「38north」が東倉里レポートを公開
38north.orgが北朝鮮の東倉里で進む打ち上げ準備についてレポートを公表しました。準備は初期段階で、来週の打ち上げはなさそうだとしています。
要 旨
最近の商用衛星写真は西海衛星発射場(東倉里とも呼ばれます)において、発射台、掩蔽された鉄道駅、VIP用住居、打ち上げ管制所と国家航空宇宙開発部(National Aerospace Development Administration: NADA)の建物とヘリポートで低レベルの活動があり、北朝鮮政府が宇宙ロケット(space launch vehicle: SLV)打ち上げの初期段階にあることを示します。これが本当なら、来週のロケット試験はありそうにありません。
しかし、いくつかの理由のためにこの判断に関する不確実性が高水準であることに注意するのは重要で、北朝鮮政府が準備でさらに先を進んでいるかもかもしれません。第一に、ガントリータワーの作業足場は周囲に巡らしたカバーで覆われ、事前に包まれて、SLVが中にあるのかどうかをみることを不明瞭にします。第二に、可動式の移送構造は、暗闇や厚い雲が覆う間に機体が組み立てられ、ガントリータワーへの移送されるのを容易にします。さらに、発射台地域全域が現在雪がなく、構造のどんな動きも特定できません。第三に、商用衛星写真の打ち上げ基地の取材は連続的ではなく、その為に観測者は発射台の活動のスナップショットを持っているだけです。
もし北朝鮮が過去の発射前準備の慣習にならうなら、我々は数日中に基地に増大した広がる活動、燃料・酸化剤貯蔵庫での車両の動き、発射台での活動と追跡装備の存在をみるはずです。西海発射場での活動は予定されるロケットエンジン試験が垂直エンジン試験場で準備中であることも示唆します。最近完成した巨大なレール搭載の周年を覆う構造物は。銀河ロケット(訳註 テポドン2号のこと)やムスダン中距離弾道ミサイルのようなロケットの一段機体、あるいは同種のサイズの新しいエンジンが試験台へ移動するのを覆い隠すのに十分な大きさです。これはレールの上に載せて移動するのを隠す能力をテストしているだけかもしれませんが、よりありそうな別の可能性は、これがエンジンテストが準備中だということです。
図1 西海衛星発射場の外観
(訳註 大判の写真がある図にはリンクを張りました)
発射台
最近の商用衛星写真は西海発射台で低レベルの活動があることを示します。
- 2016年1月25日 写真はガントリータワーの根元に車両か機材の3つの物体を示します。人員が発射台の舗装面の上に見えます。
- 2016年1月18日 写真は発射台の準備棟でトラック1台を捉えました。このトラックは掩蔽された鉄道駅まで遡れるトラックの一団を離れ、貨物や人員を発射台へ運んでいたことを示します
- 新しく建設された燃料・酸化剤貯蔵庫は2015年12月28日までに見た目には完成したように見えます。しかし、タンクと関連する内部のポンプ機材の設置が続いているかもしれません。
- 12月28日の写真で発射台区域の大半を覆っていた雪は続く4週間でなくなり、除雪と雪解けの組み合わせでなくなりました。これは燃料・酸化剤貯蔵庫への通路を含みます。
図2 西海発射台での活動
(訳註 リンクを張れないので、記事中の写真「Figure 2.」をご覧下さい こちら)
掩蔽された鉄道駅
掩蔽された鉄道駅の1月11日と18日の写真は駅を行き来するタイヤの跡を示し、資材や人員を施設へ運んだことを示唆します。これらの痕跡の一部は鉄道駅と発射台の間の移動を示します。施設の大半を通じる道路が1月25日の写真では雪がないため、この活動が続いたかは特定できません。
VIP用住居とペイロード処理棟
12月28日と1月25日の写真両方で、VIP用住居と隣接する衛星管制棟には雪がありません。さらに、より最近の写真では車両数台が住居の駐車場にあります。過去にこれは通常エンジン試験とロケット打ち上げが準備される時だけに起こりました。過去に衛星管制のために使われ、現在はペイロードの処理に使われているらしい近くの建物は活発に使われています。新しい駐車場は過去4カ月の間に造られ、区域は舗装されました。
図3 VIP用住居に道路に雪がなく車両が存在します。
打ち上げ管制所、NADA施設とヘリポート
打ち上げ管制所で雪のない小道が12月28日の写真にみられ、1月25日のこの場所での車両を含めた交通は増加したようです。施設北西の隅にある巨大なNADAの講堂、支援棟、ヘリポートは12月28日の写真では概ね雪に覆われていましたが、1月25日にはすっきりしています。より小さな支援棟で、駐車場は最近の写真で部分的に除雪されていましたが、現在は完全に雪がありません。3つの施設すべてへの道路も雪がありません。これらの建物の目的は不明なものの、これらの活動すべてはそれらが使用中か、使用するための準備中であることを示します。
図4 NADAでヘリポートが除雪されています。
(訳註 リンクを張れないので、記事中の写真「Figure 4.」をご覧下さい こちら)
垂直エンジン試験台でエンジン試験が行われる可能性
活動は垂直エンジン試験台で行われる可能性があるロケットエンジン試験が準備中であることを示します。12月28日の写真で、試験台で巨大なレールに乗せた周囲を覆うシェルターの建設が進行していました。1月25日現在、それは完成して、エンジン試験台へ動かされたように見えます。この構造物の大きさは巨大で、約11m幅、29m長、11m高と計測され、ムスダン中距離弾道ミサイル、銀河宇宙ロケット、同規模の新しいエンジンのようなロケットの1段機体を隠した形でしまうのに十分な大きさです。これは単にそれをレールに乗せて移動する能力を試したのかもしれませんが、よりありそうな可能性はエンジン試験が準備中だということです。
図5 エンジン試験台で新しい構造物が完成
(訳註 リンクを張れないので、記事中の写真「Figure 5.」をご覧下さい こちら)
結 論
発射台、掩蔽された鉄道駅、VIP用住居地区、打ち上げ管制所とNADA施設(特にヘリポート)での西海発射場各所での活動のレベルは、北朝鮮が宇宙ロケットの準備をしているかも知れないとの正当な懸念を引き起こします。それ以上に施設各所の活動のレベルは、差し迫ったエンジン試験があるようだとは説明できそうにありません。北朝鮮政府がロケット打ち上げを準備しているのなら、入手できる写真は打ち上げは差し迫っておらず、北朝鮮が準備の初期段階にあることを示します。
しかし、この判断にはいくつかの理由により高いレベルの不確実性があります。第一に、ガントリータワーの作業足場は周囲に巡らしたカバーで覆われ、事前に包まれて、SLVが中にあるのかどうかをみることを不明瞭にします。第二に、可動式の移送構造は、暗闇や厚い雲が覆う間に機体が組み立てられ、ガントリータワーへの移送されるのを容易にします。軌道が雪に覆われたままであるため、初期の写真で構造物は12月4日の写真で観測された降雪以降動かされたように見えませんでした。発射台区域全体は現在雪がないため、構造物のいかなる動きも特定できません。第三に、商用衛星写真の打ち上げ基地の取材は連続的ではなく、その為に観測者は発射台の活動のスナップショットを持っているだけです。
もし北朝鮮が過去の発射前準備の慣習にならうなら、我々は数日中に基地に増大した広がる活動、燃料・酸化剤貯蔵庫での車両の動き、発射台での活動と追跡装備の存在をみるはずです。
記事は全体を紹介しました。
38northが発表するよりも先に報道が行われたことは、38northはまだ東倉里での活動が観測を続けるべき低レベルの状態にあると判断していたことを示します。このレポートもそうした観測に基づいています。ただ、これは過去の事例にならえばという話なので、北朝鮮が準備に熟達して期間が早まる可能性も考えないといけません。
衛星写真を見ると、舞水端里の施設はほとんど変化がないのに、東倉里は随分と力を入れて改善を重ねているとの印象です。特にドーム型のNADA施設は2014年に国内報道で面白おかしく取り上げられたのを、当サイトで批判したことがあります(過去の記事はこちら)。ヘリポートがあることを考えると、予想通りにそこは高官が見学に来る場所として整備されたことが分かります。
それ以上に気になるのは、エンジン試験台にシェルターをつけたことです。テストするエンジンの形式を隠したい意図が表れています。それは何らかの開発計画が存在するということです。
そして、2014年にガントリータワーをさらに高くしたので、ミサイルもより大きくなっているのかが観測のポイントになります。より大きなロケットは、より多くの燃料を積み、より遠くへ飛ばせるため、重要項目です。
準備がどこまで進んでいるかは不明です。ロケットの組み立てが進んでいるかは発射台が覆われているので分かりません。他の徴候は燃料・酸化剤貯蔵庫への注入が始まり、タンクローリーが発射台周辺に並ぶことです。今のところ、これは行われていないようです。燃料・酸化剤は劇物なので、最終段階に行われます。これが行われると、打ち上げが確実で、近い将来にあるということです。
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