米軍の女性退役軍人の自殺率が明らかに
military.comによれば、米軍が女性兵士の自殺について新しい研究を発表しました。
女性兵士の自殺率は男性兵士の自殺率に近いほど高く、一般に男性の自殺は女性よりもずっと高いため、この発見は研究者を驚かせました。
「それは圧倒しています」と、研究に参加したノースイースタン大学の伝染病と自殺の専門家、マシュー・ミラー博士(Dr. Matthew Miller)は言いました。「我々は自殺率がここまで高い理由に真剣に取り組まなければなりません」。
過去十年間、軍にとって自殺は主要な問題となりましたが、国防総省と復員軍人援護局による大半の研究は男性(2200万人の元兵士の90%)に集中しました。女性の退役軍人の自殺についてはほとんど分かっていませんでした。
自殺率が若い退役軍人で高いことを、復員軍人援護局は11年間のデータを収集した新しい研究に見つけました。18〜29歳の女性退役軍人は非退役軍人より12倍多く自殺しています。1950年代に勤務した女性を含めたその他の年齢グループ全てで、退役軍人の自殺率は4〜8倍高く、要因が最近の戦争の心理的な効果を遙かに高く広がることを示します。
データは2000〜2010年、23州における成人、男性と女性、退役軍人と非退役軍人の自殺173,969件すべてを含みます。何が自殺率が何を増やしているかは不明です。
2011年のケイティ・リン・シセナ(Katie Lynn Cesena・24歳)の死は「The Times」紙がロスアンゼルスとサンディエゴ郡で確認した事例の一つです。シセナの死は自殺率にあり得る2つの要素を強調します。
最初に、彼女は同僚に強姦されたと報告しました。国防総省は軍隊内の女性10%が軍務中に強姦され、別の13%は望まない性的な接触を被っていると見積もります。根の深い問題は近年、犠牲者が前へ進み出て注意をひいています。シセナの母親、ローリー・リーブス(Laurie Reaves)は、彼女は苦悩から海軍を除隊したと言いました。彼女の娘はサンディエゴの復員軍人援護局の医療センターでPTSDと鬱病の治療を受け、強姦者(未起訴)と友人たちを恐れながら生きていたと言いました。シセナは体験記を書き始め、フェイスブック上で冒頭部分をシェアしました。「私はこの本を合衆国海軍と祖国に尽くし、強姦され、そこから何が起こるかに関係なく他者に告げる勇気を持つすべての男女に献げます」と書きました。
第2の要因はシセナが銃を使ったことです。これは典型的に男性が好む方法です。人口の中で、女性は男性よりも自殺をしようとしますが、女性は通常薬剤や火器よりも致命的でないその他の方法を用いるために成功することはより少ないのです。しかし、政府の調査は女性の退役軍人は銃を持つ他の女性よりも自殺をしやすそうなことを示しました。新しいデータでは、復員軍人援護局の研究者は、銃を使って自殺した女性退役軍人は40%で、その他の女性の34%と比較して、自殺率に小さな影響を及ぼす相違点であることを見出しました。
研究者の関心のもう一つの領域は軍に入隊した女性の背景です。女性隊員は常に志願兵で、すべての年代にわたって高い自殺率はより大きなパターンの一部である可能性があります。大半が1973年に終わった徴兵制時代に軍務に就いた50歳以上の男性退役軍人は、彼らの世代の非退役軍人兵士とほぼ同じ自殺率でした。全志願制の軍隊に勤務した若い男性退役軍人の自殺率だけがその他の男性を上回りました。この違いは自殺率が軍務中に起きたことよりも軍に入隊することを選んだ者により関連があるかも知れない、と研究を主導した復員軍人援護局の伝染病学者クレア・ホフマイヤー(Claire Hoffmire)は言いました。より決定的な説明はこのデータに含まれない、たとえば退役軍人が軍務に就いた時期と期間のような情報を必要とします。ホフマイヤーは最近の研究は軍に入隊した男女は、感情的、性的な虐待を含む複雑な子供時代を耐えたらしいことを示すと指摘しました。
別の研究は陸軍隊員は志願する前、自殺を考えたり、試みたり、その他の精神的な問題で高い率を示すことを見出しました。こうした研究は女性の数字は表に出しませんでした。
ウィリアム・アンド・メアリー大学(the College of William and Mary)の歴史家で軍隊の女性に関する専門家リサ・マイヤー(Leisa Meyer)は「彼女たちは帰属意識が欠如しています」と言いました。国防総省は1967年まで女性兵士を全軍の2%に抑えました。女性は1970年代まで別の部隊で訓練を受けました。歴史的に彼女たちは看護婦で、戦時にはそれはトラウマにさらされることを意味しました。IEDが当たり前のアフガニスタンとイラクでは、女性は前例のない犠牲者数に苦しみました。
しかし、国防省のデータは非退役軍人兵士の自殺率はあがることはなく、その2倍になった男性とは正反対でした。退役軍人の約半分を網羅する新しいデータは、自殺率が隊員が除隊した後で急に増えることを示します。11年間のデータで、郡の記録を通じて自殺した退役軍人、男性40,571人と女性2,637人、が特定されました。
全般的な結果は先月「the journal Psychiatric Services」で発表されました。自殺率は通常1年間の10万人あたりの死者数で表されます。男性退役軍人はその他の男性20.9に対して32.1でした。女性の数字はさらにバラバラで、その他の5.2に比べて28.7でした。18〜29歳の男性退役軍人は83.3、非退役軍人は17.6でした。同じ年齢の女性退役軍人は39.6、非退役軍人は3.4。研究は約半分の州の退役軍人を代表しますが、カルフォルニア州は含みませんでした。
サラ・レザーマン(Sara Leatherman)は2009年に背中の負傷で除隊し、傷みは続きました。彼女はイラクで衛生兵として目撃した重傷と死から心的外傷も被ったと、彼女の祖母バージニア・アンバー(Virginia Umbaugh)は言いました。2010年に祖父のシャワー室で首を吊った時、24歳のレザーマンはコミュニティ・カレッジに通い、PTSDの治療を受けていました。戦争が唯一の要因ではありませんでした。レザーマンはイラクに行く前、テキサス州に配置されていた時に薬物で自殺を試みたと、育て親のバージニアは言いました。「私はただ一つの答えがあるとは思いません」と彼女は言いました。
その他の事例では、退役軍人の状況はほとんどが偶発的で、軍務から数十年経っており、人間関係の崩壊、経済的な問題、精神衛生上のトラブル、人生の中で積み重ねられたその他の失望とのつながりは明らかではありません。
リンダ・レーニー(Linda Raney)は2011年に65歳で、数年越しの問題(彼女の姉妹の自動車事故死、金、健康上の問題)に対処していました。彼女は叔母と共にアクトン(Acton)で暮らしていて、彼女自身の居場所を手に入れるため復員軍人援護局の支援を得るために経済的な必要条件を満たさないことに失望していました。「彼女は叔母の負担でありたくなかったのです」と彼女の甥、ケビン・ピーシー(Kevin Pearcy)は言いました。ある日の午後、彼女は彼にさよならを言い、処方された薬剤で自殺しました。
記事は一部を紹介しました。重要な部分はほとんど訳出しています。
かなり驚きの研究結果です。女性の退役軍人の自殺は同じグループの男性とそれほど変わらないのです。これまで、女性兵士がPTSDになりやすいことは知られていました。退役後にホームレスになる者がいて、軍が対処に乗り出していることも、当サイトで紹介しています。
しかし、女性の自殺に関して具体的な数字が出たのは、今回が初めてで、男性兵士と大差ないという点は驚きです。自殺の原因も、これまでの報告でも言われてきたものと同じです。
強姦は女性固有の問題かも知れませんが、男性隊員にとっては、人種差別などに起因する同性兵士からの虐待がありますから、それに近いものと考えればよいかも知れません。ただ、虐待は兵力を損なうものとして、明確に禁じられているのに対して、強姦は軍規で禁止されていながら、放置されている印象はあります。それは多分、軍隊が男性社会であるためでしょう。
自殺に関しては男女別がさほどないから、対処も同じに考えればよいと思えばよいのか、この実態に驚愕すべきなのか、何とも迷わされます。
最近、米陸軍で女性兵士に初めてのレンジャー訓練が行われました。合格者はいませんでしたが、3人の女性兵士にもう一度訓練を受けるチャンスが与えられたとのことです。実は、イラクとアフガンで、女性兵士は検問所で現地の女性の身体検査を担当したり、レンジャー部隊に同行し、現地女性への対応を担当したりしています。役割が男性兵士と変わらない状況が生まれているのは間違いがありません。
最近の集団的自衛権の議論で「左翼が自衛官のリスクが増すと批判するのは、自衛隊にとって余計なお節介である。左翼が心配しなくても自衛官は立派に任務を果たせるのだ」なんて意見を聞きますが、私には根拠のない意見に聞こえていました。様々なプログラムを実践する米軍ですらPTSDや自殺を防げていないのです。ほぼ何の対処もしていない自衛隊が米軍のような任務を行えば、もっとひどい結果が待っているのは目に見えています。米軍で起きることは自衛隊でも起きるのです。戦争がもたらす災厄に例外はありません。それが、私が長年軍事問題を見てきた上での結論です。自衛隊信者の妄言に耳を貸す気はありません。
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