安倍首相が自衛隊の殉職者1800人と発言
北海道新聞によれば、新たな安全保障関連法案を閣議決定した14日の記者会見で、安倍晋三首相が自衛隊員のリスクについて「今までも1800人の隊員が殉職している」と述べたことに波紋が広がっています。
殉職者の大半は任務中の事故によるもので、戦闘に巻き込まれて亡くなった隊員は、過去1人もいません。隊員に「戦死者」が出かねないとの批判をかわす狙いとみられますが、性質の違う数字を挙げる首相の論法に、専門家は「論理のすり替えだ」と批判しています。
「まるで今まで殉職した隊員がいないかのように思っている方もいるかもしれないが、1800人が殉職している。私も遺族とお目にかかっており、殉職者が全く出ない状況を何とか実現したい」。首相は14日の会見で、新たな法整備によって隊員が死亡するリスクが高まると指摘した質問に対し、こう述べました。
防衛省によると、自衛隊の前身である警察予備隊が発足した1950年以降、殉職者数は今年3月末現在で1874人。車両や航空機、艦船による訓練など任務中の事故が7割以上を占め、残りは過剰業務による病気などが原因のケースが目立つという。
記事は一部を紹介しました。
これだから安倍首相は分かっていないと言うのです。自衛隊の殉職者には出勤中に交通事故で亡くなった人まで含まれています。小学生が通学中に交通事故で亡くなることがありますが、それと同じでも自衛官の場合だけ殉職とされ、「志半ばで倒れた」と言ってもらえるのです。そうした人まで含めて1800人の殉職者がいるといわれても納得できるわけがありません。それなら、あらゆる組織・団体で同じことがいえます。たとえば、ほとんどの地方自治体にも殉職者がいるはずです。
また、敵対行動による事故でなくても、戦闘行動の必要上、夜間に無灯火、高速で移動した結果、車両事故で死者が出た場合、見た目は非戦闘によるようでも、実質的には戦闘行動の結果の戦死なのです。中東に派遣された自衛官が病死した例がありますが、長期派遣による影響がなかったかが検討されるべきなのです。
昨日書いたように、戦死者に対する報奨制度が必ず必要になります。憲法の規定により、勲章は特権が認められていません。しかし、戦死によって授与された勲章に特権が何もないことに対する疑問が将来、必ず起きてくるでしょう。それにより自衛官の地位は確実に向上しますから、それに同調しようとする者たちが必ず現れます。おそらく、それによって自衛隊の国軍化が一段と進むはずです。それがこの発言に隠れた本当の問題です。
日本国憲法第十四条3
栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
多くの軍隊の勲章は、平時と戦時で種類が違い、戦闘による犠牲にのみ出されるものがあります。安倍首相はその区別もつかないのです。
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