北朝鮮の砲撃で韓国軍が混乱
北朝鮮が韓国のDMZを砲撃した件について、韓国内で情報が錯綜し、日本で報じられた内容と異なっています。朝鮮日報の記事から該当部分を列挙します。
20日午後に発生した北朝鮮による高射砲および直射砲の砲撃挑発に対し、韓国軍当局は、K55・155ミリ自走砲で29発の対応砲撃を行った。
しかし、韓国国防部(省に相当)は当初「北朝鮮のロケット砲挑発に対し、原点地域を打撃している」と発表したが、実際には原点打撃は行わなかった。うそをついたのか、初期段階で状況把握を誤ったのか、議論になっている。また、北朝鮮が最初の砲撃を行ってから1時間11分、2回目の砲撃を行ってから52分たった後に対応砲撃を行っており、「もたもたした対応」という批判も起きている。
国防部の関係者は「高射砲弾の場合、1発しか撃たず、韓国側に被害が発生しなかったことから、対砲レーダーが虚像を捉えたのかどうかなど確認と判断が必要で、すぐに原点を打撃するには限界があった」と語った。直射砲の場合も、北朝鮮が非武装地帯(DMZ)内に砲撃を行い、韓国側に被害がなかったことから、DMZの北朝鮮側に対応砲撃をすることで対処したという。
とはいえ、DMZを越えて韓国の前方民統線(民間人統制線)地域に着弾した高射砲弾の場合、ひょっとすると韓国軍の部隊や民間地域に着弾して被害が生じていたかもしれないことから、原点打撃をすべきだった、という指摘も出ている。
韓国軍当局は、20日の対応レベルなどが、合同参謀本部(合参)など韓国軍首脳部ではなく師団長(少将)および軍団長(中将)など隷下部隊レベルで決定されたことを明らかにした。しかし今後、果たして迅速かつ適切な対応だったかどうかをめぐり、軍首脳部と一線部隊との間で責任の所在に関して問題が生ずる可能性もある。国防部が当初、高射砲および直射砲を「ロケット砲」と誤って把握し、「原点打撃をしている」と事実と異なることまで記者に伝えるなど、慌てた姿を見せたことも問題として指摘されている。
北朝鮮がロケット砲を撃ったと報じられた時、私は違和感を覚えました。北朝鮮は韓国軍のスピーカーを破壊したかった訳で、そのためにはロケット砲は適さないと考えられたからです。ロケット砲は多数のロケットを打ち込んで面的に制圧する兵器で、一カ所を正確に攻撃するのは苦手です。広い面積にロケットを着弾させるため、攻撃の規模が大きくなり、韓国軍により大きな反撃を引き起こしかねません。スピーカーを破壊するにしては手段が合致していないと思ったのです。高射砲と直射砲で攻撃したのが本当だったと聞いて、納得がいきました。
韓国軍が反撃にかなりの時間がかかったことは、北朝鮮軍が高射砲と直射砲を水平に近い角度で発射したため、対砲レーダーで補足できず、別の手段で位置を割り出した可能性がありそうです。延坪島砲撃事件の際は、北朝鮮が砲撃をはじめてから12〜13分間で撃ち返しています。原点打撃ではなかったことも、それを裏付けます。
なお、金正恩が前線部隊に戦時体制をとるように命じましたが、後方部隊に動員をかけていないなら、これはハッタリであり、韓国にスピーカーを引き下げさせる交渉ための措置です。侵攻するには後方部隊も動かし、人と物資を前線へ送る動きが見られます。
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