北朝鮮が水爆実験を実施か?
2016.1.6
一部削除2016.1.10 11:30
北朝鮮の朝鮮中央テレビが「水爆実験に成功した」と発表しました。初期情報について検討しました。
毎日新聞によれば、日本の気象庁は6日午前10時半ごろ、北緯41.6度、東経129.2度の地点を震源とするマグニチュード(M)5.1の地震を観測した。震源の深さは0キロ。韓国の聯合ニュースは韓国気象庁が6日午前10時半(日本時間同)ごろ、北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)吉州(キルジュ)郡付近でマグニチュード(M)4.2前後の地震波を観測したと速報した。中国の地震観測当局は震源の深さは0キロで、人工的な爆発と推定していると伝えた。
BBCによると、先月、金正恩(Kim Jong-un)が北朝鮮が水素爆弾を開発したと言いましたが、国際的な専門家は疑いました。
BBCのケビン・キム記者(Kevin Kim)はアナリストは現在、どのような種類の核物質が使われたか、それが本当に水爆実験だったかを特定するために、地下爆発から漏れたガスを検出することに集中していると言います。
記事は必要なところだけ紹介しました。
今回の実験は徴候がつかめていませんでした。この種の情報に詳しい38north.orgでも、何も報じていませんでした(関連記事はこちら)。ただ、昨年12月2日に豊渓里核実験場で新しいトンネルを掘っているとの記事を出していました。
北朝鮮と日本の気象庁が発表したマグニチュードが同じで、最も大きい5.1です(気象庁が発表した書面はこちら 1・2)。韓国は4.2です。過去にも日本の気象庁は大きめの数字を示してきました。なので、実際の数字は実際にはもっと低いかもしれません。マグニチュードは少し変わるだけで程度が大きく変わるため、これだけの違いは実態を把握する上で少し問題です。マグニチュードは 1 増えるとエネルギーが31.6倍に、2 増えると1000倍になります。0.9もの違いはかなりの差ということになります。
気象庁の発表を見ると、今回のマグニチュードは過去の北朝鮮が原爆実験と発表した時のマグニチュードよりも1回を除くと小さく、本当に威力が大きい水素爆弾の実験だったのかは疑問です。
実験日 |
位 置 |
M |
平成28年1月6日 |
北緯41.6度、東経129.2度 |
M5.1 |
平成25年2月12日 |
北緯41.2度、東経129.3度 |
M5.2 |
平成21年5月25日 |
北緯41.2度、東経129.2度 |
M5.3 |
平成18年10月9日 |
北緯41.2度、東経129.2度 |
M4.9 |
水素爆弾には起爆に原子爆弾を使うものと、使わないもの(純粋水爆)がありますが、後者はアメリカやロシアも開発できておらず、北朝鮮が造れるはずはありません。従って、今回の実験が本当に水爆実験だったとしても、原子爆弾が起爆に用いられたことは確実です。
その原子爆弾も開発に成功しているのかは疑問視されていて、さらに弾道ミサイルに乗せられるほど小型化できたかも疑問視されています。水素爆弾はそういう重たい原子爆弾にさらに装備を取り付けて完成されるため、実験に成功したとしても弾道ミサイルに搭載するとはできないということです。ノドンに乗せて日本を攻撃したり、テポドン2号でアメリカを攻撃することは不可能です。強いて言えば、北朝鮮が侵略された時に爆発させる自爆兵器にしかなりません。こういう事実を無視して、大騒ぎすることは控えなければなりません。
数日経てば、爆発で生じた希ガス(キセノン、アルゴンなど)が検出されるはずです。希ガスは大気中に存在しますが、微量なので、急激に増えると核爆発があったと推定できます。現在、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)や米軍、韓国軍、自衛隊が検出を試みているはずです。しかし、希ガスでは原爆か水爆かまでは判断できません。分かるとしても、核爆発があったことだけです。
こういうシナリオも考えられます。北朝鮮ははじめて水素爆弾の実験を行ったが、原子爆弾が爆発しただけで、水素爆弾としての起爆には失敗しました。しかし、実験が成功したと発表したというシナリオです。マグニチュードが小さかったことは、その証拠かもしれません。これは推測なので即断はできませんが、考えられるシナリオの一つです。
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