸素と液体水素だと青い火炎でその周辺がオレンジ色に見えます。写真の火炎は焦げ茶色に近い色です。多分、燃料と推進剤が何かを秘匿したくて、こういう色にしたのでしょう。
その他、噴煙全体が茶色なのはテポドン2号の打ち上げ映像を流用していると思えます。潜水艦からミサイルを発射する場合、周囲には水しかないので白ぽっい水煙が立ちます。
こうした写真が出てくるのは、北朝鮮がまだ潜水艦発射型ミサイルを完成させていない証拠です。
テポドン2号による脅しがうまく行かないので、ムスダンという既存のミサイルを2段式に改造したように見せかけ、潜水艦からの発射実験施設を造って偵察衛星に撮影させ、実験をやっているように見せかけてから打ち上げの写真を公表するというやり方です。
アメリカは早期警戒衛星で打ち上げがなかったことを知っています。しかし偽写真だと非難はしません。こうした公式発表はアメリカのミサイル防衛を推進する力になるからです。北朝鮮が「可能性があるという程度の既成事実」を作ってくれれば、ミサイル防衛の予算獲得の理由にできるのです。「偽写真だから心配は要りません」と発表すると、予算獲得へのエネルギーにならないのです。
北朝鮮とアメリカの大人の事情を理解しないと、我々は情報の嵐に翻弄されることになります。
追加
この記事には追加の記事が出て、見解を改める必要が出ました。(こちらをご覧下さい)
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